投稿者「elsur」のアーカイブ

読了:Gelman & Carlin (2014) 諸君の検定力計算は甘い。タイプSエラーとタイプMエラーを求めなさい

Gelman, A., Carlin, J. (2014) Beyond Power Calculations: Assessing Type S(Sign) and Type M(Magnitude) Errors. Perspectives on Psychological Science, 9(6), 641-651.

 ずっと前に目を通して放置していた奴。こういうメモが散乱して収拾がつかなくなっている。

 Gelman兄貴らが心理学者向けにお送りする、検定力に関する解説論文。タイプSエラーとタイプMエラーという面白い概念が登場する。
 ふだんこういう論文はほげーっと脱力しながら目を通すのだけれど(そして読み終えると忘れてしまう)、今回は検定力の話で結構面倒くさいので、適宜メモをとりながら読んだ(それでも読み終えると忘れてしまっている)。
続きを読む

読了:「自転車泥棒」「同志少女よ敵を撃て」「龍膽寺雄 焼夷弾を浴びたシャボテン」

台湾の人気作家による長編小説。「歩道橋の魔術師」がなかなか面白かったのでなんとなく手に取ってみたら、都会に生きる青年のノスタルジックなストーリーが、時間と空間が入り乱れる壮大な物語へと広がり、引きずり込まれるようにして読み終えた。ここのところ読んだ本のベストワン。
続きを読む

読了:「ディスコルシ」「それでも。マキァヴェッリ、パスカル」「香港映画100の情景」「創るということ」「私の生きた証はどこにあるのか」

それぞれの部分は面白いんだけど、全体の構成がわからないので、読んでいて辛かった。これは私の理解不足なのだろうか、それとも当時とは著述のありかたがちがうのだろうか。 続きを読む

読了:「ファシズムとロシア」「現代ロシアの軍事戦略」「見えない線を歩く」「エラスムス」「漂泊のアーレント 戦場のヨナス」

2018年に著者は防衛白書の編纂に関わっているという防衛庁職員の訪問を受ける。ちょうどロシア軍の大規模軍事演習が終わったところで、演習が北方領土で行われたことをどう評価するか著者が訊ねてみたところ、「北方領土では実施されていない」とロシア政府の公式見解の一点張りで、衛星画像を見せてもかたくなに認めない。当時は安倍政権とプーチン政権の蜜月期であった。へええ… 官僚の忖度ってそこまで根が深いものなのか…
続きを読む

読了:「ヨーロッパ史入門」「古代中国の24時間」「経済社会の学び方」「一杯のおいしい紅茶」「荘園」

「日本の荘園の歴史、特に院政期以降の中世荘園(領域型荘園)の歴史は、小さな地域の自治権を最大に、国家や地方政府の役割を最小にした場合、なにが起きるかという400年にわたる社会事件といえるかもしれない」とのこと。へえー。
続きを読む

読了:「海が走るエンドロール」「分光器」「マロニエ王国の七人の騎士」「ふしぎの国のバード」「世田谷イチ古い洋館の家主になる」

読んだ本の記録はもう少しこまめにつけないと…と思っているうちに3月も後半となってしまった。年明け以降に読んだ本、まずはコミックスから。

2018年刊だが、なぜか読みそびれて積んであった。面白いマンガなのだろうけれども、筋がよくわからなくなってしまった…
続きを読む

読了:津田ほか(2006) 高速のトンネルのランプはいつ切れるか(ワイブルハザードモデルのベイズ推定)

津田尚胤, 貝戸清之, 山本浩司, 小林潔司 (2006) ワイブル劣化ハザードモデルのベイズ推計法. 土木学会論文集F, 62(3), 473-491.
 土木施設の劣化を統計的に予測するためにハザードモデルをベイズ推定します、という話。ひょんな事情がありまして、昼飯のお茶漬けを啜りながら目を通した。えーっと、筆頭著者の方の修士論文とかかしらん?
続きを読む

読了:Ng, Wang, Dai (2021) 係数が時変しまくるMMM by Uber

Ng, E., Wang, Z., Dai, A. (2021) Bayesian Time Varying Coefficient Model with Applications to Marketing Mix Modeling. arXiv:2106.03322v3.
 ずいぶん前に目を通してメモをとった奴。整理の都合上載せておく。
 著者らはUberの人。たぶんadKDD2021での発表だと思う。
続きを読む

読了:Debeer & Stroble (2020) Rのpartyパッケージでランダムフォレストの条件付きパーミュテーション重要性を求めていた諸君、悪いね、悪いね、ワリーネ・ディートリッヒ

Debeer, D., Stroble, C. (2020) Conditional permulation importance revisited. BMC Bioinformatics, 21:307.

 仕事の都合で読んだ。ランダム・フォレストにおいて変数重要性を評価する手法のひとつに、「他の変数で条件づけたパーミュテーション重要性」というのがあるんだけど、その算出方法についての論文。
 Rにおける既存の実装についていくつか疑問点があったのでなんとなく目を通して見たら、なんと著者らはRパッケージpartyの中の人であり(途中で気が付いた)、しかも、途中でなんだかとんでもないことを言い出した… 続きを読む

読了:Gregorutti, Michel, Saint-Pierre (2015) 変数グループの重要性指標

Gregorutti, B., Michel, B., Saint-Pierre, P. (2015) Grouped variable importance with random forests and application to multiple functional data analysis. Computational Statistics & Data Analysis, 90, 15-35.
 仕事の都合で読んだ奴。ランダムフォレストとかで、個々の変数についてのpermutation重要性じゃなくて、分析者が定義したなにかしらの変数グループについてpermutation重要性を求めるという論文。
 第一著者は、おそらくこの論文の提案手法を実装したであろうRパッケージRFgrooveを公開しているが、開発したきりメンテしておらず、CRANからは最近削除されている模様。
 28頁あるけど本文は19頁だ、なんとかなるさ!と思って読み始めたけど…
続きを読む

読了:「ヘルドッグス 地獄の犬たち」「パワー・アントワネット」

記録するのを忘れていた本。

ふだんは全く読まないライト・ノベルなんだけど、アイデアが馬鹿馬鹿しくて良いなあと思って手に取った。マリー・アントワネットがなぜか筋肉モリモリの武術の達人で、ギロチンでは首を切れなくて… という話。マリーがポーズをとるとボディ・ビルディングの大会同様、侍女たちが「ナイスバルク!」「肩にちっちゃい鉄馬車乗せてんのかい!」などと声を掛けるのだそうである。
続きを読む

読了:「羊の頭」「深い疵」「夜の爪痕」「マイ・シスター、シリアルキラー 」「見えない都市」「わかって頂けますかねえ」「20世紀ジョージア短篇集」

2021年8月以降に読んだフィクション。最近自分に甘くなり、海外ミステリをなしくずしに解禁してしまっている。

えーと、ドイツのミステリ小説「ヴァルナー警部&クロイトナー巡査」シリーズの2冊目。いまいち憎めないクロイトナーという粗暴な巡査が狂言回しになるやつね。
続きを読む

読了:「ブータンの瘋狂聖 ドュクパ・クンレー伝」「最澄と徳一 仏教史上最大の対決」「受難物語の起源」「キリスト教の幼年期」「ブッダのことば」「仏弟子の告白」「道元禅」

ここんところ一番の面白本。平安時代の初期、唐から天台宗を持ち帰った最澄と、それより早く日本に入ってきた法相宗の僧・徳一が、何年にも渡って論難を交わしたのだそうだ。双方は因明と呼ばれる一種の論理学に依拠していた。ところがこの論理学の体系というのが、私などからみると大変エキゾチックで途方に暮れるもので… しかも、当時の学僧が論争するということはそれ自体が破戒につながり地獄に落ちかねない行為だったとのこと。へえええ。
続きを読む

読了:「都鄙大乱」「新・日本の階級社会」「ドイツ・ナショナリズム」「アケメネス朝ペルシア」「墜落」「ネイビー・シールズ」

2021年8月以降に読んだ本、ノンフィクション部門、その5。

米海軍大将の自伝。たまには全く価値観の異なる人の本を読もう、と思って読んでみたところ、ほんとに価値観が違ってた…
続きを読む

読了:「政治的思考」「インドネシア」「東南アジア史10講」「ヒトラー」「権力は腐敗する」

2021年8月以降に読んだ本、ノンフィクション部門、その4。

すごく面白かった本(読んだときにメモしておけばよかった…)。
 著者曰く、代表制はなぜ必要か。規模が大きいから直接民主政治が機能しないから? だったら小さな町村では議会の代わりに町村総会を置けばいいのに、そうしていないではないか。専門性のためか? 多元的な価値の間で調整を図る営みを専門性に還元できるだろうか。「なぜ代表が選ばれるべきなのか[…] 私はそれを代表というものの、いわば演劇的なはたらきに求めたいと思います」「代表とは、俳優として政治劇を行うことで、民意の形成を助ける存在ではないかと思うのです」
続きを読む