Balmer, J.M.T. (2001) Corporate identity, corporate branding and corporate marketing: Seeing through the fog. European J. Marketing, 35, 248-291.
仕事の都合で読んだ奴。
1. イントロダクション
ビジネス・アイデンティティ研究は霧に包まれて孤立している。孤立自体は悪いことじゃないんだけど、そのせいでこの問題が学際的であることが見失われてしまう。
本論文は、アイデンティティ概念の重要性に関しての近年のコンセンサスについて概観した上で、霧が生じる原因について検討する。
2. ビジネス・アイデンティティ研究の重要性の増大
ビジネス・アイデンティティ研究は大きく、企業アイデンティティ研究、組織アイデンティティ研究、視覚アイデンティティ研究に分かれる。研究はさかんになっているぞ。Cheney & Christensen (1999 Chap.)をみろ。ビジネススクールでも教えてるぞ。
3. ビジネス・アイデンティティ研究はなぜ霧に包まれているのか
その理由を15個挙げよう。
3.1 用語
アイデンティティ概念が緩く使われすぎている。明確な定義がない。もっとも、似た概念がいっぱい出てくるというのは成熟のしるしなんだけど。
問題のひとつは、いくつかの概念が人間のアナロジーであるということだ。そのせいで、たとえば人間のアイデンティティについての社会心理学的原理が説明に使われたりする。
[主な概念、主要研究、概念の特徴を表にしている。概念は
- 企業ブランド
- 企業コミュニケーションと全企業的コミュニケーション
- 企業アイデンティティ
- 組織アイデンティティ
- 視覚アイデンティティ
- 企業イメージ
- 企業パーソナリティ
- 企業レピュテーション
また、主な概念と企業にとっての問いとの対応を表にしている。メモしておくと
- 企業アイデンティティ: what are we?
- 組織アイデンティティ: who are we?
- 視覚アイデンティティ: 組織のシンボルと識別のシステムはなにか?
- 企業コミュニケーション: 統合的なコミュニケーションはなされているか?
- 全企業的コミュニケーション: コミュニケーションに垂直的整合性(好意・行動との関係のこと)と水平的整合性(時間軸上の整合性のこと)はあるか?
- 企業イメージ: 現在の知覚・プロファイルはどんなものか?
- 企業レピュテーション: 組織に付与された示唆的特徴は?
- 企業ブランド: そのブランドによって推論され、そのブランドによって伝達される約束はなにか?
だそうだ。]
3.2 ビジネス・アイデンティティの存在理由についていろんなパラダイムがある
すなわち、
- 機能主義。ビジネス・アイデンティティを社会的事実として捉え、観察したり測定したりする。
- 解釈主義。ビジネス・アイデンティティを社会的に構成された現象として捉え、従業員が意味を構築するありかたを理解しようとする。
- ポストモダン。ビジネス・アイデンティティを、組織のメンバーが自分自身をどう見るかというtranscendatoryなパースペクティブのコレクションとして捉え、ビジネス・アイデンティティをめぐる権力関係をあきらかにしようとする。この派の人々は単純さより複雑性を好み、研究プロセスは挑発的で再帰的である。[なんだかディスっておられるような気がする… お嫌いなんでしょうね…]
3.3 ビジネス・アイデンティティに関するディシプリン的パースペクティブの多様性
多様なマネジメント・ディシプリンにおいて多様なアイデンティティ概念があり、パースペクティブが多すぎる。3つのアイデンティティ概念の関係についてもパースペクティブがいろいろである。
[図で説明しているが、(A)CIはグラフィックデザインの一部だモデル、(B)グラフィックデザインはCIの一部だモデル、(C)CIはマーケティング・コミュニケーションの一部だモデル、(D)CIはストラテジーの一部だモデル、(E)CIと企業イメージは一部重なっているモデル、(F)CIは企業コミュニケーションと一部重なっているモデル、…面倒くさいので中略…、(N)ストラテジーと企業レピュテーションとステークホルダー理論とCIと組織アイデンティティと企業コミュニケーションと企業ブランドは企業マーケティングの一部だモデル、があるのだそうな。はっはっは。要はいいたい放題ってことじゃないですか]
3.4 ビジネス・アイデンティティの構成要素とビジネス・アイデンティティを管理する際に検討すべき要素との区別が付いていない
我々が思うに、ビジネス・アイデンティティの構成要素は、ソウル(主観的要素)、マインド(組織による決定)、ヴォイス(組織の内部・外部へのコミュニケーション)である。付け加えれば、環境による力、ステークホルダー、レピュテーションである。いっぽう他の論者は…[中略]
ビジネス・アイデンティティを構成する諸変数と、ビジネス・アイデンティティ・ミクスの管理に関して検討すべき諸課題とを区別することが必要である。[…ほかにもなんかいろいろ書いてあるけど略]
3.5 ビジネス・アイデンティティ管理の目的に関する意見の不一致
[雲をつかむような話に飽きてきたので略]
3.6 英語圏と非英語圏のあいだでの対話が伝統的に欠けている
[メモは省略するけど、日本にはちょっと別の考え方があって… というくだりで中西元男という人が挙げられている]
3.7 異なるディシプリンの間での対話が伝統的に欠けている
[メモ省略。心理学での研究としてBromley(1993) “Reputation, Image and Impression Management”という書籍が挙げられている]
3.8 グラフィック・デザインとの関連性
[読まずにとばしたけど、おそらく、視覚的なデザインの話に偏りがちだという話だと思う。現在に至るまで我々はビジネス・アイデンティティ変更プログラムでCIコンサルが企業ロゴをいじろうとしなかった例をみたことがない、なんて書いてある]
3.9 流行の効果
60年代までは「企業イメージ」、70年代は「企業アイデンティティ」、最近は「企業ブランド」「企業アイデンティティ」という風に、新しい概念がどんどん出てくる。
3.10 アイデンティティに関する理論生成の初期段階において実証主義的な研究パラダイムが不適切である
ビジネス・アイデンティティ管理の帰結やベネフィットを測定することに注意が向けられすぎていた。そういう実証主義的パラダイムじゃなくて、自然主義的パラダイムのほうが適切である。事例研究もよいだろう。[…中略…]
3.11 学術研究が足りない
[面倒くさいので読まずにとばした]
3.12 持株会社や親組織のビジネス・アイデンティティにばかり焦点を当てすぎた
[略]
3.13 アングロサクソン流のビジネス構造を重視してきた
[メモ省略。日本のケイレツの話なんかが出てくる]
3.14 企業アイデンティティ・企業イメージの管理・形成についての初期の伝統的モデルには弱点があった
アイデンティティとイメージの混同とか。Abratt(1989)のモデル、Dowling(1993)のモデル、Kennedy(1977)のモデルについて検討すると…[すいません、読まずにとばしました。正直うんざりしてきた]
3.15 現実のアイデンティティ、伝達されたアイデンティティ、把握されたアイデンティティ、理想のアイデンティティ、望まれるアイデンティティ、の区別がついていなかった
[著者様のAC2IDテストの紹介。メモ省略]
…そこはかとなく面倒くさくなってきたので中断。以降の章立ては以下のとおり。
4. マーケティング再考: 組織の顧客とは誰か?
5. マーケティング再考: 企業マーケティング・ミクスを再考する
6. 結論
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途中で力尽きて放り出してしまったけど、その最大の理由は文章自体にある。この先生、なんでこんな難しい単語をつかうのさ。こういう流麗な文章って、私みたいに英語が苦手な人にはただひたすら迷惑でしかない。ほんと、やめてほしい。もっと平易で散文的な文章を書こうよ!(逆ギレ)