読了: Turner (2017) ユーザ経験としての時間つぶし

Turner, P. (2017) Killing Time with Technology. “A Psychology of User Experience“, Chapter 6. Springer

仕事の関連で、これって消費者が時間つぶしのために消費しているものですよね… という事柄があったのだけれど、不意に「いやまて、そもそも時間つぶしとはなんなのか」という哲学的な疑問にとらわれた。なにか役に立ちそうなものを探して読んでみた次第。

1. 経験のもうひとつの扱い方
 チクセントミハイは最適経験ないしフローという概念を提出し、その例としてゲームのプレイヤーとか手術している医者とかを挙げた。また内的モチベーションを記述するために自己目的的autotelicという用語を用いた。
 フローとはその瞬間にしていることに対する強い集中として経験される。フローはほぼどんな活動においても生じる。Donner & Csikszentmihalyi(1992)の報告によれば、従業員が仕事の44%でフロー、20%で退屈、36%で不安を経験している。
 フローに達するための条件は3つある。(1)目標の集合が明確な活動に関与し、明確で即時的jなフィードバックを伴う進展があること。(2)スキルと挑戦のバランスが良いこと。(3)課題を完了させるための自分の能力に確信があること。
 フローは人と文脈の相互作用に基づく。フローは熟達から派生するポジティブなUXである。しかしUXについての主流的思考はフローを統合していない。

2. 経験の2つのモード
 UXに話を戻すと、関与involvement、情緒、美学というトリオはみな広義の認知的能力だ(広義だというのは身体化の重要性や外部世界の役割を踏まえているということ)。3つとも脳と生態と環境の相互作用の結果である。というわけでUXとは認知的なものである。
 認知とはモーダルなものだ。カーネマンのいうシステム1と2をみよ。UXは両方のシステムに依存している。

3. 経験の第三の形式: 時間つぶし
 人は夢想したりぼんやりしたりするものである。デジタル機器はそうしたぼんやりすることを媒介する。
 脳科学ではデフォルト・ネットワークという、脳内で高い相関があるネットワークが特定されていて、ぼんやりしているときに活性化する。それは内部指向的な認知の源だといわれている。それは日常の計画や思考とか、他者の関係性とかにおいて役割を果たしており、たぶん創造性においても役割を果たしている。
 [Binkyというスマホアプリの話。メモ省略。検索してみたところ、2017年ごろに話題となった「他人のいないSNS」だそうな]

4. UXの3次元
 我々はデジタル機器とinteractしているというよりinvolveしているといったほうがよい。もっともハイデガーいわく… [ハンマーがどうたらこうたら。めんどくせえのでメモ省略] たとえば私が今この本を書いているといえるのは私が自分を書き手として理解しており自分が書き手であるために書くという行為に携わっているときそのときに限る。[ああああああ、めんどくせえ! 気軽にハイデガーとか引用する奴らから罰金を取りたい]
 我々のUXについての説明の第二の構成要素は情緒だ。[…]
 三番目は美学だ。[…]

 本書のまとめとして… […] シェリー・タークルいわく、人は人間との会話における複雑さと混乱と思われるものから逃げるためにデジタルライフを送る。しかし会話から逃げるわけではない。云々。
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 この章って、時間つぶしについての心理学的概説ではなくて、要はUXの心理学についての単著の最終章で、それまでの章の総括にあたる内容のようだ。この章だけ読んでもしょうがないみたい。なあんだ。
 調べてみると、この本は2024年に第2版が出ているから、まあそこそこ評判のよい本だったのであろう。知らんけど。