読了: Loosveldt & Storms (2008) 「調査というものに対する一般的な態度」を調査で測るための尺度をつくったよ

Loosveldt, G., & Storms, V. (2008) Measuring public opinions about surveys. International Journal of Public Opinion Research, 20(1), 74–89.
 survey climate(調査一般に対する人々の態度)の尺度研究。先日読んだ Gengler, et al. (2021) で引用されていた。google様いわく被引用回数83。意外に少ないけど、でもテーマがマイナーだからね…

 いわく。
 survey climateは調査にとって大事なのにデータが少ない。その理由として、調査への態度を調査で測るの?というおかしさと、きちんとした尺度がなかったという事情がある。本論文では尺度をつくります。

 先行研究:

  • Sjoberg(1955): インタビュー
  • Goyder(1986 POQ): 12項目、4因子。調査へのネガティブ態度を表しているのはうち4項目1因子。
  • Hox, de Leeuw, & Vorst(1995 Bulletin de Methodologie Sociologique): 調査への一般的態度8項目、個別調査への態度(ビネットを使って訊く)6項目。[あっそうか、ビネットを使って訊くという手があるね…]
  • Rogelberg et al.(1997 Org.Res.Method): 6項目。調査の価値と調査の楽しさの2因子。
  • Stocke & Langfeldt (2004 Bulletin de Methodologie Sociologique), Stocke(2006 Quality & Quantity): 8項目、1次元でつくり、のちに16項目に拡張。

 ミシガン大Survey Research Centerは電話調査でsurvey climateを測っている。5項目。
 Groves, Singer, Corning(2000 POQ)のleverage salience理論というのがあって、いわく、調査参加決定は調査の楽しさ、調査の有用性、調査結果の信頼性によって促進され、また参加コスト(時間と認知的努力)とプライバシーへの影響が最小化されたときに促進される。先行研究ではスタンダードが成立してないけど、どの研究もこの多かれ少なかれこの5要因を測っている。

 2004年にベルギーで郵送調査をやりました。台帳は有権者名簿。返送すると5ユーロ相当のバウチャーがもらえる。回収率51%、523票回収。で、この人たちに1年後に追跡調査をかけた。こんどはインセンティブなし。回収率71%。[おお、高い… どういうことよ..] この第二回調査を使って予測的妥当性を調べる。
 第一回調査でsurvey climate項目を訊いた。上記の5要因、各3~5項目、計23項目、5件法。たとえばsurvey valueの項目のひとつは”Survey are important for science”。各要因内のαはそこそこ高い。CFAをやって負荷の低い4項目を削った。19項目のいい感じの尺度ができました。
 ついでに短縮版もつくったよ。調査結果の信頼性を抜いて、4要因6項目。

 よくいわれているように、調査への態度がポジティブだと調査参加しやすいのか。Ajzen & Fishbeinにいわせれば行動への態度は行動意図を経由して行動に効きますよね。
 第一回調査の末尾で将来の類似調査への協力意図を訊いていた。これを目的変数、5要因を説明変数にしたロジスティック回帰では、調査結果への信頼性以外の4要因が有意。なお調査結果への信頼性も二変量でみると有意である。[としれっと書いているけど、どう解釈してんのこれ]
 調査回答にためらったかどうかも聞いていて、これを目的変数とすると、コスト、楽しみ、プライバシーが効いている。
 返送速度は… [めんどくさくなってきたのでパス]

 さあ、お待ちかね、第二回調査への参加です。
 第一回調査末尾の参加意図との関係は有意。参加意図ありだと実参加率76%, なしだと58%。
 5要因を説明変数にしたロジスティック回帰では、調査結果の信頼性だけが有意だった(10%水準だけど)。
 [えええ? 第一回調査末尾で訊いた参加意図に対しては5要因のうち4つが効いてたんだよね? で参加意図と第二回調査への参加は関連してたんだよね? で、5要因と第二回調査との参加の関連を参加意図ぬきで調べたら、さっき聞いてなかった要因「調査結果への信頼性」だけが効いてたってこと? なんで? なにか読み間違えたのかな…]

 結論。
 尺度についてはさらなる再現研究が必要。
 [実験結果の理解に自信がなくなってきたので、ここからちょっと細かくメモする]
 予測的妥当性の章で示した分析結果は理論的予測に沿ったものである。調査への信頼性についての意見を除き、調査についての意見は将来の調査への参加意図ならびに回答へのためらいと関連している。郵送調査のwave分析[?]の結果は、無回答者が一般に調査の価値・コスト・楽しみ・プライバシーについてよりネガティブな意見を持っていることを示している。将来の調査への参加意図と、追跡郵送調査への参加とのあいだに関連があることを考えれば、調査への意見が調査参加にすくなくとも間接的な効果を持つという理論に対して実証的な支持が得られたと結論できる。この結論は計画行動理論に基づく期待に合致している。
 この結論から得られるひとつの帰結は、調査についての意見の測定はバイアスを受けており、このバイアスがあるからこそ、調査についての意見を測ることに価値がありまた有用であるということである。もうひとつの帰結は、調査についての意見の測定の結果は、無回答率が増えるとよりポジティブになるということである。[…]
 [調査結果についての]信頼性尺度の信頼性は非常に高いにもかかわらず、この尺度についての結果は他の尺度の結果と異なっている。調査結果の信頼性についての意見は、別のsalienceとleverageを持っており、参加決定への影響も異なるのかもしれない。
 云々。
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 読みやすい論文だなあ、とフガフガと楽しく読んでいたんだけど、実験結果と結論とのつながりが全然納得できず、最後の最後になってオイテケボリにされてしまった。
 ある調査で、(A)調査というものへの一般的態度を訊いたんだよね? それは5要因を測ってて、そのうち「調査結果の信頼性」以外の4要因が、(B)その調査の末尾で訊いた「こういう調査について今後も協力してくださいますか」設問への回答と関連してたんだよね? そして、(B)その設問への回答は、(C)一年後にやった追跡調査への参加有無とある程度相関してたんだよね? しかし、(A)と(C)との関係を(B)抜きで調べたら、「調査結果の信頼性」だけが有意だったんだよね? なのになぜ、こんな「やっぱり調査への一般的態度は調査参加行動に効きますね」的結論に落ちつくの?!
 うーん、なにか読み間違えているのだろうか。読み直す気力はないけれど。。。