中川宏道 (2017) ポイントの知覚価値および知覚コストに関する研究の展望と今後の課題. 九州大学心理学研究, 18, 15-27.
中川宏道先生によるポイント研究レビュー。こういうの、ほんとに助かりますです…
ポイント付与の知覚価値 vs. 値引きの知覚価値
[このくだりは先に読んだ中川(2015)とかなり重なるのでメモ省略]
ポイント付与の売上効果 vs. 値引きの売上効果
売上データによる実証研究は… [先行研究18本を表側、目的変数、データ(売上か購買履歴かパネルか)、分析レベル(店舗かカテゴリか)を表頭にとった表が載っている。感涙]
値引きの弾力性については研究が多い。Bijmolt et al.(2005 JMR)は81研究[←まじか。すげえな]をメタ分析していて…[メモ省略]。値引きの弾力性とクーポンの弾力性を比較した研究としてKumar & Swaminathan (2005 J.Retailing)がある。
今後の課題: (1)単品ポイント方式のポイント付与の、商品レベルでの効果測定。(2)従来の弾力性推定の多くは誤差項の正規性を仮定しているけど、日別商品別の売上数量は0過剰カウントなのでよくない。(3)従来の弾力性推定の多くはデータを週次に潰してるけど、特売は日別なんだから日別にしたほうがよい。(4)線形関数だと弾力性一定、指数関数だと弾力性逓増に固定していることになる。逓増も逓減も許容するモデルが望ましい。(5)季節性とかをちゃんとコントロールすること。
ポイント支払の知覚コスト
未使用ポイントが増大するのは会計上は助かるんだけど、いっぽう、ポイント使用はその後の購買行動に正の影響を与える(Lal & Bell 2003 Quant.Mark.Econ.; Taylor & Neslin 2005 J.Retailing; Dorotic et al. 2014 Int.J.Res.Mark.)。
ポイントを使うか貯めるかを規定する要因についての研究は少ない。(Smith & Smarks 2009 Brit.J.Manag., Noble et al. 2014 J.Bus.Res.というのがreferされている)。
蓄積ポイントに応じた特典付与の方法は、連続-非連続と線形-非線形の2軸で分類できる。非連続型について:
- プログラムの要素(ポイント使用の閾値とか)と償還率の関係についての研究が多い(Dreze & Hock 1998 Int.J.Res.Mark.; Dreze & Nunes 2011 JMR, Nunes & Dreze 2006 JCR)。
- 支払金額が高いとポイントの使用意図があがる(Dreze & Nunes 2004 JMR)。[←どうやらこれを読むべきらしいな]
- 特典の魅力が高いと償還率が上がる。経済的な特典か社会的な特典かは効かない。
線形連続型ポイントは貯めるインセンティブがないのに、なぜか貯める人が多い。
- Kwong et al (2011 Int.J.Res.Mark.): 割引率の計算のしやすさが使用意図に効く。
- Stourm et al.(2015 JMR): 線形連続型ポイントの貯蓄行動の要因として次の3つを挙げている。
- 経済的動機。ポイントを使う買い物ではポイントが貯まらないから[ああそうか。ヨドバシのポイントみたいに、ポイントが使う買い物でさえポイントがもらえる奴もあるけど、少数派かもしれない]
- 認知的動機。ポイント使用が取引コストと感じられる。[わかるわ…]
- 心理的動機。現金とは心的会計がちがうから。
購買履歴を分析すると認知的動機と心理的動機が強い。[そんなんどうやってわかるんだろう… 読んでみなきゃ…]
支払の痛みの研究: Soman(2003 Mark.Lett.), Raghubir & Srivastava(2008 JEP:A)。
今後の課題: (1)ポイント残高を考慮すること。(2)ポイント使用に対する支払金額の効果とポイント残高の効果の比較。