読了: Rogelberg, et al.(2001) アンケート調査そのものに対する人々の態度を調べる尺度を作ったよ、使ってね

Rogelberg, S. G., Fisher, G. G., Maynard, D. C., Hakel, M. D., & Horvath, M. (2001). Attitudes toward Surveys: Development of a Measure and Its Relationship to Respondent Behavior. Organizational Research Methods, 4(1), 3-25.

ちょっと関心があってめくってみた論文。調査に対する一般的な態度を測る尺度を作ったよという話である。

(イントロダクション)

 調査に対する態度の研究はSjoberg(1955 POQ)にさかのぼる。その後の研究として…

  • 調査参加依頼をたくさん受け取ると調査への態度がネガティブになる(Goyder, 1986 POQ)
  • 調査への態度と調査回答時の発話プロトコルとは無関係(Helgeson & Ursic, 1994 Psych.&Mktg.)
  • 態度がネガティブだと回答率が低くなる(Baruch, 1999 HumanRel.)

なぜ調査への態度の研究が必要か
 Tourangeau先生(1987 Chap.)いわく、調査項目への回答の認知過程には、解釈、検索、処理、報告の4段階があるよね、と。Krosnick先生(1991 App.Cog.Psy.)いわく、回答の品質はこの4段階における心的努力で決まるよね、努力は課題特性と個人特性の関数だよね、個人特性とはたとえば能力とかパーソナリティとかだよね、と。
 偉大なる諸先生方には悪いけど[←こんなことは書いてないです]、他の個人特性もあるのではないでしょうか。そう、調査に対する態度です。Fishbein-Ajzenをごらんなさい。態度と行動の間には関係があるですよ。Rogelberg et al.(2000 J.App.Psy.)をごらんなさい。調査参加モチベーションを決める変数のひとつが調査への態度ですよ。
 それに、調査方法に対する態度が回答の仕方を変えることも指摘されている[…]。さらに、組織研究における最近の調査回答率低下は調査研究の価値に対する人々の態度がネガティブになっているからじゃないかという指摘もある。
 調査回答の品質を高めるためにはなにを変えればいいと思います? 説得研究や精緻化見込みモデルや社会的判断理論をごらんなさい。態度ってのはほんとに変わりやすいものなのですよ。ってことは、調査への態度は大事でしょ。
 付け加えると、調査への態度を評価することは倫理的にみても必要です。我々調査ばっかりやってんだから。人々の態度を改善するのは社会的責任ってもんでしょう。
 [面白くて細かくメモしてしまった。もっと大きなストーリーもあるんじゃないかなあ? 社会調査が社会的意思決定に反映されている以上、社会調査への信頼の低下は社会的決定のlegitimacyを掘り崩すことになるよね、的な]

 本研究の仮説は以下の通り: 調査への態度は回答行動と正の関係を持つ。
 理由: (1)調査への態度がポジティブだと回答の心的努力の水準が高いから。(2)また、調査完了意図も高いから。(3)認知的一貫性理論によれば、行動と信念は一貫しているはずだから。

調査への態度の概念化と測定
 調査への態度を、調査一般に対して人が持っている感覚がポジティブないしネガティブである程度、と定義する。
 3人の専門家[←誰よ]に項目をつくらせ、先行研究とあわせて50項目を得た。で、各専門家が類似性に基づき50項目をQソート法で並び替え、2次元(調査の楽しさ、調査の価値)を得た。他の専門家にも手伝ってもらって、各次元につき5項目を選んだ。
 パイロットスタディをやって、CFAとかやって[めんどくさいので中略]、最終的に6項目とした。
 [面白いので項目をメモしておく。1-3が楽しさ、4-6が価値。

  1. I do not like filling out surveys
  2. Surveys are fun to fill out
  3. I enjoy filling out surveys
  4. A lot can be learned from information gathered from surveys
  5. Nothing good comes from completing a survey
  6. Surveys are useful ways to gather information

ははは。これ、web調査に突っ込んだら実査会社さんに嫌がられそうだな… 5番とか特に]

標本1. 内部顧客
 ある大きな金融機関の、情報サービスの内部顧客の満足度調査(郵送)にこの尺度を入れた。60票。
 [めんどくさいので結果の要約までスキップ]
 調査の価値は項目回答率と関係していた。調査の楽しさは項目回答率と、返送までの日数と関係していた(調査が楽しい人のほうが返送が早い)。

標本2. 学生
[めんどくさいのでまるごとスキップするけど、社会的望ましさバイアスの尺度(PaulhusのBIDR)との関係をみているようだ。ちゃんと読んでないからわからんが、調査に対する態度とは関係なかったみたい]

一般的考察
 調査の楽しさはほぼすべての回答行動と関連し、調査の価値は項目反応率と指示の順守に関連していた。
 回答者の行動は、調査参加者の行動は調査参加行動(返送とか)と質/量行動(各項目への反応とか)に分けられるだろう。調査の楽しさは両方と、調査の価値は後者と関連している模様。
 なぜ調査の価値は参加行動と関連しないのか。調査の価値というのは定義上、個人が調査に参加したいかどうかとは無関係だからだろう。[とかなんとか、そういう考察がつらつらと書いてある]
 この研究の効果量は…[パス]

 本研究の含意。
 調査に対する態度がネガティブな参加者がいると変数間関係の過小評価とかにつながるだろう。調査に対する態度を分析時の共変量とするとよかろう。
 尺度開発のときには、調査に対する態度とあんまし関係しない項目を選ぶのがよかろう。
 調査に対する態度を改善するためには以下が大事であろう。あんまし調査参加依頼しないこと。参加者にはちゃんとフィードバックすること。良い調査票をつくること。[… ざっくりしたアドバイスをありがとう…]

 今度の課題:

  • 調査に対する一般的な態度より、個別的な調査についての態度を調べたほうが予測力は上がるかも。
  • 調査への態度を調査で測っている。別の方法を考えるのも大事だ。
  • 個人レベルの再検査信頼性とか、その後の調査参加を測るとか。
  • 調査への態度の規定因を探す。

結論
[略]
————
 ふうん。へー。という感じでした。

 ちょっとメモしておくと、回答努力の研究の例として Krosnick(1991), Podsakoff & Organ (1986, J.Mgmt)、回答率の研究の例として、Armstrong & Lusk (1987 POQ), Fox, Crask, & Kim(1998 POQ), Heberlein & Baumgartner (1978 Am.Soc.Rev.), Yammarino, Skinner, & Childers (1991 POQ), Yu & Cooper (1983 JMR) が挙げられていた。こういう古典的なテーマについては、やはりPOQをチェックするのがよさそうだ。

 これは感想に過ぎないが、調査回答の「品質」がアウトカム、その要因のひとつが調査への態度、という風に平気でいえちゃうところが、いかにも組織心理の研究者だなあ… と思った。これは良し悪しの問題ではなくて、調査というものを導管メタファの中で捉えているというか、非介入的な測定として捉えているということだと思う。そういう捉え方が自然であるような文脈があるということはすごくよくわかる。
 いっぽう、調査を調査主体と調査参加者の間の相互作用の形式として捉えるならば、問題設定そのものが変わってくるだろうな、と思う。調査参加者の調査に対する態度も内生変数のひとつであるような相互作用のシステムを、どのように設計できるか、という風に。私たちが対人的コミュニケーションの場のありかたについて考えるときと同じようなやりかたで、調査についても考えることになるだろう。