読了: Lally, et al. (2010) 習慣形成を個人レベルで追跡する実験をやりました

Lally, P., van Jaarsveld, C.H.M., Potts, H.W.W., & Wardle, J. (2010) How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40, 998-1009.

 仕事の都合でめくった奴。
 えーと、Gardner & Lally (2018) いわく、人間の習慣形成を個人内で追いかけた定量研究はこの論文ともう一本しかない、のだそうである。現時点でもそうなのかどうかは知らんけど。

 時間がないのでメモは省略するけど、要するにこういう研究である。
 被験者は学生。まず最初に、健康的な飲食ないしエクササイズ行動のうち自分が習慣化したいと思うものを選んでもらう。それは1日1回、ある決まった出来事とともに行うもので、これまでにやってないことである。たとえば、「昼食の際に果物を食べる」とか「夕食の前に15分走る」とか。で、84日間にわたって続けてもらう。毎日調査に回答しSRHIにも答えてもらう。SRHIってのは12項目7件法の尺度で、たとえば「私は自動的にやっている」とか。42点満点の習慣化スコアが出る。
 xを日数、yを習慣化スコアとして、個人レベルで\( y=a – b \exp(-cx) \)というモデルをあてはめる。漸近線\(a\)が21を下回ったら習慣化しなかったとみなす。

 結果。
 被験者96人(男30人)ではじめた。脱落を抜くと82人。うまく推定できて決定係数が0.7を超え、習慣化が生じていて、\(a\)が49を超えない、というのは39人。
 39人についてみると、遵守率と決定係数の間には相関があった(遵守している人の自動化スコアはモデルでより説明できる)。漸近線の中央値は33、漸近線の95%に達する日数の中央値は66日。行動は3種類あるのだが、行動間でかかる日数に差があった(でも有意でなかった)。遵守率の差は有意だった。
 3日連続で遵守して翌日が非遵守、という事例を抜き出して調べると、習慣化スコアはほとんど落ちていなかった。[…中略…]

 考察。
 高原に達するまでの日数の中央値は66日だが、18日から254日までの幅がある。習慣化が成立するまでの日数について述べている文献はRonis, Yates, Kirscht (1988)しかみあたらないが、それによれば最低月に2回、最低10回、だそうである。それよりは全然長い。
 行動間で有意差がなかったのは検定力が低いからで、やっぱり複雑な行動は自動化しにくいようである。
 missed opportunitiesはあんまり影響しないようである。
 [とかなんとか… 後略]