論文」カテゴリーアーカイブ

読了: Sonner, Aislie, & Otther (2007) コンジョイント分析で属性のWTPを推定したいとき、価格の効用を真面目に推定したほうが良いか、いっそ傾き1に固定しちゃった方が良いか

Sonnier, G., Ainslie, A., Otther, T. (2007) Heterogeneity distributions of willingness-to-pay in choice models. Quantitative Marketing and Economics, 5, 313–331.

 仕事の足しになるかと思って読んだ奴。Googleさんいわく被引用件数223。経済学の論文としては、これって多いほうなんですかね?
 最初なにいってんだかわかんなくなって混乱したんだけど、ここでいっているWTPというのは製品そのものに対する支払意思額のことではなく、価格以外の属性の部分効用の増分を価格に換算した値のことである(たとえば、同じ製品がブランドBじゃなくてAだったらいくら多めに払うか)。
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読了: Breidert, Hahsler & Reutterer (2006) 支払意思額の測定手法レビュー

Breidert, C., Hahsler, M., Reutterer, T. (2006) A review of methods for measuring willingness-to-pay. Innovating Marketing, 2(4), 8-32

 仕事の都合で読んだ。WTP(支払意思額)測定手法のレビュー。てっきりCVM(仮想評価法)のレビューだと思って放置していた。
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読了: Sisson & Fan (2011) 尤度を使わないMCMC

Sisson, S.A., Fan, Y. (2021) Likelihood-Free MCMC. in Brooks, S., et al.(eds) “Handbook of Markov Chain Monte Carlo,”, CRC Press.

 尤度フリーMCMCについての解説。いま仕事の関係で悩んでいることについて、ちょっとした手がかりでも得られるかも、と思って目を通した。高い本を買っちゃったから無理にでもモトを取らなくちゃ、というのがもう一つの動機である。
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読了: Chib & Greenberg (1995) Metropolis-Hastingsアルゴリズム解説

Chib, S., Greenberg, E. (1995) Understanding the Metropolis-Hastings Algorithm. American Statistician, 327-335.

 MCMCの古典的手法であるMetropolis-Hastingsアルゴリズムについての解説。Hitchcock(2003) によれば、この手法の普及させる立役者となった論文なのだそうだ。
 現在では日本語でも優れた解説が山のようにあるのに、いまになってこれを読んでいるのは無駄なような気もするんだけど… なんとなく目を通してしまった。
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読了: Okada (1995) 消費者は購買を正当化しなければならない、そのせいでこんなことが起きる

Okada, E.M. (1995) Justification Effects on Consumer Choice of Hedonic and Utilitarian Goods. Journal of Marketing Research, 42(1), 43–53.

 仕事で読んだ論文。
 内容のメモは別の形でとったので省略するけれど…

 たとえばレストランのデザートメニューに、おいしそうだけどカロリー高めのやつともう少し低脂肪のやつがあるとして、もしどっちかしか載ってなかったらそれを頼むけど(カロリー高めだからやめとこうということにはならないけど)、両方載ってたら後者を選んじゃうでしょう?
 あるいは、高いカメラを買うとき、「離れた店で同じカメラがもっと安く売ってるよ」といわれたとして、必要に迫られてではなくて趣味で買うときのほうが、じゃあそっちの店まで歩くかってことになるでしょう?
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読了: Hitchcock (2003) MCMCの歴史

Hitchcock, D.B. (2003) A History of the Metropolis-Hastings Algorithm. American Statistician, 57(4), 254-257.

 仕事の都合で柄にもなくMCMCについて調べているのだけれど、なにしろ数学の知識がないので到底歯が立たない。いったいボレル測度ってなによ!? どれだけ短期間に値上げできるかってことですか!? (それはぼれる速度だ)

 ついつい現実逃避で、こんなのを読んじゃったりして、メモまでとっちゃったりなんかして…
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読了:伊勢田(2013) ウィッグ史観のなにが悪い?

 調べものをしていて時々思うんだけど、たいていの学術書や論文はイントロで先行研究の限界を指摘する。それはいいんだけど、X学というすでに確立したディシプリンの入門書とか教科書とかのイントロ部分で、それに先行して確立していたディシプリンであるところのY学の限界をいちいち述べていることがあって、あれ、ちょっとうんざりするんですよね。あなたたちは既存体系との比較を通じてしか自らをアイデンティファイできないのかい? いつまで人をディスっているんだい? って思う。具体的にいうと行動経済学の話なんですけど… 素人の感想なので勘弁してください。
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読了: Brennan, Person & Priola (2015) 企業ブランドの内面化を通じた従業員のアイデンティティ形成(あるいは、未来の自己の動員を通じた規律権力の構築)

Brennan, M.J., Persons, E., Priola, V. (2015) Brands at work: The search for meaning in mundane work. Organization Studies, 36(1), 29-53.

 仕事の都合でコーポレート・ブランディングについて調べていて、実証とポエムとセールストークが奇妙に混淆した資料の山にほとほとうんざりしていたんだけど、たまたまこれをみつけ、あまりの面白さに読み耽ってしまった。こんなことをしている場合じゃないのに。
 記録のために書いておくけど、久保田・阿久津・余田・杉谷(2019, マーケティング・ジャーナル)のなかで、阿久津聡さん(有名な先生ですね)が、経営組織論におけるコーポレート・ブランディング研究としてこの論文を例示していたのがきっかけである。ありがとうございます。
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読了: Sanborn & Griffiths (2007) 人間MCMC

Sanborn, A.N., Griffiths, T.L. (2007) Markov Chain Monte Carlo with People. Advances in Neural Information Processing Systems 20 (NIPS 2007).

 しばらく前に読んで衝撃を受けた論文。カテゴリ判断の心理実験を一種のMCMCアルゴリズムとして捉える、という話である。被験者が課題を遂行する際の認知過程をモデル化してMCMCで推定する、という話ではなくて、課題遂行そのものがマルコフ連鎖になっているのである。
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読了:Urde (2013) コーポレート・ブランディングのフレームワークCBIMのご提案

Urde, M. (2013) The corporate brand identity matrix. Journal of Brand Management, 20(9), 742-761.

 仕事の都合で読んだ奴。コーポレート・ブランディングのためのフレームワークを提示するという話。カプフェレのブランド・アイデンティティ・プリズムみたいな壮大なポンチ絵(すいません)のコーポレート版である。
 google様いわく、被引用回数286。
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読了:De’ath (2002) 多変量回帰木のご提案

 Rで決定木・回帰木モデルをつくるとき、標準のrpart::rpart()を使ってもいいし、他にもパッケージが山ほどある。なのに、巷の解説をみると、なぜかmvpartパッケージを使って説明していることが多い。すでに公開停止されたパッケージなのに、なぜか今でも広く使われているように思う。なぜだろう? そんなに使いやすいわけでもないんですけど。
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読了:Therneau, Atkinson & Mayo Foundation (2022) Rのrpartパッケージによる決定木・回帰木の舞台裏

Therneau, T.M., Atkinson, E.J., Mayo Foundation (2022) An Introduction to Recursive Partitioning Using the RPART Routines. Octover 21, 2022.

 決定木・回帰木を提供するRの標準パッケージrpartのビネット。たまにこのパッケージを使うとき、パラメータの意味を忘れちゃってて混乱するので、このたび目を通した。
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読了:Chessa & Murre (2007) ブランド認知と広告の動的関係を長期記憶の数理モデルで説明してご覧に入れよう

Chessa, A.G., Murre, J.M.J. (2007) A Neurocognitive Model of Advertisement Content and Brand Name Recall. Marketing Science, 26(1),130-141.

 仕事の都合で読んだ奴。 メモは別のところで取ったので省略。

 いや、これは面白かった。掲載誌はマーケティング分野だが、著者らはオランダの心理学者。第二著者が長期記憶の数理モデルを開発している。貯蔵が2つあって、記憶痕跡の強度がそれぞれ指数減衰するんだけど、2つめのほうが減衰率が小さく、ある確率でリハーサルが起きて貯蔵1の記憶が貯蔵2に移る、というの。ああ懐かしのアトキンソン-シフリン。二重貯蔵モデルってやつですね。ここでは短期記憶と長期記憶じゃなくて、両方長期記憶なんだけど。
 で、第二著者はこれをひっさげて、健忘とかレミニセンス・バンプとか(←自伝的記憶の有名な現象の名前。十数年ぶりに目にしたぜ)、なんかそういうのを説明して回っているらしい。知らんけど。有名な方なんですかね?そうでもないんですかね?
 で、このたびは広告の記憶についても説明して見せましょう、という論文である。
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読了:Naik, Prasad, Sethi (2008) ブランド認知の競争モデル

Naik, P.A., Prasad, A., Sethi, S.P. (2008) Building Brand Awareness in Dynamic Oligopoly Markets. Management Science, 54(1), 129-138.

 これも仕事の都合で読んだ奴。内容メモは別のところに取ったので省略。
 題名に競争っぽいワードが入っているし、キーワードにdynamic gamesなんて書いてあるし、うわあ出た、ゲーム理論が出てきた… と夜道で幽霊にあったような悲鳴を上げ(だってむやみに難しいじゃないですか、ああいうの)、放り出していたのであった。しかし仕事とあらば仕方が無い。覚悟を決めて恐る恐る読んでみたところ、個々のプレイヤーのモデルにおいて意思決定変数は完全に外生だし、ナッシュ均衡解を求めはするけれども完全情報下の解というリアリティのないもので、実証データとの突き合わせはしない。単に均衡解を観察して教訓を引き出すだけ。拍子抜け。幽霊の正体みたり普通のモデル… という感じであった。むやみにびびってはいかんですね。
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読了:Naik, Mantrala, Sawyer (1998) 広告の動的モデルで、広告効果のwearoutをモデル化する

Naik, P.A., Mantrala, M.K., Sawyer, A.G. (1998) Planning Media Schedules in the Presence of Dynamic Advertising Quality. Marketing Science, 17, 214-235.

 仕事の都合で読んだ奴。なんでも記録しておかないと忘れてしまうので、ここに書いておく。

 内容メモは別のところで書いたので省略。要するに、Nerlove-Arrowモデル(広告の動的モデルの定番)の、広告効果の係数を時変させ、wearoutを明示的に表現するという話である。目的変数は売上ではなくて広告認知。
 そんなん、ad stock項で広告出稿を累積しておいて、反応関数をシグモイド型にしておけばいいんじゃない? わざわざ係数を時変させるのって面倒くさくない? などと思うわけだが、ちゃんと明示的に表現した方がいいってことなんでしょうね。

読了:Balmer & Gray (2003) コーポレート・ブランドとはなにか

Balmer, J.M.T., Gray, E.R. (2003) Corporate brands: what are they? What of them? European Journal of Marketing, 37, 972-997.

仕事の都合で目を通した奴。題名通り、コーポレート・ブランドについての解説である。Google Scholar上の被引用回数は1714件。第一著者はこの分野の偉い人らしい。
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読了:Kivetz (1999) 心的会計と理由ベース選択のこれまでとこれから in 1999

Kivetz, R. (1999) Advances in Research on Mental Accounting and Reason-Based Choice. Marketing Letters, 10(3), 249-266.

 仕事の都合で読んだ奴。Google様的には被引用件数239。
 いま調べたところ、1999年にフランスで開かれた Choice Symposium というのが元になった特集号の論文の一本。他のも面白そうだ。でもなあ、24年前だしなあ…
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