読了:Chrzan & Orme (2000) 選択型コンジョイント分析の実験計画のつくりかた

Chrzan, K., Orme, B. (2000) An Overview and Comparison of Design Strategies for Choice-Based Conjoint Analysis. Research Paper, Sawtooth Software.

 読んだものはなんでも記録しておこう、ということで…
 コンジョイント分析のソフト会社Sawtooth Softwareが公開しているTechnical Paperのひとつで、選択型コンジョイント分析の実験計画(どんなプロファイルをどうやって組み合わせて提示するか)について、理屈はともかくとしてどうやってつくるか、という話。非常に土臭い、他ではちょっと読めない話がまとまっている。

 実をいうと、この資料、読むのはたぶん3回目か4回目くらいである。私のようになんだかよくわからない仕事をしていると、たまにではあるが、コンジョイント分析の実験計画を手でつくる羽目になることがある(web調査の実務に詳しい人ほど驚くのでないかと思う。いまどきのコンジョイント分析は専用システムによって自動化されているから)。そんなとき、えーと、計画はどうやって作ればいいんだっけ… と毎回途方に暮れ、この資料の題名に惹かれて目を通すのである。そしてこれ前に読んだことがあるぞ、そしてほんとに知りたいことはここには書いてないぞ、ということを遅ればせながら思い出すのである。
 これ以上繰り返したくないので、メモをとっておく。もう読まないぞ。

 いわく。
 選択型コンジョイント分析の実験計画をどうやって作るか。3つのアプローチにわけて説明しよう。

 その1、マニュアルで作る。
 伝統的な部分実施要因計画(fractional factorial design)からはじめよう。4属性で水準が(3,3,3,3)だったら、可能な完全プロファイルは\(3^4=81\)ある。Addelmanのカタログで\(3^4\)計画を探すと
$$ \begin{array}{cccc}
1 & 1 & 1 & 1 \\
1 & 2 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 3 & 2 \\
2 & 1 & 2 & 2 \\
2 & 2 & 3 & 1 \\
2 & 3 & 1 & 3 \\
3 & 1 & 3 & 3 \\
3 & 2 & 1 & 2 \\
3 & 3 & 2 & 1 \\
\end{array} $$ というのが載っている。列を属性、値0,1,2を水準と読み替えればよい。これで9個のプロファイルが作れたわけだ。
 [おっとお… 飛ばしてきましたね。Addelmanのカタログというのは非対称直交主効果計画を列挙したもので、実験計画のハンドブック的な本にAddelman計画という名前で載っているのを見たことがある。Addelman(1962, Technometrics)が引用されている]
 ここからたくさんのプロファイル集合を生成したい。Louviere & Woodworth (1983 J.Mktg.Res.) の方法があるけど今ではあまり使われていない。ここではその変種を3つ紹介しよう。

  • shifting。(1)上記の9個のrun[行のことね]を、9個のプロファイル集合のひとつめのプロファイルにする。(2)上の表の右に4列付け加える。列5は列1の値を1ずつ上にシフトした値とし(1,2,3を2,3,1にするわけね)、列6は列2を、… 以下同様。これらを9個のプロファイル集合のふたつめのプロファイルとする。(3)同様に列9,10,11,12を追加して、これらを9個のプロファイル集合のみっつめのプロファイルとする。こうして9個のプロファイル集合ができる。
  • mix and match。(1)上の9個のrunを山Aに置く。(2)どこかの列(ひとつでも複数でもよい)について、1と3を入れ替える。できた9個のrunを山Bに置く。(3)(2)を繰り返し、できた9個のrunを山Cに置く。(4)それぞれの山についてシャッフルする。(5)各山からrunをひとつづつ取り出し、ひとつめのプロファイル集合とする。こうして9個のプロファイル集合ができる。
  • \(L^{MN}\)方略。ある選択肢集合に含まれるプロファイルの数を\(N\), 属性の数を\(M\), 各属性の水準数を\(L\)と書く。Addelmanのカタログから水準数\(L=3\), 列数\(NM=12\)の計画を探すと27行のがみつかる。列1-4をひとつめのプロファイル、列5-8をふたつめのプロファイル、列9-12をみっつめのプロファイルとする。27個のプロファイル集合ができる。

 [ついつい延々とメモしちゃったけど、どうでもいい話だなあ… さすがにいまとなっては、こうやって作ることはないと思う]

 その2. ランダム化計画。
 Sawtooth Softwareの製品はこれを採用してます。対象者ごとに計画をランダムに生成する。方法は4つある。[以下、Sawtooth SoftwareのCBC Technical Paperも参照しながらメモ]

  • complete enumeration. 対象者内でプロファイルはほぼ直交、つまり属性間の2元の頻度は等しくなる[属性AとBがそれぞれ3水準持っているとして、A1&B1, A1&B2, \ldots, …, A3&B3の出現頻度が対象者内で等しいってことね]。選択肢集合のなかで水準が重複することがあるが可能な限り少ない(minimal overlap)。
  • shortcut. ある対象者のあるプロファイルは、その対象者がそれまでにみた回数が一番少ない水準から作られる。minimal overlapの性質を持つ。また各属性において水準の頻度が釣り合う。[直交ではないわけね]
  • random. 可能なプロファイルのユニバースからプロファイルを非復元抽出する。overlapは起きる。
  • balanced overlap. complete enumerationとrandomの中間。minimal overlapではないがそれほどひどくはない。[Sawtooth SoftwareのCBCではこれがデフォルトである]

 その3、コンピュータによる最適化。
 Kuhfeld et al.(1994 J.Mktg.Res.), Huber & Zwerina (1996 J.Mktg.Res.)をみてくれ。[そうだ、ここまで読んで思い出した… 結局このテクニカル・ペーパーを読んでも、選択型コンジョイント分析の最適計画の話は書いてないのだ… 忘れてたよ…]

 … ここから先の内容は以下の通り。ちゃんと読んでないのでメモは省略する。

  • 主効果以外の効果を推定できるかどうかとか、prohibitionやalternative specific effectを実装できるかという星取表。たとえば、shift法でつくると交互作用効果が推定できなくなっちゃう、とか。これはまあ、その時々に悩めばいいと思うので、パス。
  • 推定の効率性についての実験。
  • 水準のprohibitionがいかにデザインの効率性を落としてしまうかを例示。「クライアントの言うとおりにprohibitionをかけてはならない」という名文句が出てくる。