Yoshida, H., Tsukatsune, K., Niida, S. (2020) Analysis of mental model of users with network mulfunction. Human Interface and the Management of Information. Designing Information (HCII 2020).
仕事の都合で読んだやつ。
個別のデバイスについてのユーザのメンタルモデルを調べる研究はたくさんあると思うけれど、インターネットのような大きなシステムについてのメンタルモデルを調べたのはないかなあと思い、たまたま見つけて目を通した。情報コミュニケーション技術(ICT)の動作不全に対するユーザのメンタルモデルを調べますという話。KDDI研究所の方々による発表らしい。
次のモデルを考える。(1)入力。ICTリテラシーとか個人属性とか。(2)認知的理解。メンタルモデルと、ネットワークの機能不全に対する原因帰属が相互作用する。(3)出力。行動と満足。
この論文では、(1)→(2)のパス、(2)における相互作用、(2)→(3)のパスを調べます。ただし、(1)→原因帰属→満足のパスは調べない。そっちにはもう研究してまして… [略]
関連研究として… [略。端末操作のメンタルモデル研究はあるけどICTのメンタルモデル研究はないんだそうな]
というわけでweb調査やりました。772人。設問は
- 個人属性、ICT使用の容易性。
- PC, 携帯の使用実態。これはMCAをやって対象者のリテラシーレベルのスコアを出した由。
- webでリンクをクリックしたときの待ち時間の主観評価。ボタンを押させて、2秒から20秒後に次の画面を出し、待ち時間への満足度を訊く。[あれ? 各対象者に全水準やらせたってことかな?]
- メンタルモデルを調べる。48個のアイコンを与え、ターゲットのページが表示される場合と表示されない場合についてどんなコネクションがあるのか線を引かせる。[よくわからんけど、たとえば回答者が、あるページの情報はサーバ→ルータ→ネット→ルータ→PC→ディスプレイという順に伝わり、ページが出てこないときは先方のサーバが悪いと思っているとしたら、表示される場合はサーバ→ルータ→ネット→ルータ→PC→ディスプレイという線を引き、表示されない場合は最初の線を消すということ? アイコンの例のなかには電車とかバスとかばねとかハサミとかもあるんだけど、いったい何に使うのかしらん?] 回答はあとでクラスタ分析した。[結局、どのアイコンを使ったかだけに注目したようだ]
- つながらなかった過去経験とそのときの対処。
- つながらなかったときの原因帰属。これはあとで潜在プロファイル分析をやった。
結果。メンタルモデルは、ウイルス・ハッカー, プロバイダ・インターネット, 複数要素の混合、電波/電波塔という4群に分かれた。ICTリテラシーと主観的容易性は複数要素混合群で高かった。対処行動も違ってた。待ち時間満足度は変わんなかった。原因帰属も変わんなかった。[すいません、ちゃんと読んでないけど、ざっくりそんな感じだと思う]
限界: 2009年の調査なのでいまはちがうかも。メンタルモデルの類型化の方法はほかにあるかも。
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勉強になりましたけど…
システムについての人々の抽象的理解って、登場する要素が同じでも捉え方が異なっていたり(たとえば「パケ詰まり」という言葉の裏には情報の小さな小包が流れる筒のようなイメージがあるわけですよね)、同一の個人の中でも必ずしも整合していなくて状況的手がかりに応じて切り替えられていたりするんじゃないかと思うわけです。そういうのをうまく調べる方法はないものだろうか。ひょっとすると、情報通信じゃなくて全然別の領域を調べたほうがいいのかもしれない。物価についての素朴理論とか。