少し前に目を通した奴。
Yeatman, S., Trintapoli, J. (2011) Best-friend reports: A tool for measuring the prevalence of sensitive behaviors. American Journal of Public Health, 101(9), 1666-1667.
偏見とか薬物使用のようなセンシティブな事柄についての調査で、調査対象者自身について訊いてもどうせ答えてくれないだろうから、対象者の友達を思い浮かべてもらって訊いちゃう、というのはときどき見かけるやり方だと思うんだけど、先日友人から先行研究を問われて答えに詰まり、ネットを探して見つけた奴。たった2頁だけど、掲載誌からしてそんなに変な内容ではないだろうと。
いわく。アフリカのマラウィで15-25歳の縦断面接調査をやってて、性的行動について訊いてんだけど、正直に答えてくれそうにないので、こういう風に訊いている。”think about your best female friend in Balaka. Picture her. Do you have this person in mind?” でもって、この友達について訊く。
結果。センシティブでない設問(結婚有無と子の人数)についての集計は、通常の訊き方(自己報告)と変わらない。しかし過去1年の性交経験率は、未婚者に絞ると友達報告のほうが高い。性的パートナーが複数いる率と堕胎経験率も友達報告のほうが高い。
考察。友達報告法はセンシティブで過少報告されるような行動の発生率推定に有用であろう。友達と話さないような事柄については無力だろうけど。
… しかたのない話なんだけど、手法の特性を調べるのに、集計値が高いの低いのって議論しかできないところが辛いところだ…
調査で回答者Aさんに友達Bさんについて訊く場合、Bさんについて調べていると捉える発想(自分のことは正直に答えてくれないけど友達のことなら答えられるだろうし、類は友を呼ぶだろうから、BさんのことをAさんに訊くぜという発想)と、実はAさんを調べているという発想(人は自分の偏見なり願望なりを社会的に投影する生き物だから、Aさんにお友達Bさんについて訊くぜ、Bさんの真の姿には関心がないしそもそも実在してなくてもかまわないぜという発想)があると思う。この論文は前者だが、後者の発想に立った先行研究はないものだろうか。たぶん偏見の研究であると思うんだけど…
聴取法の先行研究として、Plummer, et al. (2004 SexTransm.Infect.), Fenton, et al.(2004 SexTransm.Infect.), Johns, et al.(1992 Demography), Jagannathan (2001 Am.J.PublicHealth), Hewett, et al. (2008 Am.J.Epidemiol.)というのが挙げられていた。題材は性的行動とか性病とか堕胎とからしい。最後のやつはバイオマーカーを外的基準にとって妥当性を調べているらしい。へー。