読了: Clark, Doraszelski, Draganska (2009) 多数のブランドのパネルデータによれば、広告支出はブランド認知を高めるが知覚品質を高めるわけではなさそう

Clark, C.R., Doraszelski, U., Draganska, M. (2009) The effect of advertising on brand awareness and perceived quality: An empirical investigation using panel data. Quantitative Marketing and Economics, 7, 207-236.

 著者らについてはよく知らないが、ラストの人は広告や価格知覚の研究でみたことがある(スタンフォード大の先生らしい)。掲載誌のグレードについても私にはよくわからないが、Google様的には被引用回数246件、なかなかのものである。

1. イントロダクション
 [ざーっと目を通しては見たが、どうにも頭に入ってこないので、この節のみほぼ逐語訳する]

 [広告費というのはすごく大きいという話があって…]
 消費者がブランドを選ぶためには、まずブランドが選択集合のなかに入らなければならず、次に他のブランドよりもそのブランドが選好されなければならない。広告はこの2条件のどちらかないし両方を促進しうる。
 本研究は、広告がこれら2条件にどのように影響するかを実証的に調べる。2つをわけるため、多数のブランドについて、そしてその知覚価値について、消費者が持っている情報のレベルを実際に測定する。

 使うデータはパネルデータセットで、ブランドレベル年間広告支出と、大規模消費者調査データを結合したものである。調査では対象者にブランドの認知と品質を訊いている。[…]
 認知スコアは、ブランドの存在と利用可能性について消費者がどの程度知らされているかを測っている。それはブランドが選択集合に入りうる程度を直接に捉えている。
 品質評価指標は主観的な垂直差別化の程度を測っている。つまり、消費者がブランドがより良いものだと知覚している程度である。従って我々のデータは、消費者知識の2つの重要な次元と、広告との関係を調べることを可能にする。
 マーケティング分野での行動研究は、この2次元について、考慮集合と選好の相対強度という観点から注目してきた。もちろん、広告は消費者知識の他の側面にも影響しうる。水平差別化とか[…]。

 広告が消費者選択に影響するチャネルを理解することは研究者にとっても実務家にとっても大事である。
 たとえば、大市場における市場集中についてのSuttonのboundsは、暗黙のうちに、広告は知覚品質を変えることで消費者のWTPを増すと仮定している。利益は知覚品質によって増大するけれどもブランド認知によって減少するかもしれないので広告競争激化は停止するというのが内生的サンクコスト理論の核心である[←??? 知識不足で文意が取れない…]。
 さらにDraszelski & Markovich (2007)によれば、小さな市場においてさえ、産業ダイナミクスは広告の性質によって異なりうる。
 実証的観点からは、需要モデルを推定する際、広告は選択集合に影響するものとしてもモデル化できるし、消費者がブランドから引き出す効用に影響するものとしてモデル化できる。もし広告の役割を誤って特定し、本当はブランド認知に影響するのに(そうであることが多い)、品質知覚(すなわち選好)に影響するものとして特定してしまうと、パラメータ推定値にはバイアスが生じる。[…]

 我々は実証分析のために動的推定フレームワークを構築する。ブランド認知と知覚品質を、広告への反応として時間をかけて構築されたストックとみなす[Nerlove-Arrowモデルでいうgoodwillのことね]。同時に、消費者が加工の広告キャンペーンを忘却したり、古いキャンペーンが新しいキャンペーンに上書きされたりするのに伴い、これらのストックも減衰すると考える。従って広告は、ブランド認知と知覚品質への投資と考えられる。
 広告とは動的な性質を持つものなので動的パネルデータモデルを組む。このモデルを推定するにあたり、我々は次の2つの重大な問題に取り組むことになる。すなわち、ブランド間の未観察な異質性と、広告の潜在的な内生性である。以下で説明しよう。

 ブランドを通じた広告効果を推定するにあたり、広告効果が多くの点で異なるという点に留意する必要がある。広告支出と知覚品質・認知ストックの両方に、未観察の諸因子が影響する。そのせいで、広告の効果について見かけ上の正の推定値が得られてしまうかもしれない。別の言い方をすると、もし我々が広告のある効果を検出したとして、その効果が因果的なのか、見かけ上のものなのかどうか確信できない。つまり、広告支出をふやせば認知・知覚品質が高くなるのかもしれないし、ブランドが違えばストックも違うし支出もちがうというだけかもしれない。[…]
 先行研究の多くは、広告支出と知覚品質の関係を理解するためにクロスセクショナルデータを使い、消費者がブランドの品質についての推論を広告支出に基づいて行っているという考え方を検証しようとしている。しかしクロスセクショナルデータでは、未観察なブランド間異質性を考慮するのが難しい。実際、ブランド間の永続的な差を無視すれば、ブランド認知と知覚品質はともに広告支出と正の相関を持つということになり、以前の研究が再現される。しかしパネルデータをフル活用して未観察な異質性を考慮すると、知覚品質に対する広告支出の効果は消える。

 我々の推定方程式は、ブランドの知覚品質・認知の現在のストックを左辺、過去のストックと自社・競合の広告支出を右辺において、両者の間の動的関係を表す。この文脈では、次の2つの理由で内生性が生じる。(1)従属変数はすべての過去の誤差項と相関するので内生的である。その結果、伝統的な固定効果モデルは一致性をもたない。(2)広告支出もまた経済的理由で内生的かもしれない。[…]
 この内生性問題を解決するため、動的パネルデータ法を用いる。この方法は強い外生説明変数(道具変数)を必要としない。[…]さらに、これらの方法は一階差分化を含んでいるので、広告支出と知覚品質・認知ストックの両方に影響し、広告の効果についての見かけ上の正の推定値を生み出してしまうような未観測因子をコントロールすることが可能になる。付け加えると、我々のアプローチでは、ストックに影響しうる広告以外の因子も、それが時間を通じて一定である限りは許される。[← 実物をみせてくれないとわからない…]

 我々の主な知見は次のとおり。
 広告支出はブランド認知には有意に正の効果を持つが知覚品質にはそうでない。この結果はいろんなモデル特定化を通じてロバストであると思われる。認知は消費者がブランドについて持つもっとも基礎的な種類の情報であろう。我々は、広告のひとつの重要な役割とは情報準備 information provisionだと結論する。
 我々の結果は、広告は消費者の品質知覚を変えないようだということを示している。この結論は、Suttonの内省的サンクコスト理論の暗黙的仮定に再検討が必要であることを示唆している。また、需要推定に際して、広告を効用だけではなく選択集合に影響するものとしてモデル化すべきであることを示唆している。
 最後に、我々の知見は、広告が一般に競争促進的であるという見解を支持する。というのは、広告は製品の存在、価格、属性についての情報を消費者に広めるからである。
 [本論文の構成]

[こうして逐語訳してみてわかったが、知識不足で理解できないのは研究の経済学的な含意について説明しているくだりである。内生的サンクコスト理論とか、需要モデルにおける広告のモデル化の話とか。逆に言うと、それ以外の部分は理解できる。よーし、びびらずに先に進みましょう]

2. モデル
 Nerlove-Arrowモデルを拡張する。拡張点は、(1)ストックが競合の広告にも影響されること、(2)広告がストックに及ぼす効果に確率的要素をいれること。

 \(t\)期におけるブランド\(i\)の知覚品質ストックを\(Q_{i,t}\), 認知ストックを\(A_{i,t}\)とする。
 [論文中に一切説明がないという不親切さなので、勝手に推測するけど、ブランド\(i\)の\(t\)期の売上を\(Y_{i,t}\)、価格を\(P_{i,t}\)、その他の制御できない変数を\(Z_{i,t}\)として、$$ Y_{i,t} = f(Q_{i,t}, A_{i,t}, P_{i,t}, Z_{i,t})$$と考える、ということであろう。ただし、この研究におけるアウトカムはあくまで\(Q_{i,t}, A_{i,t}\)であり、ふつうのN-Aモデルとはちがっていずれも測定変数なのである。だから売上とか価格とかは使わないし、このN-Aモデルを推定するわけじゃない。なんだかなあ、この論文ほんと不親切だな]
 \(t-1\)期の広告支出を\(E_{i,t-1}\)とする。競合全てのベクトルを\(E_{-i,t-1} = (E_{1,t-1}, \ldots, E_{i-1, t-1}, E_{i+1, t-1}, \ldots, E_{n,t-1})\)とし、その平均を\(\bar{E}_{-i, t-1}\)とする。

 すごく一般的に、$$ Q_{it} = g_{it}(Q_{i,t-1}, E_{i,t-1}, E_{-i, t-1}, \epsilon_{it}) $$ $$ A_{it} = h_{it}(Q_{i,t-1}, E_{i,t-1}, E_{-i, t-1}, \epsilon_{it}) $$ と書ける。[えええ? 撹乱項は等しいわけ? 知覚品質と認知は別のものなのに、そういうモデル化ってありなんだろうか… ]

 競合広告の効果を2通りにモデル化しよう。(1)ブランドのシェア・オブ・ボイスとして、\(E_{i, t-1}\)の\(\bar{E}_{-i, t-1}\)に対する相対的大きさを使う。(2)市場全体の広告費として、\(\bar{E}_{-i, t-1}\)を使う。
 というわけで、もう少し特定して $$ Q_{it} = \mu_i +\lambda_t + \gamma Q_{i,t-1} + f(E_{i,t-1}, \bar{E}_{-i, t-1}) + \epsilon_{it} $$ $$ A_{it} = \mu_i +\lambda_t + \gamma A_{i,t-1} + f(E_{i,t-1}, \bar{E}_{-i, t-1}) + \epsilon_{it} $$ [うーん、本気だろうか。これ、初期値\(Q_{i, 0}, A_{i, 0}\)が等しければ常に\(Q_{i,t} = A_{i,t}\)になるじゃないですか]

 推定において、我々はすべてのパラメータが式の間で異なることを許す。たとえばキャリーオーバー率が知覚品地質とブランド認知の間で同一だとは仮定しない。[やっぱり! 勘弁してよ、もう… きちんと書くと $$ Q_{it} = \mu^Q_i +\lambda^Q_t + \gamma^Q Q_{i,t-1} + f^Q(E_{i,t-1}, \bar{E}_{-i, t-1}) + \epsilon^Q_{it} $$ $$ A_{it} = \mu^A_i +\lambda^A_t + \gamma^A A_{i,t-1} + f^A(E_{i,t-1}, \bar{E}_{-i, t-1}) + \epsilon^A_{it} $$ って感じなのね? そうなんですね先生!]
 
 広告支出に対する反応を表す関数\(f(\cdot)\)について。いろいろな定式化を試す。たとえば、競合を無視して単純に定式化するならば$$ f(E_{i,t-1}) = \beta_1 E_{i, t-1} + \beta_2 E^2_{i,t-1}$$ [なぜに二次関数…まあいいけどさ]。シェア・オブ・ボイスなら$$ f(E_{i,t-1}) = \beta_1 \left( \frac{E_{i, t-1}}{\bar{E}_{-i, t-1}} \right) + \beta_2 \left( \frac{E_{i,t-1}}{\bar{E}_{-i, t-1}} \right)^2$$ カテゴリ広告費なら$$ f(E_{i,t-1}) = \beta_1 E_{i, t-1} + \beta_2 E^2_{i,t-1} + \beta_3 \bar{E}_{-i, t-1}$$ というふうに。

3. 推定戦略
以下の戦略をとる。

  • pooled OLS (POLS). 式の\(\mu_i\)を取っ払ってOLSで推定する。
  • fixed effects (FE)。ブランド別に平均を引く。[うーん、パネルデータ分析の知識が足りなくて、いまいち理解できないけど、これだと異質性は考慮できてる、でも内生性は考慮できてないってことらしい]
  • difference GMM(DGMM)。動的パネルデータの分析手法のひとつ。[説明が書いてあったけどよくわかんないし、勉強するなら別の資料がよさそうだから、今回はパスしよう。まあとにかく、広告支出の道具変数があるときみたいな推定ができるんだそうな]
  • system GMM (SGMM)。DGMMの改良版。

[DGMM, SGMMの妥当性の検証みたいな話。パス]

4. データ
 2000-2005のBrandweek Superbrands調査というのに載っている、各カテゴリのトップブランドを使う。
 知覚品質と認知: Harris InteractiveによるEquitrendブランドエクイティ調査の結果を使う。[調査設計についての説明。パス]
 広告支出: TNS Media Intelligence and Competitive Media Reportingより。
 以上をあわせて、19カテゴリ348ブランドについて分析する。6年間、延べ期数は1478。
 [記述統計。パス]

5. 実証的結果
 [力尽きたので丸ごとスキップ]

6. 考察
 広告支出は認知には効くが知覚品質には効かないことが示された。[…]
 本研究は広告の役割を解明するために計量経済モデルを適用した先行研究の補完・一般化である。先行研究では、広告には情報的な広告と説得的な広告があると考えられてきた。しかし情報の量を特定するのは難しいので、かわりに「既存ユーザに効くのは説得的広告だけ」という仮定が用いられていた。
 […]
 我々の分析は広告支出、ブランド認知、知覚品質の短期的関係に焦点を当てている。長期的には、広告は知覚品質に効くかもしれない。とはいえ、我々のデータだって6年分あって、短期的関係とはいえ結構長いけど。
 我々の知見は、広告が売上にあまり効かないという謎を解く鍵になるかもしれない。広告が知覚品質に効かないとしたら、WTPにも効かないだろう。いっぽう広告は競争を促進し価格を押し下げる。だから売上に効かないのかもしれない。今後の課題である。
 云々。
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 書き方が不親切すぎて切れそうになった。ちょっとさあ、頭が良かったらなにを書いていいってもんじゃないでしょう? あんたたちより頭が悪い奴だって読むかもしれないのよ。もっと親切に書いて下さいよ、親切に!
 
 要するに、たくさんのブランドからなるパネルデータを使い、認知と知覚品質に広告支出が効くかどうか、最新のパネルデータ分析手法で調べました、という話であった。くそう。イントロで風呂敷を拡げるから、どんなすごい話になるかと思っちゃったじゃんか。Nerlove-Arrowモデルは別に関係ないじゃんか。まったくもう…