読了:野口(2016) 尾形光琳「紅白梅図屏風」の真ん中に流れている黒い川をどうやって作るのか

 読んだものはなんでも記録しておこうということで…

 先日、和歌山毒物カレー事件の冤罪説の立場に立ったドキュメンタリー映画「マミー」を観て、分析化学者たちが鑑定をめぐって対立する様子に、鑑定というのも一筋縄ではいかないものなのだなあ、と感心した。で、一方の化学者の方についてぼんやり検索していてたどり着いた文章。えーと、一方の化学者の方が講演したら、その講演をこの著者の方が聴いていて、もう一方の化学者の方をめぐって実はこんな対立もあるんですよと教えてくれたのだそうである。

野口康(2016) 金碧の真実 光琳の紅白梅図. 海洋化学研究, 29 (2), 59-78.

 著者は西陣の帯に使う金糸を作っている職人の方。えーと、尾形光琳の紅白梅図屏風ってあるじゃないですか(MOA美術館所蔵だそうである)。両側に梅の木があって中央に黒い水流が流れている、超有名なやつ。あの屏風、特に水流のところをどうやって作ったかという科学鑑定が、ふたつあって対立している由(その片方の鑑定者というのが、和歌山カレー事件のもう一方の化学者の方である)。で、著者は実作者として義憤を感じ(?)、作成方法を考案し試作してみせる。水流は銀箔ではなく、銀箔を貼って墨で染めて銀箔をはがしたものである由。
 こういう話題であれば、鑑定の対立というのも楽しいものなんですけどね…