2020年、現実逃避の一環としてamazonプライムビデオで配信されている中国語映画のリストを作成し、いまでも折をみてはちくちくと更新している。収録作品数は1500本を超え、記事の分量が多すぎて、更新時にエラーが頻発する。
いくつかの作品についてはコメントをつけているのだが、そのコメントのなかでももっとも長大なものは、amazonプライムビデオ上にかつて存在した”Go Fight”なる作品についての謎解きである。少しでも記事の分量を減らすため、このコメントだけは別記事として切り出しておこうと思う。
つくづく、読んでも仕方がない内容です。なにしろ、この作品の配信はとっくに停止されており、作品ページへのURLも無効となっているのである。
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[配信停止] Go Fight (2004? タイ?)
- [2025/02/08追記] 2022年3月に発見した当初から素性が全くわからず、困惑していた映画である。あれこれ探したすえ、以下の推測に到達した。長くなりますよ。
- 以下では簡略のため、[1]題名、[2]製作年, [3]パッケージ画像、[4]監督・出演者、[5]あらすじ、と略記する。
- amazon上では以下とされている。
- [1]”Go Fight”
- [2]製作年表記なし。
- [3]以前はパッケージ画像が表示されていたのだが、ムエタイ映画のように見えた。
- [4]監督Kevin Chu Yen Ping、出演Ray Loy, Lu Shau Fong, Vivian Hsu。
- [5]あらすじは以下のとおり。
Karn is a landowner in Bangkok who has a problem with some gangsters demanding his landord else they will kill him. His worker Torn brings a friend Niao to be a bodyguard. Niao is robbed at the bus station when he arrives and realizes out how tough Bangkok is. He finds being a bodyguard is harder than he thinks as a full scale battle begins with him as the leader of Karn’s men against the mob.
- まずは[4]監督・出演者から辿ろう。綴りはずれているが、おそらく、監督は朱延平Kevin Chu Yen-Ping, 出演は呂良偉Ray Lui Leung-Wai, 盧淑芳Lo Suk-Fong, 徐若瑄Vivian Hsuを指しているものと思われる。これを信じるならば本作は中国語映画である可能性が高い。そこでIMDb、HKMDBとも調べたが、この4人に共通する作品はただひとつ、次の作品である。
- [1]『ビビアン・スーの天使の戯れ』(Hunting List)(1994年台湾映画の項を参照)。
- [2]製作年は1994年。
- [5]あらすじは以下の通り。おいおい、全然ちがうぞ。バンコクもムエタイも出てきそうにない。
幼い頃から仲のよかったキット、クランプ、シウン3人は、揃って黒社会に身を置いていた。彼らの兄貴分・レイが引き起こした抗争の果て、殺人の罪を犯したキットは台湾へと逃れる。それから15年、久し振りに香港へと舞い戻ったキットは、ドラッグの取引で黒社会の大物となっていたクランプと、見違えるほどに美しく成長した彼の娘・シウホンに再会する。かつての仲間と闇の仕事を始めたクランプだったが…。
- こんどは[1]題名のみを手掛かりに探すと、IMDb上に次の作品がみつかる。
- [1]”Go Fight“(タイ, 2004)
- [2]製作年は2004年。
- [3]パッケージ画像はムエタイ映画のようにみえる。
- [4]監督はSokchi Ratcharda、出演はTer Chernyim, Sunsanee Maneengarm, Samart Payukaroon。
- [5]あらすじは以下のとおり。うーん、全然ちがうなあ…
When crimes are increased in the area of navy’s authority, a particular navy team is set up to capture a big mafia. Before the mission can be done, they get into a boat going to the training place to fit a wise plan, but end up disguised as ladies just to be allowed to get inside the mafia’s party and attack!
- 引き続き[1]題名を手掛かりに探したところ、タイの映画製作・配給会社Right Beyond社のページで次の作品を発見した。
- [1]”Go Fight“
- [2]製作年は不明。
- [3]パッケージ画像はムエタイ映画のようにみえる。
- [4]出演はSamart Paukarun, Sunsanee Maneengam。おおお、IMDbの”Go Fight”と重なるぞ!
- [5]あらすじは以下。amazon上でのあらすじに近い(TornとNiaoとボスのKarnがいるという点が)。
Torn, Niao and Lor are close friend. Actually, they want to work at Bangkok. Unfortunately, they were robbed and faced many problems all the time of their journey. Torn decided to separate and relied on himself. However, he met hazardously the thieves. Because of anger, he killed them and all troublemakers by his left punch. He met his friends again by the destiny. He willed to help Karn, his boss, who gives him a new life. This is a test of loyalty and a fight of men’s dignity.
- ところで、amazon上では提供元としてWu Tang Collectionと表示されている。アクション映画に特化したUSのVODサービスである。しかし、Wu Tang Collectionのサイトを調べてみたのだが、提供作品リストのなかに”Go Fight”なる作品は見当たらない。あれれ?
- こうなったら実際のフィルムを観たほうが早い。本作はamazon.comにも同一のエントリがあるので、USのVPNを経由してアクセスすればレンタルできるのではないか。と思ったのだが、USでも配信停止となっていた。
- IMDbとRight Beyond社が出演者として挙げているSamart Paukarunはタイの著名な元ムエタイ選手・ボクサーであることに気づき、その線で検索して、ついに!強力な手がかりを得た。youtubeで”Go Fight”なるムエタイ・コメディ映画の全編が公開されているではないか。
- [1]”Go Fight”
- [2]製作年は不明。
- [4]監督はわからないが、Samart Paukarunが出演しているようだ。
- [5]タイ語のあらすじを機械翻訳するとRight Beyond社=amazonのものに一致する。なお、あきらかにタイ語の映画であり、全編観たわけではないが、呂良偉や徐若瑄は出てきそうにないし、古いフッテージを再利用しているようにもみえない。
- 整理しよう。以下の情報があるわけだ。
- (A) amazonで配信されていた謎の作品。[1]”Go Fight”, [2]製作年不明, [3]おそらくムエタイ映画、[4]おそらく朱延平たち、[5]バンコクの青年たちとそのボスの話。
- (B) 『ビビアン・スーの天使の戯れ』。[1]”Hunting List”, [2]1994, [3]ムエタイ映画ではない、[4]朱延平たち、[5]香港の青年たちの話。
- (C) IMDb上にある作品。[1]”Go Fight”, [2]2004, [3]おそらくムエタイ映画、[4]Samart Paukarunたち、[5]海軍の兵士たちとマフィアの話。
- (D) Right Beyond社が提供している作品。[1]”Go Fight”, [2]製作年不明, [3]おそらくムエタイ映画、[4]Samart Paukarunたち、[5]バンコクの青年たちとそのボスの話。
- (E) youtubeで公開されている作品。[1]”Go Fight”, [2]製作年不明, [3]ムエタイ・コメディ, [4]Samart Paukarunたち、[5]バンコクの青年たちとそのボスの話。
- まず、(D)(E)は同一の作品と思われる。おそらく(C)も同一であろう(Cの[5]あらすじは誤っているものと思われる)。では(A)はなんなのか。次の2つの可能性が思い浮かぶ。
- 可能性1. (A)は(C)(D)(E)と同一作品である。(A)の[4]監督・出演者は誤っており、おそらくは(B)の[4]が紛れ込んだものである。
- 可能性2. (A)は朱延平らによる知られざる作品、ないし、(B)の映像素材をなんらか再利用した作品である。(C)(D)(E)は(A)と共通の原作を持つ作品、ないし(A)のリメイクであり、そのせいで[5]あらすじが共通している。
- 可能性1によれば(A)はタイ語映画、可能性2によれば(A)はおそらく中国語映画だということになる。
- 可能性1のほうが正しいのではないかと思う。世界に映画マニアは数多いので、もし可能性2が正しければ、HKMDBなどになんらかの情報があってしかるべきだろう。
- 結論: 本作はタイ語映画 “Go Fight”(2004, タイ) であると思われます。amazonプライムビデオ上のキャスト・スタッフ、IMDb上のあらすじは誤りであると思われます。