読了: Romaniuk, Wight, Falkner (2017) 対決! ブランドtop-of-mind vs. 非助成想起 vs. 助成認知

Romaniuk, J., Wight, S., Faulkner, M. (2017) Brand awareness: revisiting an old metric for a new world.  
Journal of Product & Brand Management, 26(5), 469-476

 仕事の都合で読んだ奴。
 著者らはオーストラリアの人で、第一著者と第三著者の所属はEhrenberg-Bass Institute.

1. イントロダクション
 顧客ベース・ブランド・エクイティ(CBBE)のモデルはいろいろあるけど、たいていはブランド認知 brand awareness を基盤とする。それはブランド・イメージのようなより高次な構成概念のために必要な要件であり、また、それ自体が選択を促進する。Ambler(2000 書籍)いわく、企業の78%がブランド認知を監視している。

2. ブランド認知の測定
 CBBEの指標は敏感かつ安定していないといけない。ブランド認知の指標としてよく使われているのは、(A)top-of-mind, (B)非助成認知, (C)助成認知である[(A)カテゴリ名を手掛かりにした既存ブランド名再生課題で最初に再生されるか、(B)再生されるか、(C)カテゴリ名とブランド名を提示し再認できるか、ということであろう]。(A)(B)はブランド名の検索が必要になる。
 指標を比べた研究は少ない。

  • Laurent, Kapfere, Roussel(1995 MktgSci.): 3指標は同一の概念を測っており、二重対数変換すれば線形関係になる。要は難度がちがうだけなので、ブランドシェアに応じて適した指標を選ぶだけでよい。[Kapfereって、ラグジュアリーブランド戦略のカプフェレか…]
  • Romanuik, Sharp, Paech, Driesener (2004 Australasian Marketing J.): 縦断分析。シェアが中程度のブランドではたしかに3指標は変換可能だが、大ブランド・小ブランドでは指標によってボラタリティが変わる。安定している奴を選べ。[自分たちの研究だね]

というわけで、グローバル・マーケティング時代のマーケターのみなさん、本研究のリサーチ・クエスチョンは以下のとおりです。

  • RQ1. 3つのブランド認知指標の構造は国を超えて一般化できるか?
  • RQ2. 異なる市場のブランドについても、同じ市場のブランドを追いかけるときにも、同じモデルを使えるか?
  • RQ3. あるブランドについて、シェアが異なる国を通じて同じモデルを使ってよいか?

3. 方法
 データはウィスキーのグローバル・ブランド・トラッキング。UK, ギリシャ, 台湾のデータを使う。期間は国によって違うが、ギリシャは12 wave, UKは8 wave, 台湾は4 wave[詳しく書いてないがたぶん半期単位なのだろう]。調査対象は過去4週間カテゴリ購入者、waveあたり211-300人。

4. 結果: ブランド認知得点の構造
 3指標を二重対数変換すると、たしかに線形な関係があって、TOM-非助成では修正R2が0.73, 非助成-女性では0.66。国別にみてもよくあてはまっているし、係数は国間で似ている。RQ1を支持。

5. 結果: ブランドレベル分析
 シャアの大中小で分けて国別にみると、[…めんどくさくなってきたので中略するが、たとえば大ブランドでは助成と非助成の関係がなくなる…]。というわけでRQ2については、シェアがちがうと3指標間の関係もかわる。だからRQ3についてはNo。

6. 考察
 マーケターの皆さん、良いブランド認知指標がどれかはシェアによって変わります。また、安定性と敏感性のどっちを取るかによっても変わります。
 小ブランドならTOMが安定していて、助成認知は変動します。大ブランドなら助成認知が安定し、TOMは変動します。中ブランドならどれでもよろしい。 

7. 本研究の限界と今後の課題
 カテゴリを増やす。3指標をちがう対象者から得る。指標の変動の原因を調べる。
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 いちおう読んでみたけど… この話さあ… もう少し面白い展開にはならないの? カテゴリにおいて典型性が高いブランドはtop-of-mindが高くなりやすいとか、助成想起にはプライミングによるバイアスがあるとか… なんかそういう心理学的な仮説がたてられないものなの? うーん、まあ、余計なお世話ですね。よし次に行こう次に。

 そういえば、私が院生だったころ(大昔ですね)、再認判断でもrememberとknowとでは違うんだという話がさかんに行われていた。当時から一過性のブームじゃないかという雰囲気があったし、正直マニアックすぎるような気がしてついていけなかったんだけど、あれをブランドについてやった研究ってあるのだろうか。というか、remember/know判断ってまだ研究は続いているのかしらん。なんにでも流行というものがあるからなあ…
 → いま調べたら、2020年のMem.Cog.に”Revisiting the remember–know task: Replications of Gardiner and Java (1990)“という論文が載っている。嗚呼、やっぱしrevisitって感じのトピックなのか。時は流れていく。