読了:Urde (2013) コーポレート・ブランディングのフレームワークCBIMのご提案

Urde, M. (2013) The corporate brand identity matrix. Journal of Brand Management, 20(9), 742-761.

 仕事の都合で読んだ奴。コーポレート・ブランディングのためのフレームワークを提示するという話。カプフェレのブランド・アイデンティティ・プリズムみたいな壮大なポンチ絵(すいません)のコーポレート版である。
 google様いわく、被引用回数286。

1. イントロダクション
 製品ブランドについてのフレームワークをコーポレート・ブランド・アイデンティの文脈に当てはめてしまうと、以下の問題が生じる。

  • 組織文化とかコア価値とかミッションといったコーポレート・ブランド・アイデンティティの本質的な内的側面が無視されてしまう。
  • ボジショニングと価値提案が単純化されすぎてしまう。
  • イメージ広告への過度の依存が生じ、個人的なビジネス関係の重要性が軽視されてしまう。

 そもそも「コーポレート・ブランド」ということばそのものが、ブランドの背後に組織が存在し、それがコーポレート・ブランドの一部分なのだということを表している。これが製品ブランドとの重要なちがいだ。企業について語るときは「我々」「彼ら」っていうけど、製品ブランドは誰にとっても「それ」でしょ。企業のミッション・ヴィジョン・コア価値と企業文化、企業のコンピテンスは、コーポレートブランドの本質的要素なのだ。製品ブランドのフレームワークではそれらは無視されてしまう。[なにを言葉遊びしとんのかという気もしますが、まあいいたいことはわかる]
 [コーポレート・ブランドがいかに大事かという話。中略]

 本論文はコーポレート・ブランド・アイデンティティの定義とalignmentについてのマネジリアルなフレームワークを提出する。

2. 先行研究: ブランド・アイデンティティ・フレームワーク
 ブランドというのはなにかの「サイン」である。サインはなにかを表している。ここでのそれは組織であり、ここでのサインはコーポレート・ブランド・アイデンティティである。[めんどくさいのでCBIと略してメモする]
 CBIというのは符号化の結果であり、ステークホルダーの心のなかでそれがデコードされる。

 そもそもブランドの定義には2つのアプローチがある。ブランド志向アプローチと市場志向アプローチである。[前者はパーパスみたいな内部要素でブランドを定義すること、後者は価値提示みたいな外部要素でブランドを定義すること]

2.1 製品ブランディング
 実務家由来のブランドのモデルは60年代からある。Ted Bates社のBrand Wheelとか、UnileverのBrand Keyとか、J&JのBull’s Eyesとか。
 アカデミックではParkら(1986)のBrand Concept-Imageモデルというのがあった。その後のKapfererのBrand Identity Prismというのが有名で、ブランドのアイデンティティをphysique, relathinship, reflection, personality, culture, self-imageにわけている。

2.2 コーポレート・ブランディング
 既存のCBIのフレームワークはふつうコア・アイデンティティと拡張アイデンティティをわけて考える。
 コア・アイデンティティについてはColling & Porras (1998 書籍)の「コア・イデオロギー・モデル」というのがある。いわく、CBIの鍵概念はパーパスだ。[…雲をつかむような話が続くので中略…]
 拡張アイデンティティというのはコア・アイデンティティを反映する諸要素のこと。Aalerのブランド・アイデンティティ・プランニング・モデルの場合、価値提示とポジションからなる。[…中略…]

 [ほんとにイライラしてきたのでメモは省略するけど、要するにこの分野ではいろんな偉い人が好きな言葉を使って口々に似たようなことをいっているのである。世界のブランディング論の大家たちをことごとく拉致して、ひとりを残して残り全員を絶海の孤島に閉じ込めてもたいして問題ないんじゃないかと思うぞ… まあとにかく、著者は製品ないしコーポレートのブランド・アイデンティの諸要素としてこれまで挙げられてきた概念を、コア、外部(価値提示とか)、内部(パーパスとか)、の3つに分けてリスト化している。ご苦労様なことだ]

2.3 新たなフレームワークに向けて
 製品ブランドのモデルは市場志向アプローチに偏っており内部要素を無視しがちである。

3. 方法
 というわけで、新たなフレームワークであるコーポレート・ブランド・アイデンティティ・マトリクス(CBIM)を提案する。
 文献レビューに基づき、ケースとして3社の資料を集めた。[←あんまし関心ないので身も蓋もない端折り方をしたが、方法論についての理屈づけがかなり長めに書かれていて、なんだか怖い感じ。実務家を集めたワークショップもやったんだそうだ]

4. 新しいマネジリアル・フレームワーク: CBIM

4.1 CBIMフレームワークの開発
 [フレームワークはどんな特徴を持つべきか、とかなんとか。中略]

4.2 CBIMフレームワークの諸要素
 というわけで、3×3の9マスを考えまして[…中略…]

4.3 内部要素

  • mission & vision (左下)。
  • culture (中下)。
  • competences (右下)。持続可能な競争優位性の想像と維持に関連するextra strategic relevanceを与える[ヤヤコシイ言い回しだなあ]。

4.4 内部-外部要素

  • core (中央)。ブランドのcore valuesと、そこから導かれるpromisesのこと。
  • personality (中右)。ブランド・パーソナリティとちがって従業員のパーソナリティに依存する。
  • expression (中左)。visual identityとか。

4.5 外部要素

  • value proposition (上左)。
  • relationships (上中)。CBIを構築・反映・定義する方法。
  • position (上右)。

4.6. このフレームワークの使い方
[9個を問いの形にしたリストが載っている]

5. マトリクスの適用: ケーススタディ
[なんかもうめんどくさくなってきたので読まずに飛ばした。どうもすいませんね!(逆切れ)]

6. 考察
[略]
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 正直、こういう論文読むのって辛い… 理屈っぽいディフェンスが長くて疲弊する。実証と距離のある概念モデルを、実証ベース研究という文脈で提示するのって、ほんとに大変なんですね。