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2011年12月31日 (土)

Bookcover 農村青年社事件―昭和アナキストの見た幻 (筑摩選書) [a]
保阪 正康 / 筑摩書房 / 2011-12
全く知らなかったのだが,昭和12年に大逆事件の再来として大々的に報じられた「農村青年社事件」というのがあって,でもそれは結局のところアナキスト弾圧のためのフレーム・アップであった,のだそうだ。著者は70年代にこの事件について取材し,でも結局著作にすることがなかったのを,このたび(ある種の後悔を抱えながら)一冊にまとめた由。
 戦時中に保護観察下にあった思想犯に対する警官の態度が,戦争末期になってころっと変わってきた,という話はどこかで読んだことがあったのだが,農村青年社事件の関係者たちもそのような経験をしているのだそうで,なかにはこんな証言もあるのだそうだ。
 「昭和二十年に入ってからのことですよ。長野県警察本部の思想担当の刑事たちが当時逮捕された者の家一軒一軒を訪ね,自分は拷問しなかった,思想犯を痛めつけたことはなかったという証明書を書いてくれと言って歩いていた。実はほとんどの者は拷問されていたんです。ふざけるなと怒る者もいれば,まああのときはあのときでと証明書を作るのに協力した者もいますよ」
 ううむ。私には嗤えない。組織のなかで生きることは,ときとして滑稽で陰惨だ。いまでも変わらないと思う。

日本近現代史 - 読了:「農村青年社事件」

Bookcover ハイデガーの思想 (岩波新書) [a]
木田 元 / 岩波書店 / 1993-02-22
先日からちょっとしたハイデガー・ブームが訪れているのだが,考えてみると,木田元さんの本を読む→面白い→他の人の解説書を読む→訳が分からない→木田元さんの別の本に撤退,の繰り返しである。ハイデガー・ブームというより,木田元ブームといったほうがいいのかもしれない。

Bookcover 贈与論 (ちくま学芸文庫) [a]
マルセル モース / 筑摩書房 / 2009-02
残念ながら,この本,内容がさっぱり頭にはいらなかった。この時代の学術書の文体に慣れないせいだとおもうのだけれど,とっかかりがさっぱり掴めず,視線が文章の表面をつるつると滑っていく感じ。残念だが,このたびはご縁がなかったということで。。。

哲学・思想(2011-) - 読了:「贈与論」「ハイデガーの思想」

Bookcover ソ連史 (ちくま新書) [a]
松戸 清裕 / 筑摩書房 / 2011-12
オーウェル「1984年」ばりの統制社会というイメージは,ソ連の実情に即していない(スターリン期でさえも)。実際には,市民は手紙や投書によって私的利害に関わる要望や苦情を寄せるのに熱心だったし,政権の側もそれらの声を重視し,それに応えようとしていた。なるほど。。。全体主義というのは,案外そういう形をとるものかもしれない。

Bookcover 須賀敦子を読む (新潮文庫) [a]
湯川 豊 / 新潮社 / 2011-11-28
須賀敦子さんの生前の担当編集者だった方が綴る評伝的エッセイ。これ,読売文学賞をもらったのだそうだ。へえ。。。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「ソ連史」「須賀敦子を読む」

Bookcover 7人のシェイクスピア 6 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [a]
ハロルド 作石 / 小学館 / 2011-12-27

Bookcover 高校球児ザワさん 8 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [a]
三島 衛里子 / 小学館 / 2011-12-27

Bookcover 団地ともお 19 (ビッグコミックス) [a]
小田 扉 / 小学館 / 2011-12-27

Bookcover ちゃんと描いてますからっ! 2 (リュウコミックス) [a]
星里 もちる / 徳間書店 / 2011-12-13
これはたしか今月初めに読んで,記録するのを忘れていた。

コミックス(2011-) - 読了:「7人のシェイクスピア」「高校球児ザワさん」「ちゃんと描いてますから!」「団地ともお」

2011年12月28日 (水)

Vermunt, J.K., & Magidson, J. (2005). Factor Analysis with categorical indicators: A comparison between traditional and latent class approaches. In A. Van der Ark, M.A. Croon and K. Sijtsma (eds.), New Developments in Categorical Data Analysis for the Social and Behavioral Sciences, 41-62. Mahwah: Erlbaum.
 仕事の都合で読んだ。付け焼刃もいいところだが、仕事が押して会社に泊まり込んだのに(やれやれ) 計算が終わらないので結構ヒマ、という事情もある。
 カテゴリカル指標の因子分析のかわりに、複数の潜在クラス変数を想定するという方法があって、Latent Goldの開発者Vermuntさんはこれをlatent class factor analysis (LCFA)と呼んでいる。なるほど、名義変数への拡張が容易になるから、動機としてはよくわかる。で、この論文の主旨は、(1) たとえ指標がすべて二値であっても、因子分析ではわからないことがLCFAでわかったりするよ。(2)LCFAのアウトプットは指標に対するロジットモデルの係数になってしまってややこしいので、まずモデルを推定し、次に推定された所属クラス(ダミー変数にする)を独立変数、指標の値そのもの(多値のときはダミー変数にする)を従属変数にした線形回帰モデル(!)を推定し、その係数を因子負荷に見立てれば結果を因子分析っぽく表現できて都合がいいよ。
 便利かもしれないけどずいぶん荒っぽい話だなあとびっくりしたが、きっとLatentGoldでは実際にそういう出力が出るのであろう。
 論文の主旨はともかく、VermuntさんのいうLCFAと、Mplusの開発者MuthenさんがいうLCFAがちがうということに気が付いたので、その点が収穫であった。Vermuntさんがいっているのは、ちょうど因子分析で指標の背後にk個の連続的潜在変数を想定するように、k個のカテゴリカル潜在変数を想定することだ(各潜在変数のクラス数が2ならば(2^k)個のジョイント・クラスを推定することになる)。いっぽうMuthenさんがいうLCFAは、指標群の背後に連続的潜在変数とカテゴリカル潜在変数の両方を想定するタイプのモデルだと思う。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Vermunt & Magidson (2005) 潜在クラス因子分析は素敵だ

2011年12月27日 (火)

Armstrong, J.S. (2012) Illustions in regression analysis. International Journal of Forecasting, forthcoming.
 著者はマーケティングの予測手法研究の偉い人。この論文は先日読んだ Soyer & Hogarth へのコメンタリーで、昔話と冗談を交えたうんちく話という感じ。
 面白かったところをメモ:

 先生が推薦するところの、事前知識をフル活用したアプリオリな手法として、index method というのが紹介されているのだけれど、説明が短くてよくわからなかった。Armstrong & Graefe (2011, J. Business Res.)がreferされているが、先生はやたらに著作の多い方らしいから、きっと他のにも書いてあるだろう。

論文:データ解析(-2014) - 読了: Armstrong(2012) 回帰分析にまつわる幻想

2011年12月26日 (月)

Bookcover 小澤征爾さんと、音楽について話をする [a]
小澤 征爾,村上 春樹 / 新潮社 / 2011-11-30
音楽のことはからきしわからないんだけど,なんだか面白くて,めくりはじめたら止まらなくなってしまった。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「小澤征爾さんと,音楽について話をする」

この週末に読んだ本。

Bookcover 少年少女 (フラワーコミックススペシャル) [a]
ねむようこ / 小学館 / 2011-02-10
Bookcover とりあえず地球が滅びる前に 1 (フラワーコミックスアルファ) [a]
ねむ ようこ / 小学館 / 2011-10-07
 先日完結した「午前三時の危険地帯」があまりに良かったので(ヒロインのたま子のネガティブ思考に魂を奪われてしまった),諸君!ねむようこの本は全部持ってきたまえ!私が買い上げよう! という心理状態に陥っている。未読の二点を急遽購入。
 前者は短編集で,この人のストーリーテラーとしての実力を痛感した。飼い犬が突如若い男に見えてしまう話が良いと思った。後者はただいま少女誌に連載中で,女子バスケ部の高校生たちを主人公に,平凡な女子高生の日常描写と飛び抜けて馬鹿馬鹿しい設定を組み合わせたコメディ。

Bookcover テルマエ・ロマエ IV (ビームコミックス) [a]
ヤマザキ マリ / エンターブレイン / 2011-12-22
近年のマンガの一大ヒット作。あまりマンガを扱わない近所の堅めの書店でも平積み,いっぽうコンビニの棚でも大々的に展開していた。掲載誌「コミックビーム」は,創刊後数年は経済的苦境を自らネタにし,それを「噂の真相」に本気にされて休刊と報じられてしまうような有様だったと思う。こつこつ続けていると良いこともあるものですね,と,他人事ながら感無量。

Bookcover GUNSLINGER GIRL(14) (DC) (電撃コミックス) [a]
相田 裕 / アスキー・メディアワークス / 2011-12-17
終盤になって面白くなってきた。どうやら登場人物を片っ端から殺して終わりにするつもりらしい。キャラクター・ビジネスとしては問題があるだろうに。。。

Bookcover とりぱん(12) (ワイドKC モーニング) [a]
とりの なん子 / 講談社 / 2011-12-22

コミックス(2011-) - 読了:「とりあえず地球が滅びる前に」「少年少女」「とりぱん」「ガンスリンガー・ガール」「テルマエ・ロマエ」

2011年12月24日 (土)

Soyer, E., & Hogarth, R. (2012) The illusion of predictability: How regression statistics mislead experts. International Journal of Forecasting, forthcoming.
 経済学者たちに回帰分析についてのクイズを送りつけ,どう間違えるのか調べました,という論文。性格わるー。たのしー。
 クイズはこんな感じ。経済学の論文風のフォーマットで単回帰分析の結果を見せて (たとえば,回帰式 Y=0.32 +1.001X, YのSDは40.78, R^2は0.50)、

 えーと,正解は... まず標準誤差(SER) = sqrt((40.78^2)*(0.50))=29 を求めておいて,

 さて,その結果は... Q1, Q2に対してはすごく小さな値,Q3に対しては大きな値を答える人が多い。ところがQ4はだいたい当たる。Q3の0.936とQ4の1.001には大して差がないのに。
 著者らいわく,回答者は誤差項のことを忘れがちである。だからQ1, Q2では必要なXを小さめに見積もる。いっぽう係数の誤差については敏感である。だからQ3では確率を高めに見積もる(βの信頼区間の教示に引きずられて,という意味であろうか)。
 さて,この傾向は,問題文の係数の値を変えても,R^2を下げても変わらない。一緒に散布図をみせても変わらない。ところが,回帰分析の結果の表をみせずに散布図だけをみせると,正解率は急上昇する。ただし回答者は「回帰係数をみせてくんないと困るよ」と文句を云う(面白い!)。
 著者らいわく,この問いは経済学者にとって確かにトリッキーだったかもしれない。彼らはふだん,変数の有意性について検討するために回帰分析を使っているからだ。しかし,彼らがつくったモデルは予測ツールとして意思決定に用いられることがありうる。だから,回帰分析の結果から,たとえばある政策が「平均的に」ポジティブな影響をもたらすかどうかを読み取れることだけでなく,その政策のせいでネガティブな影響を受ける人がどのくらいいるかを読み取れることも大事なのである。改善策としては,単にモデルを示すだけでなくシミュレーションも示すのがいいんじゃないか。云々。

 仕事からの逃避でぱらぱらめくっていたんだけど,いやあ,面白かった。俺自身は経済学のことはさっぱり疎いし,関心もあまりないのだが,回帰モデルのような統計モデルが人々に illusion of predictability を与えるというのは常日頃から痛感するところである。逆に実務家の方で「統計学なんてテンで当てにならねぇよバーカバーカ」と言い放つ方が時々いらっしゃるけれど,あれもまたこのillusionの反動なのではないかと思う次第である。
 話の本筋からは離れるけれど,予測を巡るこのバイアスは,昔のTversky & Kahnemanとかによってすでに指摘されていたりしないのかしらん? で,もっと一般的な認知法則の発現例として説明できたりしないのかしらん? 代表性ヒューリスティクスとか。

論文:データ解析(-2014) - 読了: Soyer & Hogarth (2012) 経済学者が回帰分析に抱く幻想

Bookcover 北朝鮮の指導体制と後継――金正日から金正恩へ (岩波現代文庫) [a]
平井 久志 / 岩波書店 / 2011-04-16
著者は共同通信の人。今年4月刊の書き下ろし。本屋でみかけて買い込んで,さあ読もうかという日に金正日が亡くなった。
 覚悟はしていたのだけれど,読んでてだんだん暗鬱な気分になった。事態がどう転んでも,これからろくなことは起きなさそうだ。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「北朝鮮の指導体制と後継」

Bookcover 星屑ニーナ 2巻 (ビームコミックス) [a]
福島 聡 / エンターブレイン / 2011-12-15
不死のロボットを主人公にしたファンタジックなSFコメディ。途中で話がよくわかんなくなってしまった...

Bookcover ハチワンダイバー 23 (ヤングジャンプコミックス) [a]
柴田 ヨクサル / 集英社 / 2011-12-19

コミックス(2011-) - 読了:「星屑ニーナ」「ハチワンダイバー」

2011年12月22日 (木)

Manchanda, P., Ansari, A., Gupta, S. (1999) The "Shopping Basket": A model for multicategory purchase incidence decisions. Marketing Science, 18(2), 95-114.
 複数カテゴリの購買を一気に説明する統計モデル。仕事の都合で読んだ。
 世帯 h がある買い物 t においてカテゴリ j を買ったかどうかを表す二値変数を y_{hjt}, その背後にある効用を u_{hjt} とし (分散を1,閾値を0とする)、
u_{hjt} = \beta_{hj0} + \beta_{hj1} (own effects) + \beta_{hj2} (cross effects) + \epsilon_{hjt}
とする。own effectsはカテゴリ j のマーケティングミクス変数, cross effectsは他のカテゴリのマーケティングミクス変数。誤差項のベクトルは多変量正規分布に従うものとする (\epsilon_{ht} ~ MVN[0, \Sigma])。要するに、各カテゴリの購買をマーケティング変数で説明する多変量プロビットモデルをつくり、cross effectsと残差共分散行列の両方でカテゴリ間の関係を表そうという作戦である。著者らはカテゴリ間でマーケティング変数のcross effectsがあることをcomplementarity, 残差相関があることをco-incidenceと呼んでいる。前者は販促に、後者は売り場配置に役立つでしょうとのこと。
 次に、世帯レベルのパラメータベクトル \beta_h = {\beta_{h0}, \beta_{h1}, \beta_{h2}}について
\beta_h = (デモグラ変数) \mu + \lambda_h
とする。で、\lambda_h ~ MVN[0, \Lambda] とする。えーと、要するに2段目のランダム回帰係数を1段目で説明する階層回帰モデルだ。
 これをMCMCで推定する。事前分布として\muにはMVN, \Lambdaには逆ウィシャート分布を与える。\Sigmaの事前分布の話とMCMCの具体的な手続の説明は難しくてよくわからなかった。まあいいや。
 分析例は、洗濯洗剤、柔軟剤、ケーキミックス、ケーキフロスティングの4カテゴリの購買データ。たぶんホームスキャンパネルデータだと思う。えーと、ただいま調べたところ、フロスティングってはケーキの表面に塗る甘い奴のことらしい。俺はあまり好きじゃないが、アメリカ人は好きそうですね、あれ。マーケティング変数としては価格と販促有無を使っているのだが、実際の推定時には販促有無に対する係数はh,tを通じて等値にしてしまっている。デモグラ変数は世帯人数と買い物回数。もっとシンプルなモデル(complementarityやco-incidenceを抜いたモデル)と比べて、ホールドアウト・データに対する予測が優れている由。

 Marketing Science誌というのは,心理学でいうところのJEP:Generalのような,日本人が一度載せたら人生変わっちゃうような超一流誌だろうと思うのだが、たまにこの雑誌の論文を読んでいると、不思議の国に迷い込んだような気がすることがある。
 この論文の場合でいえば、正直なところどこがどうすごいのか、素人の俺にはよくわからなかった。問題は新しくないと思うし、モデリングの発想は比較的に素直なものだと思うし、分析例はたった4カテゴリで実用性に乏しいし、どんどんスケールアウトできるモデルでもなさそうだし、いろいろごちゃごちゃ言い訳も多いし。。。俺が理解していないだけで、数理技術的にすごいのだろうか? それともこの論文の時点では、そもそも階層モデルのMCMC推定自体が新しかったのだろうか?
 もうひとつ疑問なのは、結局このモデルはカテゴリ間に観察された購買共起関係をマーケティング変数の交差効果と残差相関に分解しているわけだけど,その分解がどれだけロバストなのか、という点。分解のしかたが違うのに同じような予測を返す複数のモデルが作れるはずで、だからホールドアウトに対する予測の良さは証拠にならないと思う。交差妥当化をやっていれば納得したけれども。直感的には、ML推定では絶対identifyできないモデルを最新技術で無理矢理推定しといて、そのパラメータを実質的に解釈するという点が気色悪い。事前分布次第でどうとでもなるんじゃないかと。
 だいたいですね、本文15頁の論文にアブストラクトが丸々1頁あるってのはどういうことかと。要約という概念を打ち砕くつもりか。縦読みすると真の要旨が浮かび上がるとか? そんなこんなで、頭にいっぱいハテナマークを浮かべながら読了。

論文:マーケティング - 読了:Manchanda et al. (1999) 複数カテゴリ購買生起モデル

Castro, S.L. (2002) Data analytic methods for the analysis of multilevel questions: A comparison of intraclass correlation coefficiens, r_{wg(j)}, hierarchical linear modeling, within- and between-analysis, and random group resampling. The Leadership Quarterly, 13, 69-93.
 階層的データのいろんな分析手法を紹介し、同じデータに適用して結果を比較してみせる啓蒙論文。扱われているのは、級内相関係数(ICC), Jamesらのr_{wg(j)}, 階層線形モデル (HLM)、within- and between-analysis(WABA), それからrandom group resamplingというなにやらbootstrapみたいな手法。
 WABAについて知りたくてざざざーっと目を通した。他の話題は完全に飛ばし読み。ICCだとかgeneralizability theoryだとかなんとか、ああいうの昔っから大の苦手なのである。
 WABAはFred Dansereauという組織研究の先生が唱えている方法らしく、これはなかなか面白そうなのだが、日本語での説明はどこかの紀要の簡単な紹介くらいしか見当たらない。この論文によれば、どうやら分散分析で全平方和を分解するような感じで、全体の相関係数を階層に分解していくらしい。へー。詳しくは Dansereau et al. (1984, 書籍), Yammarino & Markham(1992, J. Applied Psych.), George & James(1993, J. Applied Psych.), Schriesheim(1995, Leadership Qtr.), Yammarino(1998, Leadership Qtr.) あたりをみよ、とのこと。どうやらメジャーな方法とは言い難そうだ。

 階層的データ分析についてはちょっと面白い経験をしたことがあって... 前に市場調査の業界団体が統計手法のセミナーを主催したことがあり、私もちょっとだけ喋らせて頂いたのだが(思えば申し訳のないことだ)、ある講師の方がHLMを紹介しておられて、ちょっと気づかないような面白い話題もあり、勉強になった。で、客席には当時の勤務先の社員も何人かいたのだけれど、あとになって,先日のセミナーの内容を報告しなければならない、ついてはあの階層の話がよくわからなかったんですが...という。内容がわからないというより、実務における必要性がぴんとこない、というのである。いやいやこんなに身近な話はないのよ... と力説してみたのだが、いまいち納得してもらえなかった。
 これは聞き手の問題でもなければ(優秀な人であった)、説明が下手だからでもなく(私の説明はともかく、講師の方の説明はとてもわかりやすかった)、なにかもっと本質的な事情があるのではないかと思う。もしかすると、「なぜデータの階層性を無視してはいけないのか」という話は、データの分析を通じて得られる知見の(外見上の)豊かさと直接に関係しないから、実際にその手のデータと向き合って半泣きになるような目に合わないことには、その必要性を実感しにくいのかもしれない。そう考えてみると、データ解析にも派手な話題と地味な話題がありそうですね。どうせ勉強するのならもっと派手目な話題のほうが、人生少しは楽しいかもしれない。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Castro(2002) 階層的データの分析手法対決

Bookcover ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ) [a]
/ 秋田書店 / 2011-07-08
今年評判になった作品。確かに面白い。
手塚治虫のアシスタント出身のマンガ家として,石坂啓,寺沢武一までは知っていたが,わたべ淳・高見まこもそうだったとは知らなかった(職場結婚だったんですね)。わたべ淳さんという方,廃業寸前の窮地を赤裸々に描いた私マンガ「遺跡の人」以来,新刊を見かけないのでどうなさったかと思っていたのだが,このマンガの取材シーンでお元気そうな姿を見せている。

Bookcover パンドラ (Feelコミックス) [a]
ねむ ようこ / 祥伝社 / 2010-08-07
短編集。先日完結した「午前三時の危険地帯」があまりに面白かったので,探して買った。猟奇的な話をカジュアルに描いたデビュー作と,セックスしながらケーキを食うのが好きな女が出てくる奇妙な話が面白かった。

Bookcover くるみのき! 1 (BUNCH COMICS) [a]
青木 俊直 / 新潮社 / 2011-11-09
このマンガ,人物の絵柄が安定しているわりに,マンガとしてはすこし読みにくいような気がする。不思議に思って調べてみたら,著者の方はキャラクターデザイナーとして有名な方なのだそうで,納得。ついでに,私が深く尊敬してやまない少女マンガ家・谷川史子さんの旦那さんだと知り驚愕。

Bookcover 数寄です! 2―女漫画家東京都内に数寄屋を建てる [a]
山下 和美 / 集英社 / 2011-12-20

Bookcover 昭和元禄落語心中(1) (KCx(ITAN)) [a]
雲田 はるこ / 講談社 / 2011-07-07

コミックス(2011-) - 読了:「パンドラ」「くるみのき!」「ブラックジャック創作秘話」「昭和元禄落語心中」「数寄です!」

2011年12月19日 (月)

基本的にはヒマ・ライフを謳歌しているように思うのだが,先週は「年に一度」級の忙しさで,なにかをきちんと読むどころの騒ぎではなかった。これは飯のついでに目を通した論文。

Bennett, C.M., Baird, A.A., Miller, M.B., Wolford, G.L. (2010) Neural correlates of interspecies perspective taking in the post-mortem Atlantic Salmon: An Argument For Proper Multiple Comparisons Correction. Journal of Serendipitous and unexpected results, 1(1), 1-5.
 鮭の死体をfMRIに入れて社会的視点取得課題を与えたら、なんと脳のある部位が活性化しました、とのこと。ははは。もちろんこれはプラクティカル・ジョークで、ちゃんと多重比較法を使って検定しないと変な結果が出ますよ、という主旨である。
 twitterである方が呟いていたのを見て知った論文。掲載誌はこれから創刊するオープンアクセス誌だそうで、どこまで本気なのかよくわからない。
 正しい分析方法として、ボンフェローニ法のようなfamily-wise error rate調整とあわせて、false discovery rate (FDR)調整も紹介されていた。fMRIのソフトにはFDRの機能が入っているのもあるんだそうだ。FDRって統計学の本でしか読んだことがなかったのだが、実際に使われているんだなあ。以前から一度使ってみたいと思っているのだが、まだ機会がない。
 そういえば先日、知人に「市場調査であんまり多重比較法使わないのはなぜだろうね?」と尋ねられ、仮にそうだとしたらそれにはいろいろと理由はあるんだろうけど、検定力の低下もそのひとつかもなあ、と思った。FDRには一定のニーズがあるかもしれないと思う。
 それにしても、なぜ鮭だったのかしらん。鮭鍋パーティでも開いたのだろうか。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Bennett, et al. (2010) 死んでるシャケの脳活動

Bookcover シェイクスピア全集 (〔36〕) (白水Uブックス (36)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
ひねくれすぎなんだろうけど,俺はこの話,素直に楽しめなかった。グローバル企業のエリート・プロスペローがぬれぎぬを着せられて失脚,極東の島国の出張所に左遷され,腹いせに人事権を振りかざして現地採用社員をこき使う。さらには出張でやってきた経営陣を罠にはめて痛めつけようとするが,いろいろあって疑いが晴れ,本国に栄誉の帰還と相成る。いっぽう,アホでのろまで英語が下手な現地採用のキャリバンが企んだプロスペロー追い落とし工作は無惨に失敗,出張所は閉鎖,失職したキャリバンはひとり泣きながらハローワークに通うのであった。。。というような筋が,ついつい思い浮かんでしまって。

フィクション - 読了:「テンペスト」

Bookcover ハイデガー「存在と時間」入門 (講談社学術文庫) [a]
渡邊 二郎,岡本 宏正,寺邑 昭信,三冨 明,細川 亮一 / 講談社 / 2011-11-11
「存在と時間」を複数の専門家が寄ってたかって解説する,という内容。きっと親切に書いて下さっているのだろうけれど,残念ながらハイデガー特有の奇妙な用語が邪魔をして,一割も理解できなかった。ま,本には読むタイミングってものがあるから,いまはしかたがない。

哲学・思想(2011-) - 読了:「ハイデガー『存在と時間』入門」

Bookcover 午前3時の危険地帯 4 (Feelコミックス) [a]
ねむようこ / 祥伝社 / 2011-12-08
2011年に読んたマンガのなかで,これがベスト作品。ここまで心に染みいるマンガは,本当に久しぶりである。最終巻を入手し読み終えた翌日などは,ふと気がつくとこのマンガのことを考えていた。
 祥伝社の女性コミック誌に連載されていたごくごく他愛ない恋愛マンガが,なぜにこんなに中年男の胸を撃つか,とあれこれ考えたのだが(ヒマなのか私は),このマンガにはいくつかの重要な美点がある。第一に,物語の一方の主役である,イケメンで女たらしでお調子者,でも心に深い空虚を抱えているパチンコ屋アルバイト・宮下くんの人物造形がとても良い。第二に,超地味かつ超奥手なヒロイン・たま子が,一番肝心なところで感情をあらわにすることができず,能面のような無表情の陰に隠れてしまうところ,あまりの共感に切なくなってしまう。第三に,富山の実家が良い。基本的に東京の閉塞した空間のなかで進んできた物語が,終盤にたま子が富山の実家に逃げ帰ってしまうところでサーッと視覚的広がりを持つのだが,この実家というのがまた良く描けているのである。話の展開の都合上必要な概念としての田舎ではなく,人々が日々の暮らしを営むひとつの世界としてのリアリティがある。頁でいえば短いけれど,方言に背景に,さぞや手間をかけたのだろう。第四に,とにかく,もう,たま子が可愛い。
 週末を費やして何度も読み返した末につくづく感じるのは,奇妙な感想だが,ああ政治って大事だなあ,ということである。いや,物語自体には政治のセの字も出てこないのですが。タマちゃん(←もはやちゃん付け)が富山に帰ったとしても,地方経済は疲弊しているし,パチンコ屋店員で生計を立てるというのもなかなか厳しかろうし... 特別な技能を持つわけでもないごく平凡な二人が,ごく平凡に恋をしてごく平凡な家庭を持ち,さほど苦労せずに子育てできるような,そういう地域社会を私たちは持ちたいものだ,などと,どこかの議員の演説のような感慨を持った次第である。タマちゃんのせいで。

Bookcover 進撃の巨人(6) (講談社コミックス) [a]
諫山 創 / 講談社 / 2011-12-09

Bookcover 銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス) [a]
荒川 弘 / 小学館 / 2011-12-14

コミックス(2011-) - 読了:「午前三時の危険地帯」「進撃の巨人」「銀の匙」

2011年12月10日 (土)

Bookcover 仏教、本当の教え - インド、中国、日本の理解と誤解 (中公新書) [a]
植木 雅俊 / 中央公論新社 / 2011-10-22
著者はお経をサンスクリット語の原典と漢訳で比較する研究を行っておられる方なのだそうで,その成果を素人向けに書いた本。意図してのことであろう,世間話を織り交ぜたユルい感じの文章になっている。常勤の大学教員などではないようだが,なにをして生計を立てておられるのだろうか,などと余計なことを考えたりして...
 「誤解」という強い言葉を使っているので,サンスクリット語の原典が正しい,あとは全部まちがった仏教理解である,という主張が展開されるのかと思ってびくびくしたのだが,たとえ誤解であってもその豊かさに目を向けようという立場であった。
 日本における漢訳仏典の解釈はしばしば断片を取り出した恣意的なものになったのだそうで,たとえば日蓮は法華経のなかのあるくだりについて,これは「自我得仏来」からはじまって「速成就仏身」で終わっている,「自」ではじまって「身」で終わってるんだから,これは最初から最後までで自分自身のことなのだ,と説いたのだそうだ。しかし実際には,「自我得仏来」は正しくは「我れ仏を得てよりこのかた」,つまり「自」はfromを意味する。著者いわく,日蓮はそんなことはわかっていただろうし,これはただの語呂合わせ,でもそれを通して言っている内容は素晴らしい,とのこと。面白いなあ。

哲学・思想(2011-) - 読了:「仏教,本当の教え」

Chib, S., Seetharaman, P.B., Strijnev, A. (2002) Analysis of multi-category purchase incidence decisions using IRI market basket data. "Econometric Models in Marketing," volume 16, pp.55-90. Elsevier Science.
 延々と探しつづけた末,もはやタイムリミットかというときになってようやく巡り会った,求めていた通りの論文。アブストラクトを読んで,ほんのちょっと目頭が熱くなりました。あああ,長かったあああ。
 いや,まあ,探し方が悪かったんですけどね。というか,自分がなにを探しているのか,自分でよくわからなかったのである。門外漢の辛いところだ。

 カテゴリ間に補完性と代替性があるにちがいないがどこにあるのかはわからない,という複数カテゴリの購買パネルデータを用い,データマイニング的な手法を使わず,カテゴリ間の補完性・代替性と効用の消費者間異質性を一発推定する,という論文。各カテゴリの購買有無を従属変数,マーケティング変数を独立変数にとった多変量プロビットモデルをつくり,従属変数の共分散を総当たりで推定し,しかも効用はカテゴリx世帯ごとにランダム。そんなモデル,まともに同定できるわけがないが,そこでMCMCの登場である。
 補完性・代替性を無視したり異質性を無視したりすると,マーケティング変数のパラメータ推定が歪み,間違ったビジネス決定を招きます,というわけで,IRIからもらってきた同一のスキャンパネルデータに,このモデルともっとシンプルなモデルを当てはめ,いかに推定結果が異なるかを示している。御説ごもっともだが,シニカルにいえば,著者らお勧めの完全なモデルの適用例だって,元のデータに含まれている25カテゴリから12カテゴリを選んで分析しているんであって,その段階で大事な補完性・代替性が失われているかもしれないわけである。結局の所,なにが正解かなんて誰にもわかんないですよね。。。などとぶつぶつ呟きながら読んでいたのだが,それはそれとして,とにかく大変勉強になった。
 MCMCの技術的な説明のところ,残念ながら私には難しすぎる。理屈はいいから,誰かコード例を見せてくれないかしらん。。。

論文:マーケティング - 読了:Chib, Seetharaman, & Strijney (2002) 複数カテゴリ購買の多変量プロビットモデル

Martin, A.D., Quinn, K.M., Park, J.H. (2011) MCMCpack: Markov Chain Monte Carlo in R. J. Statistical Software, 42(9).
RのMCMCpackパッケージの解説。回帰モデル(ロジスティック, プロビット, ポワソンを含む)、IRTモデルや因子モデル、変化点モデルなどのMCMC推定が可能とのこと。
こういうの、ふつうは使いながら覚えるものだと思うのだが、私は先にトリセツを読まないとなんとなく落ち着かないのである。損な性分だ。

論文:データ解析(-2014) - 読了: Martin, et al. (2011) MCMCpack

小林光夫, 吉識香代子 (2001) PCCSトーン、PCCS三属性値, およびマンセル三属性値間の数学的関係, 日本色彩学会誌, 25(4), 249-261
仕事の都合で読んだもの。内容は表題の通り,PCCS表色系とマンセル表色系を変換する数式をつくったという論文。こういうの,PCCSをつくった会社が提供すればいいんじゃないかと思うのだが。

論文:心理 - 読了:小林・吉識(2001) PCCS表色系とマンセル表色系の変換

2011年12月 8日 (木)

仕事上の必要に迫られて、選択モデルの資料の山を机の脇に押しのけ,急遽読んだ文献。

小林光夫(2002)「色名による表色法」, 日本色彩学会誌, 26(4), 253-260.
小林光夫(2003)「心理的な表色系PCCSとNCS」, 日本色彩学会誌, 27(1), 56-71.
 研究論文というより、学会誌に連載された啓蒙記事。表色系(色を表すシステム)のひとつに日本産のPCCSというのがあるんだそうで、その解説。
 読者がマンセル表色系に詳しいことを前提に説明しているので、詳しくない俺にはちょっとつらかった。さらに、Ciniiで買ったPDFはモノクロなもので、ほとんど真っ黒なチャートを見ながら読み進めることになり。。。9割がた理解できていないけど、ま、いっか。

松田豊・加藤美奈子・嶋崎裕志(2000)「色の記憶ーPCCSカラーカードの再認」, 日本色彩学会誌, 24(3), 146-155.
 PCCSのカラーカードを使った色の再認記憶実験。あるカードを30秒記銘、リハーサルを妨害しつつ2分間保持、ランダムに並べられた47枚のなかから選択。色空間のなかで誤再認が生じる方向性を、これでもかというくらいに細かーく記述している。おそらく第二著者の方の卒論であろう。
 PCCSではhueとtoneという二次元の空間を考える。マンセル空間と性質が違うようだが、toneってのはまあvalueとchromaがコミになったようなものらしい。で、誤再認はhueよりもtoneで起きやすいんだそうだ。さらに、hueによってtone誤再認の方向性が違う由。へえー。
 全然知識がないので、この研究の基礎研究としての位置づけについてはよくわからない。色の記憶メカニズムという問題と、色刺激をどんな表色系で表すかという問題とは本質的には別だろうから、「OSA色カードを使った実験はあるけどPCCS色カードをつかった実験はないからやってみます」という問題設定にはどういう意味があるのかしらん、と。しかし一読者としては、知見をマンセル表色系の難しい言葉で説明されるより、もっと簡易な表色系で説明してくれるほうがうれしい... という面はある。それに、表色系間の色の変換はそんなに簡単な話ではないそうだから、そういう面でも価値がある研究なのだろう。

論文:心理 - 読了:小林(2002,2003) PCCS表色系; 松田ほか(2000) PCCSカラーカードの再認

2011年12月 6日 (火)

Seetharaman, P.B., et.al. (2005) Models of multi-category choice behavior. Marketing Letters, 16(3/4), 239-254.
 複数カテゴリ商品の選択モデルについて、9人が連名で書いているレビュー論文。いやあ、これをもっと早く見つけていればよかったのだが。検索ワードがわからなかったせいで、ずいぶん遠回りをした。
 関心あるところをメモ:

 ほかに店舗選択のモデルもちょっとレビューされていたが、そっちはあまり関心ないので省略。

論文:マーケティング - 読了:Seetharaman, et al. (2005) 複数カテゴリの選択モデルレビュー

2011年12月 5日 (月)

Boztug, Y., Hildebrandt, L. (2005) A market basket analysis conducted with a multivariate logit model. SFB 649 Discussion Paper, 2005-028. Humboldt-Universitat zu Berlin.
 仕事のことなのであまり具体的には書けないが,ここしばらく延々と頭を抱え続けていた問題があって,いっくら探しても文献が見つからず,途方に暮れていたのである。abstractがそれらしい論文をみつけては驚喜して入手,中身を読んでは意気消沈,の繰り返しであった。ついに,ようやく,探している話にかなり近い話を見つけることができた(要するに探し方が悪かったのである)。薄ーい内容の論文だが,とにかく手がかりを見つけたという点が嬉しい。
 「複数カテゴリからの任意個の商品選択」を説明する数理モデル。意外なことに,あまりややこしいことは考えず,基本的には各商品の購買有無を従属変数にとった多変量ロジットモデルをつくってしまうアプローチである(そんなんでいいんすか,と拍子抜け)。ただし独立変数として,世帯変数とマーケティングミクス変数のほかに,併買商品数(バスケットのサイズ),ならびに他カテゴリ商品の購買有無を入れ込む。えーと,逐次モデルにはならないんだけど,同時推定できるみたいですね。
 バスケットのサイズは購買行動の所与の性質であるという側面と,個々のカテゴリについてのマーケティングミクスの結果という側面もあると思うので,このように外生的に扱って良いのか,俺にはどうもよくわからないんですが。多変量ロジットだなんて親しみが持てる手法じゃなくて,もっと小難しい感じの手法があるような気もするんですが(著者は今後の課題として一般化加法モデルの適用を挙げている)。いやいやそんなことより,消費者の異質性をモデルに入れないことには,ちょっと商売にならないんですが。。。などなど,いろいろ思うところあるが,とにかく先行研究をまとめて,論文の形にして,俺のような素人に見つけさせてくれたことに大感謝。

論文:マーケティング - 読了: Boztug & Hildebrandt (2005) 多変量ロジットモデルでバスケット分析

2011年12月 4日 (日)

Bookcover 就職とは何か――〈まともな働き方〉の条件 (岩波新書) [a]
森岡 孝二 / 岩波書店 / 2011-11-19
就活についての本というより,労働問題についての本。「まともな働き方」実現のための方策はワークシェアリングである由。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「就職とは何か」

Bookcover ミュジコフィリア(2) (アクションコミックス) [a]
さそう あきら / 双葉社 / 2011-11-28
クラシック音楽とマンガは相性が良いらしく,音楽を題材にしたマンガには「のだめカンタービレ」「神童」など大ヒット作・傑作が揃っている。不思議なもので,ジャズを題材にしたマンガってあんまりないですね。細野不二彦に「Blow up」という作品があったが,たぶんいまは手に入らないと思う。
 この作品はこうした一連の音楽マンガのなかでも非常に異色で,現代音楽を題材にしている。なんでそんな小難しい話をと思ったのだが,とても面白い。さすがは「神童」の作者だ。

コミックス(2011-) - 読了:「ミュジコフィリア」

2011年12月 3日 (土)

Koppelman, F.S., Wen, C.H. (2000) The paired combinatorial logit model: properties, estimation and application. Transportation Research Part B, 34, 75-89.
 離散選択モデルのひとつであるpaired combinatorial logit モデル (PCLモデル) がいかに優れておるか、という論文。PCLモデルとは、multinominal logitモデルのIIA特性を緩和したモデルのひとつで、nested logit モデルをさらに大げさにしたような奴。選択肢のすべてのペアがそれぞれひとつのネストをつくっていると考える。選択肢が3つあったら、選択肢1はネスト{1,2}とネスト{1,3}に属しているわけだ。

 恥ずかしながらこの論文を見つけたときは、paired combinatorial logitだって!! そんな手法があるのか!! nested logit とちがって事前に構造を決めなくていいじゃん!! やったぜ俺!! 検索の天才!! と思ったのである。で、喜び勇んで読み始めたら、だんだん疑念がわいてきて... 先日どさっと買い込んだ本のなかの一冊、たぶん有名な教科書であるTrain(2009)を調べたら、ちゃあんと載ってました。この論文の著者の研究も引用されてました。離散選択モデルの世界では有名なモデルなのであった。よく知らない分野の話を毎度付け焼刃で勉強しているから、こういうナサケナイ目にあうのである。というわけで,意気消沈して後半から流し読み。
 ところで、ずぶの素人としては、そうまでしてIIA特性を緩和したいんならさっさと多項プロビットモデルを使えばいいんじゃないですか? 早いPC買ってきてシミュレーションでガンガン解けばいいんじゃないですか?という気がするのだが、その道の方々にはなにかしらの事情があるのだろう。ぼんやりディスプレイを眺めて待ってんのが嫌だとか。閉形式のほうがクールだとか。

里村卓也(2008) 消費者の理論的選択モデルに関する考察. 三田商学研究, 51(4), 121-133.
 ネットで拾った論文。私がお名前を知っているくらいだから、著者はマーケティング研究の分野で有名な研究者だと思う。前半は経済学的な観点からの、予算制約下での効用最大化モデルの紹介。複数商品の選択もカバーできる(バラエティ・シーキングの分析に使われている由)。後半は選択の文脈効果を統一的に説明する数理モデルの紹介。Busemeyerのdecision field theoryの拡張とか(ムズカシイ...)。

 論文の主旨からは外れるのだが、マーケティングの分野で用いられるモデルを誘導型(reduced form)と構造型(structural form)に区別しているところ、勉強になった。前者は「理論を用いてデータ間の関係を記述し、その後はその理論にたちもどらずに誘導されたモデルだけからデータを解析する方法」。ただし、「理論モデルを利用することなく統計モデルとデータだけを利用して知見を得ようとするデータ主導の方法」を含めることもある。後者は「企業や消費者の意思決定過程をモデル化し、統計モデルとデータからモデルの同定を行う」方法。
 なるほどねえ、便利な用語だなあ、と腑に落ちたのだが、具体例に当てはめて考えると、これは案外ややこしい話だと思った。いい例ではないかもしれないが、ある事柄についての態度項目についての探索的因子分析を行う人のなかには「各項目への回答はその回答者が持っている少数個の潜在的態度を反映しているのだ」と心的な反応生成メカニズムに踏み込んで解釈する真剣な人と、「なんでもいいから似た項目がまとまればいいや」とか「回答の傾向が少数の因子得点に縮約できればハッピー」としか考えていない呑気な人がいると思う。因子分析モデルは前者の人にとっては構造型、後者の人にとっては誘導型ということになろうか。このように、同じ数理モデルが異なる思惑で用いられている例を、ほかにもたくさん挙げることができるだろう。さらにややこしいと思うのは、特定の理論的見地が深く刻み込まれているモデルがその理論抜きで使われている場合で、たとえば、消費者の補償型購買意思決定など露ほども信じていないけど、コンジョイント分析で売上シミュレーションしちゃう、なんていうのがそれだと思う。
 気になって、引用されているChintagunta et.al.(2006)の該当箇所も読んでみたのだが、彼らが書いているように、これは relative weights placed on data fitting [...] versus relying on theory in building an econometric modelという話なのですね。モデルが2つのタイプにパキッと分かれるというより、theory-drivenとdata-drivenの連続体上に位置するという感じの話なのだろうと思った。と同時に、ある人が道具として使うモデルの成り立ちと、その人のアプローチとは分けて考えたほうがいいなあ、などと思った。
 こんなことについてあれこれ考えてしまったのは、ぼんやりしているとついつい理論的負荷を帯びまくった構造型モデルのほうがカッコいいように思えるからであって(理由1:理論さえ正しければ外挿的予測が可能だから; 理由2:なんか頭良さそうにみえるから)、要するにちょっと動揺しただけである。

論文:データ解析(-2014) - 読了:里村(2008) 消費者の理論的選択モデル; Koppelman&Wen(2000) paired combinatorial logit モデル

2011年12月 2日 (金)

ただいま 「なんであれ読んだものは記録」 強化期間中につき,論文のメモを二件。すぐに飽きるような気がしてきたが。

土田尚弘(2010)「マーケティング・サイエンスにおける離散選択モデルの展望」, 経営と制度, 8, 63-91.
 掲載誌は首都大の経営学専攻の紀要。著者は朝野先生のお弟子さんだと思う。こういうレビュー論文、ほんっとに、ものすごく助かります。ありがたや、ありがたや。
 選択モデルの誤差項に相関を許すかどうかと、そのモデルがIIA特性を持たないかどうかは同じではない由。知らなかったー。

Temme, D., Paulssen, M., Dannewald, T. (2008) Incorporating latent variables into discrete choice models: A simultaneous estimation approach using SEM software. BuR – Business Research, 1, 220-237.
 できれば新しいことは勉強したくないわけですよ! いまさら何を学んだってどうなるものでもないんだから! 手早く済ませて酒でも飲みたいのですよ! という心の叫びに従って読んだ論文。あれもこれも全部Mplusだけで済ませることができたら助かるなあと思って。掲載誌はドイツのオープンアクセス誌で、どういう位置づけの雑誌なのかわからない。
 個人属性を表す潜在変数を効用の説明変数にした離散選択モデルをMplusでつくったよ、という内容。Mplusは名義尺度の従属変数をそのまま扱えるから、まあそりゃできるでしょうね、という話ではある。事例は交通手段の選択で、中身には全然関心ないので飛ばし読み。好きな乗り物に乗らせとけばいいじゃないですか。
 要するにSEMと多項ロジットモデルを合わせましたという話であって、てっきり有限混合分布が出てきたりIIA特性の緩和の話が出てくるのかと思っていたのだが、その実例は結局出てこなかった。がっくり。ま、スクリプトが載っていたから、いずれなにか助かることがないとも限らない。
 論文の趣旨からはちょっと離れるが... 離散選択モデルのマーケティング分野での適用としては、コンジョイント分析とスキャンデータの分析が思い浮かぶが、前者の場合はたいてい、まずは選択データで個人レベルの部分効用を求めましょう、しかるのちにそれと個人属性との関係を調べましょう、という風に考えると思う。選択モデルに個人属性を埋め込んで同時推定したほうが洒落てるじゃんと思い、実際それに近いことを周囲に提案したこともあるのだが、そんなんワケワカランからやだ、という反応であった。ま、その気持ちもわかる。そんなこんなで、そもそも同時推定を誰がいつ必要としているのか、という点についても考える必要があると思う。
 いま調べたら、第一著者は前に読んだ順序尺度指標の測定不変性についての論文の著者でもあった... どうもお世話になってます。

論文:データ解析(-2014) - 読了:土田(2010)「MSにおける離散選択モデルの展望」; Temme, et.al. (2008) 「潜在変数入りの離散選択モデルをSEMのソフトで同時推定」

Bookcover ヒトラーの側近たち (ちくま新書) [a]
大澤 武男 / 筑摩書房 / 2011-11-07
先ほどざっと目を通した。全体に緩い感じの,読みやすい内容であった。著者はドイツ在住なのだそうで,あとがきで最近の日本の政治行政の無能ぶりを憂えておられるのだが,本の内容となんら関連づけがないので,ちょっと笑ってしまった。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「ヒトラーの側近たち」

Bookcover 闇金ウシジマくん 23 (ビッグコミックス) [a]
真鍋 昌平 / 小学館 / 2011-11-30
このたびのエピソードは悪党同士がだまし合う展開であった。サスペンスが高まるにつれてコマ間の時間的間隔がどんどん開いていく。ふだんマンガを読まない人にはちょっと辛そうだが,売れているそうだから,これで良いのだろう。

以下,記録するのを忘れていた本:

Bookcover ZUCCA×ZUCA(2) (KCデラックス モーニング) [a]
はるな 檸檬 / 講談社 / 2011-11-22
宝塚マニアをコミカルに描いた作品,第二巻。面白い。

Bookcover エデナの世界 [a]
メビウス / ティー・オーエンタテインメント / 2011-09-24
フランスBDの巨匠メビウスの80年代の作品。絢爛たる魔術的な色彩と,悪夢が悪夢を呼ぶ重層的な物語。マンガとは似て非なるものであって,どう読めばいいのかとまどう面もあるが,一頁一頁ゆっくりめくっていくのがとても楽しい。

コミックス(2011-) - 読了:「エデナの世界」「ZUKKA ZUKA」「闇金ウシジマくん」

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