読了: 後藤(2020) セルフコントロールが得意であるとはどういうことか

後藤崇志 (2020) 「セルフコントロールが得意」とはどういうことなのか: 「葛藤解決が得意」と「目標達成が得意」に分けた概念整理. 心理学評論、63(2), 129-144.

都合によりざっとめくった論文。

いくつかメモ:

  • self-regulation(自己制御)とself-controlのちがい。Hofmann, Schmeichel, & Baddeley (2012 Trends in CogSci)は、前者が後者を包括すると整理しているのだそうな。前者は現実+参照情報と出力のフィードバックループ。いっぽう後者は、複数の動機づけ間の葛藤を解消するプロセスで、自動的行動を意志が乗り越えるプロセス、というニュアンスがある。
  • Berkman et al.(2017 CurrentDirections in Psych.Sci.) “Self-control as value-based choice” という論文があるそうな。いろんな情報をすべて選択肢の価値としてコーディングするようなモデルらしい。へー、面白そう。この考え方だと、ふつうは実行機能の個人差といわれているものも価値算出メカニズムの個人差ということになるのかなあ?
  • 著者曰く、セルフコントロールの(短期的な)成否には、目標を保持し達成行動の遂行からブレさせない認知制御の側面と、目標達成につながる行動に重きを置かせる価値表象の側面がある由。なるほど。
  • 認知制御のほうの話。自我枯渇と言えば制御資源モデルだろうと思ってたんだけど、Inzlicht & Schmeichel(2012 Pers.Psych.Sci.)による自我枯渇のプロセスモデルというのがあって、そっちのほうがself licensingをうまく説明できるのだそうな。どうちがうのかよくわかんなかったけど、読みかけのde Witt Huberts et al.(2012)に書いてあるかも。
  • 個人特性としてのセルフコントロールの得意さについては尺度もあるんだけど、認知制御と価値表象の個人差との関連ははっきりしていない。長期的なセルフコントロールはそれ以外の心理機能(価値表象の更新)と関連しているのだろう、とのことで、論文の後半はそのレビューであった。