Donovan, A.W. (2005) Yield Management in the Airline Industory. Journal of Aviation/Aerospace Education & Research. 14(3).
航空業界のイールド・マネジメントについての紹介。
掲載誌については全く見当がつかないのだが、発行元はEmbry-Riddle Aeronautical Universityというところ。なんかこうディプロマ・ミルみたいなところだったらやだなあと思って検索してみたところ、航空・宇宙工学の名門中の名門、Wikipediaによれば「空のハーバード」と呼ばれている大学なのだそうだ。大変失礼いたしました。
内容のなかからちょっとだけメモしておくと…
航空業界のイールド・マネジメントの戦略とは、要するにオーバーブッキングと割引配分である。
後者の典型的な考え方は以下の通り。顧客をビジネスとレジャーにわけ、座席をそれぞれ向けにあらかじめ分けてしまう。たとえばエアバスA320には156席あるんだけど、それを割引で売る座席と正規価格で売る座席に分けてしまうのである。前者の数をbooking limit, 後者の数をprotection levelという。
この配分をどう決めるか。いま、protection levelがQ+1 でまだ満席になっておらず、booking limitがレジャー客で満席になり、さらにレジャー客が現れて、もう一席だけ割引価格で売って下さいよ、と言い出したとしよう。protection levelをQに縮小すべきか? この場合、割引価格が規定価格x(1-規定価格での需要席数がQ以下である確率) を上回ったら縮小する、下回ったら縮小しない、というのが正解である。「規定価格での需要席数がQ以下である確率」は、その路線の過去数ヶ月の搭乗日別販売座席数の累積分布を出して推定すればよろしい。
ごく単純にいえば、この理屈で最適なprotection levelを決めることができるのだが、実際には以下の要因により話が複雑になる。
- 過去実績だけで需要推定しているわけにも行かない。曜日とか季節性とイベントとかあるし、消費者の選好もどんどん変わるし。
- 156席をすべて同一クラスで売るとは限らない。また、航空会社は行き先別の席数を変更することもできる。
- 需要に合わせてbooking limitを動的に変動させることができる。
- 顧客セグメントが固定されているとは限らない。レジャー客が正規料金で買っちゃうこともある。
- hub-and-spokeシステムをとる航空会社にとっては、単一の路線だけを最適化しているわけにはいかない。
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なるほど… 私のような素人向けのごく表層的な解説なんだろうけど、頭が整理されました。個々の座席の価格を搭乗日に向けて動的に最適化する問題というよりは、裏で座席数を細かいbucketに分けておいて、bucketのサイズを時系列的に調整する問題だと考えればいいわけね。なるほど。