読了:Chaudhuri & Holbrook (2001) ブランドへの信頼とポジティブ感情がロイヤルティを経由してシェアや価格に効く

Chaudhuri, A., Holbrook, M.B. (2001) The Chain of Effects from Brand Trust and Brand Affect to Brand Performance: The Role of Brand Loyalty. Journal of Marketing, 65(2), 81-93.

 仕事の都合で読んだ。
 トップジャーナルの論文だしさ、なんらか仕事の足しになるかなあと思ったんだけどさ…

 いわく。
 ブランド・ロイヤルティは支払意思額を高めシェアも高める。ロイヤルティはおそらく信頼とポジティブ感情によって決まる。ロイヤルティが経営的にいかに大事かという研究は多いが、ロイヤルティといえばその行動的側面が強調され、態度的諸要素は無視されがちである[そ、そうかなあ。この論文の当時はそうだったのでしょうか]。
 本研究は信頼、情動、ロイヤルティ、市場パフォーマンスの関係について、ブランドを分析単位にして検討する。

1. モデル
1.1 背景
 ロイヤルティとは[…中略]。行動的側面と態度的側面があるといわれている。
 以下ではブランド感情を、平均的顧客がそのブランドを使用するときにポジティブな感情を引き起こすポテンシャルと定義する。またブランド信頼を、平均的顧客が、そのブランドが言明している機能をそのブランドが果たす力を持っているということに依存しようとする意向と定義する。
 ブランド感情は自発的・即時的・非熟慮的で、ブランド信頼は熟慮的である。

 というわけで、次のモデルを想定する。[パス図が描いてある。4層の逐次パスモデルである。

  1. 製品レベルの制御変数。第2層に刺さるパスを持つ。
  2. ブランド信頼とブランド感情。相関があり、第3層の2変数にパスを刺す。
  3. 購買ロイヤルティと態度ロイヤルティ。相関があり、購買ロイヤルティがシェアに、態度ロイヤルティが相対価格にパスを刺す。さらに外生変数としてブランドレベル制御変数があり、第4層の2変数にパスを刺す。
  4. シェアと相対価格。相関あり。

製品レベル制御変数というのは製品カテゴリの快楽的価値と効用的価値だそうだ。なんかごちゃごちゃ正当化してあるけどメモ省略。あとで説明されるが、これをいれるのは、第3層の購買ロイヤルティ・態度ロイヤルティの項目にブランドの快楽的価値・効用的価値を測ってそうなやつがあるから。つまり、モデル推定時には製品レベル制御変数から第3層へのパスも刺すつもりでいるはずだが、この図には描いてない。実際に刺したら有意じゃなかったからかなあ? 仮説提示時に結果を先取りするのよくないよ]

1.2 仮説
[例によって、各仮説に数パラグラフづつ正当化がついている。SEMやりました研究の伝統芸をみているようだ…。メモは省略]

  • H1. ブランド信頼は購買ロイヤルティと態度ロイヤルティの両方に正の関連を持つ
  • H2. ブランド感情は購買ロイヤルティと態度ロイヤルティの両方に正の関連を持つ
  • H3. 購買ロイヤルティが増大するにつれて市場シェアは増大する。
  • H4. 態度ロイヤルティが増大するにつれて相対価格は増大する。

1.3 統制変数
 ノイズを減らすべく、先行研究を参考に制御変数をいれました。

  • ブランドレベル変数。ブランドの差別性(シェアと関連すると思われる)とShare of voice (広告費。シェアや相対価格に関係すると思われる)。[いやいやいや! ブランド広告費は外生変数じゃなくて、昨年までの市場シェアのアウトカムじゃないの?! ちょっとちょっと、これを統制するのまずくないっすか?]
  • 製品レベル変数。カテゴリ特性としてutilitarianな価値とhedonicな価値に注目する。

2. 方法
2.1 分析単位
 消費者ではなくブランドを単位とする。

2.2 変数
 以下の3フェイズを通じて得た。

 フェイズ1, カテゴリ特性。
 146の消費財カテゴリを選んだ。対象者はカテゴリあたり30人(計4380人)とし、うち使用者を本調査対象者とした。調査は購買・消費場面でやった。たとえばヘアトニックならヘアサロンで調査、ポテトチップなら食料品店で調査。調査員は学生49人、ひとり3カテゴリを担当。消費者に声をかけて自記式質問紙を渡した[す、すげえ… 学生に店頭に行って90人キャッチしてこいと命じたということね。正気か]
 本分析に使う項目は、カテゴリのhedonic value (“I love this product”, “I feel good when I use this product”の2項目)とutilitarian value (“I rely on this product”, “This product is a necessity for me”の2項目)、いずれも7件法。
 分析時には個票は使わず、カテゴリごとの平均得点を使う。[潔い… というか潔すぎて引いちゃう…]

 フェイズ2. ブランドパフォーマンス。
 146カテゴリから、使用率が高くてブランドセットを作りやすい50カテゴリを選んだ[いやいや、そこは最初に選んでおこうよ…]。
 この50カテゴリの372ブランドを選び、各ブランドのプロダクト・マネージャーに郵送調査した[えええええ!! まじで?!]
 項目は、ブランドの市場シェア、相対価格(=当該ブランドの小売価格/トップブランドの小売価格)、share of voice(年間広告費、カテゴリにおけるシェアとする)、ブランド差別化(マネージャーに直球で「おたくのブランドって差別性あります?」と訊く。2問, 5件法)。[こんな調査票を送りつけられたブラマネさんには同情しちゃうよね。よく答えてくれたと思うよ]
 160票回収した。回収率としては低くないし、督促電話もかけたし、いろいろ頑張ったんだけど、分析カテゴリ・ブランドは42カテゴリに絞らざるを得ない。なお、無回答はぱっとしないブランドのマネージャーが多いというようなバイアスは見当たりません。

 フェイズ3, 信頼・感情・ロイヤルティ。 
 大学のマーケット・リサーチ上級コースの50人が調査員となる。それぞれ1カテゴリ・3ブランドを担当。各ブランドについて、ブランド使用者30票を得た。結局、49カテゴリ、149ブランドについてのデータを使う。
 実査はほぼモール・インターセプト。ただしカテゴリによっては店舗でキャッチしたのもある。
 項目は以下。いずれも5件法。合計得点を使う。

  • 信頼: “I trust this brand”, “I rely on this brand”, “This is an honest brand”, “This brand is safe”.
  • 感情: “I feel good when I use this brand”, “This brand makes me happy”, “This brand gives me pleasure”.
  • 購買ロイヤルティ: “I will buy this brand the next time I by (カテゴリ名)”, “I intend to keep purchasing this brand”. [結局、意向ベースなのか。だから論文のイントロでは「行動的ロイヤルティ」っていってるのに途中から「購買ロイヤルティ」っていっているんだな。泣かせる]
  • 態度ロイヤルティ: “I am committed to this brand”, “I would be willing to pay a higher price for the brand over other brands”.

 [弁別的妥当性がありますという分析。メモ省略]

 というわけで、最終的には、41カテゴリ、カテゴリあたり1~3ブランド, 計107ブランドについて分析します。

3. 結果
 LISRELでパス解析やりました。[どの構成概念も多重指標なのに、SEMじゃなくて、合計得点のブランドレベル平均を使ってパス解析するのである。分析単位がブランドだからしょうがないんだろうし、脚注にはあえてこうしているんです、これでいいんですと書いてあるが、しかし萎えるな…]
 適合度はこれこれ。有意なパスはこれこれ。4つの仮説はすべて支持されました。

 [中略。あっれー、せっかくutilitalian/hedonic valueを投入したのに、購買ロイヤルティ/態度ロイヤルティへのパスの係数が出てこないけど? なんのために入れたの? 見落としたのだろうか]

 utilitarianカテゴリとhedonicカテゴリでわけて推定してみたら、後者では信頼→購買ロイヤルティ、信頼→態度ロイヤルティ、購買ロイヤルティ→シェアのパスが有意にならなかった。でも符号はポジティブだし、きっともっと大きな標本サイズなら優位になるでしょう。[おいおい]

4. 考察
4.1 実証的知見
 [パス]

4.2 実務的含意
 この研究で使った構成概念(信頼、感情、購買ロイヤルティ、態度ロイヤルティ)をブランド評価につかうのはいかがでしょうか。
 [とかなんとかいろいろ書いてあった。パス]

4.3 限界と今後の課題
 他のカテゴリ・ブランドでの再現性。製品関与などの個人特性。ロイヤルティとマーケティング変数の関係。
 測定指標をもっと追加すること。
 分析単位を人にすること(非逐次モデルになるかも)。
 ロイヤルティとパフォーマンスの説明変数を追加すること。
 云々。

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 わたしゃただのど素人なので身の程をわきまえず申し上げますが、読んでて超つまらん論文であった。
 要するに、「まあそりゃそうだろうな」というパス図を描いて、パスを仮説として列挙して、横断調査を一発やってあてはめて、このパスは有意でしたがこのパスはそうでもなかったです、云々、という研究である。実際やろうとすると大変だということはわかるし、あいまいな言明を実証研究のレベルに落とし込んだという点に価値があるというのもわかるんだけどさ。トキメキがないよね。こんまりだったら「感謝して捨てましょう」っていうよね。まあ俺みたいなのにどういわれても何の意味もないだろうけどさ。

 メインの仮説に関していうと、要するに、ブランドへの信頼、ブランドへのポジティブ感情、購買ロイヤルティ(実質的には継続購入意向), 態度的ロイヤルティの4変数について、すべての2変数間のパスが有意になりました、という結果である。うん、そうね、全部似たような項目だからね。正直、この結果にどういう理論的貢献があるのかよくわからない。

 テクニカルな話でいうと、制御変数のいれかたに全然納得できない。アウトカムがブランドシェアである横断モデルに、ブランドの広告費を外生変数としていれるのは超おかしいだろう。著者らが偉い研究者であるのはわかるが、査読者さん!黙ってないでなんかいってくださいよ!
 カテゴリ特性を外生変数としていれた動機はわかるが、結局(本来の外生変数である)ブランド信頼とブランド感情への係数しか提示されていないので、入れた意味があったのかどうか、よくわからなかった。むしろ、「hedonicカテゴリだけで推定したら仮説の一部が支持されなかった」という知見のほうに意味があるんじゃなかろうか。(ブランド信頼・ブランド感情)→(行動的ロイヤルティ・態度的ロイヤルティ)→(市場パフォーマンス)という構造にカテゴリ間の異質性があり、それがカテゴリのutilitarian/hedonic価値で説明できる、というモデルのほうがずっとしっくりくるし、実務的な示唆も大きいと思う。それをさあ、「サンプルサイズが小さいせいでしょう」で済ませちゃうのってさあ… どうなのよ、それ…

 いっぽう、この論文のすごいところは、なんといってもデータ収集ですね。フェイズ1の鬼のようなブラック実査をみよ、フェイズ2のわがまま放題ぶりをみよ。学生も会社員も暇じゃないだろうにね、と嫌味のひとつもいいたくなるけれど、20年以上前の研究に向かって、なにをいってもはじまらない。