農婦譚
住井すゑの短編集(底本は1940年刊)。土浦市の出版社・筑波書林の1983年刊のハードカバーで、当然ながらISBNはついていない。本屋さんの自由価格本コーナーで見つけた。
意外にも、ちょっぴりピランデッロを連想させる硬質な農民小説であった。著者は「橋のない川」で知られる作家だが、戦争協力の逸話が記憶にあり、予断があったかもしれない。
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投稿者「elsur」のアーカイブ
読了:「戦時下のキリスト教」「戦時下の経済学者 経済学と総力戦」「『よむ』ことの近代 和歌・短歌の政治学」「ぼくたちの野田争議 忘れられた労働運動家 松岡駒吉と野田労働争議」
戦時下のキリスト教: 宗教団体法をめぐって
キリスト教史学会いくつかとても興味深い記述があった。戦時下の日本と日本支配下の地域では、すべての教会で、礼拝に先立ち宮城礼拝があった。ところが当時の人々に訊いてもそのことをあまり覚えていない。例外は台湾・韓国の人々で、日本敗戦直後の8月19日、宮城礼拝なしに礼拝する喜びを強く記憶にとどめているという。日本の信仰者にとっても宮城礼拝は強制されたものではなかったのか? ここが難しいところで、国内の多くの教会ではなんと45年秋から翌春ごろまで、宮城礼拝が惰性のように続けられていたらしい、とのこと。
戦時中に厳しく弾圧された教派の一つであるホーリネス教団の人はこう述べている。
いろいろな場面でホーリネス弾圧について話す機会があります。そうしたときに、ひたすら同情して下さる方がいます。哀れな弾圧被害者に同情したいのか、同情できる自分に酔いたいのか、とさえ思うことがあります。意地悪な言い方に聞こえるかもしれませんが、[…] 物分かりが良すぎて、問題の本質まで考えようとしないことが起きるからです。
諸教派・諸団体から、いわゆる戦争責任告白が出され、いろいろな取り組みがなされていながら、物分かりの良すぎる自己批判と隣人愛が目を曇らせるのです。弾圧、沖縄、アジア、ハンセン病、政治、憲法、教育などなど、課題は多いのですが、同情するだけでも、義憤にかられ正義を主張するだけでも意味がありません。[…]
いまや私たちは、社会情勢について、教会の体質について、いくらでも分析し批判することができます。それでいて、自分自身に気づかないということが起きるのです。[…]私たちは、歴史を学びながら、感性を磨いていかなければなりません。そうしたことが必要な時代に踏み込みつつあるように感じるのです。
読了:「『ハコヅメ』仕事論」
「ハコヅメ」仕事論 女性警察官が週刊連載マンガ家になって成功した理由
泰 三子, 山中 浩之読了:「知能低下の人類史」「『トランプ信者』潜入一年」「ルポ プーチンの戦争」「私たちが描いたアニメーション『平家物語』」「朝日新聞政治部」
知能低下の人類史 忍び寄る現代文明クライシス
エドワード・ダットン, マイケル・A・ウドリー・オブ・メニー, 蔵 研也→ いま検索したら、著者のひとりについての最近のNYTの記事をみつけた。ああ、やはりなあ…
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読了:「全体主義の誘惑 オーウェル評論選」「物語 ウクライナの歴史」「ホモ・エコノミクス」「団地と移民」
全体主義の誘惑-オーウェル評論選 (単行本)
ジョージ・オーウェル, 照屋 佳男続きを読む
読了:「ヴァンデ戦争」「謎の独立国家ソマリランド」「タリバン台頭」「大俳優 丹波哲郎」「フェルメール デルフトの眺望」
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読了:「香港秘密行動 『勇武派』10人の証言」「『オピニオン』の政治思想史」「ルネサンス 情報革命の時代」「サカナとヤクザ」「決戦!株主総会」
読了:「戦争はいかに終結したか」「物語 バルト三国の歴史」「家計簿からみる中国 今ほんとうの姿」「アガンペン読解」「カタコトのうわごと」
読了:「ROCA 吉川ロカストーリーライブ」「インド夫婦茶碗」「入江喜和画業30周年記念 キワ本」「ブランチライン」「深夜食堂」
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10年ほど前だろうか、朝日新聞朝刊の連載「ののちゃん」に、ファド歌手を目指す女子高生ロカとその相棒を描いたエピソードが時々掲載されていたことがあった。本書はその部分を取り出してストーリー4コマとして完成させたものである。
頭でわかってはいたのだが、著者の絵の上手さといったらもう…。終盤は鳥肌が立つようであった。コマとコマのあいだに感情が溢れ出る傑作。
2023/08/14追記: 電子化されたので、amazon kindleのリンクを張った。通販はこちら。
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読了:「セシルの女王」「女の子がいる場所は」「タコピーの原罪」「チ。」「ワカコ酒」
セシルの女王 (1) (ビッグコミックス)
こざき 亜衣セシルの女王 (2) (ビッグコミックス)
こざき 亜衣続きを読む
読了:「あかり」「オール・ザ・マーブルズ!」「またのお越しを」「ダンジョン飯」「生き残った6人によると」
またのお越しを(1) (BE LOVE KC)
おざわ ゆき続きを読む
読了:「緑の歌」「台湾の少年」「ひらやすみ」「BLUE GIANT EXPLORER」「戦争は女の顔をしていない」
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読了:「タイムスリップ・オタガール」「おかあさんの扉」「吼えろペンRRR」「ツイステッド・シスターズ」「聖☆おにいさん」
読了:Mayer, Davies, Schoorman (1995) 組織における信頼とはなにか
Mayer, R.C., Davies, J.H., Schoorman, F.D. (1995) An integrative model of organizational trust. The Academy of Management Review, 20(3), 709-734.
仕事の都合で読んだ奴。
経営学における信頼(trust)の研究の古典らしい。ボッツマン「トラスト」の注でも引用されていた。google様いわく、被引用件数28473… まじか…。にもかかわらず、前に読んだ東大教育の院生さんの信頼研究レビューでは引用されていない。経営学と心理学のこのギャップってなんなの。
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読了: Little(2011) Calibrated Bayesアプローチからみた欠損データ分析
Little, R. (2011) Calibrated Bayes, for Statistics in General, and Missing Data in Particular (with comments and a rejoinder). Statistical Science, 26(2), 162-186.
統計学者Little先生があちこちで提案している Calibrated Bayes アプローチについて調べていて、その一環として読んだ奴。
良く引用されるLittle(2011)は2012年にメモをとりながら読んでいたのだが、私には話が大きすぎ、いまいち雲をつかむような感じでよく分からなかった。この論文は「欠損データ」と問題が狭く指定されているので、もう少しわかりやすいかと思ったのだが…
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読了: Sterba (2009) 母集団のモデルベース推論とデザインベース推論、そしてその統合
Sterba, S.K., (2009) Alternative model-based and design-based frameworks for inference from samples to populations: From polarization to integration. Multivariate Behavioral Research. 44(6), 711-740.
仕事の都合で読んだ奴。心理学者のみなさん向けに、model-basedの統計的推論とdesign-basedの統計的推論を統合したアプローチを紹介するというもの。
なお、本文中には統合的アプローチのためのソフトのレビューをonline appendixで提供していると書いてあるが、見当たらない(本文中のURLはリンク切れ)。Mplusとかが紹介してあったようだ。
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読了:Chaudhuri & Holbrook (2001) ブランドへの信頼とポジティブ感情がロイヤルティを経由してシェアや価格に効く
Chaudhuri, A., Holbrook, M.B. (2001) The Chain of Effects from Brand Trust and Brand Affect to Brand Performance: The Role of Brand Loyalty. Journal of Marketing, 65(2), 81-93.
仕事の都合で読んだ。
トップジャーナルの論文だしさ、なんらか仕事の足しになるかなあと思ったんだけどさ…
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読了: Elliot & Valliant (2017) 非確率標本に基づいて推測を行うふたつのアプローチ
Elliot, M.R., Valliant, R. (2017) Inference for nonprobability samples. Statistical Science, 32(2), 249-264.
仕事の都合で読んだ奴。非確率標本からの統計的推測についての概観論文。
市場調査実務家というのは「統計学の先生のいうことは無作為標本を前提とした綺麗ごとなので僕らの仕事にはあまり役立ちません」「それよりもビジネス理解が大事です」などと言い訳を繰り返していてもなんとかなる気楽な商売なのだが、実際には本論文のように仕事と直結する統計学の研究はたくさんあり、学びうることは多い。あまりに多い。真面目に考えるとなかなか辛い。言い訳を繰り返していた方が健康的かもしれない。
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読了:山本(2012) Majority Judgment解説
山本芳嗣 (2012) 1人1票からMajority Judgmentへ. オペレーションズ・リサーチ, 57(6), 295-301.
Balinski & Laraki (2011) “Majority Judgment”の解説(あれ、この論文では2010年刊行となっているぞ?)。Balinski & Laraki のPNAS論文がとても難しかったので、この論文で復習した次第である。日本語で解説が読めるなんて、ありがたいことだ。
PNAS論文を読んでて、「個々の判定者が一部の選択肢しか評価してない場合はどうすればいいの…」と思ってたのだが、著書のほうにはそういう議論もあるんだそうな。
読了:Balinski & Laraki (2007) Majority Judgement とはなにか
Balinski, M., Laraki, R (2007) A theory of measuring, electing, and ranking. PNAS, 104(21), 8720-8725.
研究会で経済学の先生に、majority judgementという社会的決定ルールがあると教えて頂き、俺にもわかるだろうか?と探して読んでみた。たった6頁だけど、けっこうしんどい。
定理の証明は著者らの近著 “One-Value, One-Vote: Measuring, Electing and Ranking” をみよとのこと。おそらく “Majority judgment: measuring, ranking, and electing“(2011)のことであろう。
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