覚え書き:GARCHモデルってなんだっけ

 データ解析に関連して、苦手な話題は多々あるが(というか得意な話題が見当たらないが)、特に苦手な話題が、時系列分析での分散変動モデルである。ああいうのはさ、数学が得意な人が資本主義に魂を売り、ファイナンスだかなんだかで儲けようとするときに使うモデルでしょう?
 と思ってたんだけど、仕事の都合でちょっと変わった事情が生じて、少し勉強せざるを得なくなった。ごく表層的な知識しか身につく気がしないけれど。

 以下は沖本(2009)「経済・ファイナンスデータの計量時系列分析」7章からのメモ。この本、私はほぼ全編を熟読しておりましたが、7章だけは飛ばしていたのである。いかに金儲けに縁がないかという話である。

 \(y_t = \mu_t + u_t\)という時系列モデルで、条件付き期待値\(\mu_t\)についてはARMAだかなんだかでいいかんじにモデル化するとして、条件付き分散\(E(u^2_t | y_{t-1}, y_{t-2}, \ldots)\)をモデル化したいという場面を考える。$$ y_t = \mu_t + \sqrt{h_t} v_t, \ v_t \sim N(0, 1)$$ として(\(v_t\)はiid)、\(h_t\)と\(v_t\)が条件付き独立であるとすると、$$ E(u^2_t | y_{t-1}, \ldots) = E(h_t|y_{t-1}, \ldots)$$ だから、\(h_t\)の条件付き期待値をモデル化すればよいことになる。
 この問題へのアプローチとして、時点\(t-1\)の情報集合\(\Omega_{t-1} = \{y_{t-1}, y_{t-2}, \ldots\}\)に含まれる変数だけを使うアプローチと、さらに\(h_t\)の独自の確率的ショックを考えるアプローチがある。以下は前者の話である。

 まずは、$$ h_t = \omega + \sum_{i=1}^i \alpha_i u^2_{t-i} $$というモデル。これをARCH(m)モデルという。前期のショックの大きさが今期の条件付き分散に効くわけだ。
 いま\(w_t = u^2_t -h_t\)とすると$$ u^2 = \omega + \sum_{i=1}^m \alpha_i u^2_{t-i} + w_t$$と書き換えられるので、\(u^2\)をAR(m)でモデル化しているといってもよい。\(h_t \gt 0\)なので、ふつうは\(\omega \gt 0, \alpha_i \geq 0\)と制約する。
 このモデルは、ショックの規模の正の自己相関を説明できる。ARCH(1)であれば\(\alpha_1\)が自己相関の強さを決めている。なお、右辺には\(\{u^2_t\}\)だけがはいっているわけで、正のショックも負のショックも影響は同じである。

 これを拡張して、$$ h_t = \omega + \sum_{j=1}^r \beta_j h_{t-j} + \sum_{i=1}^m \alpha_i u^2_{t-i} $$ とするという手もある。これをGARCH(r,m)モデルという。前期のショックの大きさと、前期の条件付き分散が、今期の条件付き分散に効くわけだ。ふつうは\(\omega \gt 0, \alpha_i \geq 0, \beta_j \geq 0\)と制約する。
 ARCH(m)モデルの一般化ではあるが、\(u^2\)についてのAR(m)モデルをARMA(r,m)に一般化したモデルではない、という点に注意。\(h_t = u^2_t – w_t\)を代入すると $$ u^2_t = \omega + \sum_{j=1}^r \beta_j (u^2_{t-j} – w_{t-j}) + \sum_{i=1}^m \alpha_i u^2_{t-i} + w_t$$ \(r\)と\(m\)の大きいほうを\(p\)として無理やりそろえると $$ u^2_t = \omega + \sum_{k=1}^p (\alpha_k + \beta_k) u^2_{t-k} + w_t – \sum_{j=1}^r \beta_j w_{t-j}$$ となるから、むしろ\(u^2\)についてのARMA(p, r)になっている。

とりあえず、このへんまでにしておこう。