舟津昌平 (2019) 制度ロジック多元性下における組織のイノベーションマネジメント ―文献調査に基づく理論研究―. 赤門マネジメント・レビュー, 18(4).
ときどき学会の大会とかに行って研究者の先生方の話をフガフガと拝聴していたりするんだけど、最近「制度ロジック」という言葉を何度か耳にしたことがあって(たしか消費者行動研究コンファレンスだ)、なんとなーくめくってみた論文。あんまし真剣に読んでないので、失礼な話ではあるのだが、読んだのは何でも記録しておこうという主旨です… すいません…
いま調べたら、著者の先生は東大の講師になっておられる模様。
いわく、制度ロジックinstitutional logicというのはFriedland & Alford (1991)が提唱した概念。かの佐藤郁也先生は「制度固有のロジック」と訳している由。
えーと、組織論では組織が組織外部からやってくる「制度」(法制度みたいな明示的なものから文化のように暗黙的なものまで)の影響を受けて合理性・正統性を希求するという考え方があり、これを新制度派組織理論という。でも、制度は同型化の圧力を持ちますよね? つまり、組織は正統性を獲得するために、ときに非合理であってもなお他の組織と同型化しますよね[うわあ… 組織論の先生が言いそうなことだ…]。でもいろんな組織はかならずしも同型化しないじゃないですか? という問いがある。ひとつの答え方は「個々の組織からみた制度的環境が違うから」。この制度的環境の多元性を表現するための概念が制度ロジックである。
提唱者らいわく、マクロレベルが制度、メゾレベルが組織、ミクロレベルが個人。で、制度は有限個に分類できる(制度セクター)。たとえば、市場、企業、専門家、国家、家族血族、宗教、という風に。組織は制度ロジックに影響されるけど、影響元の制度ロジックは複数だったりする(制度ロジック多元性)。組織や個人には主体性があって、その実践が制度の多元性と相互作用したりするわけ。
文献レビュー。28本集めた。制度ロジック多元性そのものに注目している研究は19本。主に社会的企業を題材とし、社会性のロジックと事業ロジックの相克?を問題にしている由。しかし、組織行動をアドホックに説明するために制度ロジック概念が用いられていて、制度セクターとの関係がはっきりしていないことが多いのだそうだ。これが制度ロジックがバズワード化していると評される理由のひとつであるとのこと。へー。
後半はイノベーションマネジメントとの関係について。すいません、残念ながら知識不足でよく理解できず、あきらめました。
えーと、制度論的なイノベーションマネジメント研究としてイノベーション正当化論っていうのがあるけど(あ、「イノベーションの理由」って本で読んだぞ)、そこでの知見は、「イノベーションマネジメントにおいては、ドミナントでないマイナーな制度ロジックに基づいて正当化が行われると同時に、事業ロジックというドミナントな制度ロジックは維持されなければならない」という風に読み替えられるのだそうだ。とかなんとかそういう話であった。