西野成昭 (2021) サービスモデリングの方法論 -メカニズムデザイン理論からのアプローチ-. 感性工学, 19(2), 47-54.
仕事の都合で調べ物をしていてみつけた。実は以前に拝読していたのだが、そのときから私の関心も変わっているので、改めてメモを取りながら読み直した。
- 価値共創という考え方の起源として、(1)哲学・生命科学、(2)生産工学、(3)経営学(消費者共創)がある。(3)はPrahalad&Ramswamy(2000 HBR; 2004 J.IntaractiveMktg)らによるもの。
- SDLでいう価値共創は(3)の派生と考えられる。SDL系の文献ではPrahaladらは[なぜか]引用されていないけど、Vargo & Lusch (2004 J.Mktg)にはPrahaladがコメントを寄せている。[←こういう話、いずれ当事者へのインタビューがなされるといいんですけどね…]
- SDLは序数効用に基づく価値の経済学的理論をgoods-dominantだと批判するけれど、これは早計である。サービスにおける価値共創に、メカニズムデザインの枠組みでアプローチしてみよう…[というのがこの論文の本題]
- メカニズムデザインでは、選好集合\(D\)(効用関数がここにはいる), メッセージ集合\(M\), 帰結集合\(X\)があって、戦略関数が\(s:D \rightarrow M\), 帰結関数が\(g:M \rightarrow X\), 社会選択関数(パレート最適性とか)が\(f:D \rightarrow X\)である。ふつう\( (M, g) \)をメカニズムという。\( g(s(d|(M,g))) = f(d) \)を実現するような\((M,g)\)を決めるのがメカニズムデザイン。\(s\)がナッシュ均衡であるときこの式のことをナッシュ遂行という。[← かっこいいネーミングだ]
- さてサービスはどうかというと、やはり\(D,M,X\)の三角形で捉えられるけど、\(f\)が社会的な望ましさじゃなくてサービス設計者の目標になり、しかも相互作用を通じて帰結が目標を超えちゃうこともある、という点が異なる。また\(s\)も限定合理性とかを踏まえて考える必要がある。