読了:Leone, et al. (2011) プライシング研究の書誌学的分析

Leone, R.P., Robinson, L.M., Bragge, J., Somervuori, O. (2011) A citation and profiling analysis of pricing research from 1980 to 2010. Journal of Business Research, 65(7), 1010-1024.

 仕事の都合で調べ物をしていて目を通した奴。タイトルの通り、pricingに関連する論文の書誌学的分析である。

1. イントロダクション
[略]

2. 方法
2.1 データ
 マーケティング・ビジネス系のジャーナル20誌に1980-2010年に載った、タイトルか要旨かキーワードに”price”か”pricing”がはいっている論文を片っ端から集め、なんらか価格について語っているかどうかを目でチェック(従ってたとえばMMMの論文もはいる)。2372本となった。これを博士課程の院生が読みまくり、これってpricingの論文じゃないねというのをはじいた。1945本。
 被引用回数top100の論文のリストを作り、プライシング研究者3名に送りつけ、追加した方がいいのがあったら教えて、と頼んだ。2本追加があり、理由を調べたらSSCIデータベースの名寄せがうまくできてなくて…云々… [さすがに面倒くさくなって読み飛ばした]
そんなこんなで1945本の論文を分析します。

 [以下、引用分析、research prifilijng (テキストマイニングとか)、etc.について手続きが詳述されている。面白そうなんだけど、いまちょっと関心ないのでパス。いずれ必要になったら読もう… とかいいつつ、きっと読まないだろうけど]

3. 知見
3.1 ジャーナル
 pricingについての論文本数が多いのは、Mktg.Sci., J.Mktg.Res, J.Busi.Res., J.Retailing, Adv.Cons.Res., J.Mktg., Mktg.Let., Int.J.Res.Mktg, Psyc&Mktg., …。被引用回数を集計すると、MS, JMR, JM, JCR, JR, JBR, JAMS, IJMR, ML, PMの順。要はMktg.Sci.が最大手。[…]

3.2 論文
 栄えある被引用回数第1位は、Zeithaml(1988, J.Mktg), 910本です! 年あたり被引用でみてもやはり1位。
 [リストを眺めているとなかなか楽しい。2位はセイラーの心的会計のMS論文。2位はAnderson&FornellのSCSIの論文。これに限らず、顧客満足のような、ガチの価格研究ではない奴が結構含まれている]
 分析対象のうち26%の論文は非引用回数1件以下であった。[2010年の論文はここに集まるんだろうけど、それにしても多いよね、はっはっは]

3.3 著者
 本数や被引用回数で上位に君臨しているのは、Grewal, Monroe, Zeithamlなど。[セイラーさんも上位に上がっている。日本人の姿はない]
 共著関係で著者のネットワークを描くと…[パスするけど、ここは業界についての知識があったら盛り上がっちゃうところうだろうな]

3.4 組織
[パスするけど、表によればシカゴ大が1位らしい。ほぼUSで占められているなあ… あ、INSEADは入っているけど]

3.5 サブジェクト
[パス。表によれば、論文の3割くらいは消費者行動論で、マーケティングモデル、流通、販促、広告、新製品開発…と続く]

4. インプリケーション
 被引用回数が多い論文に注目するといろいろ仕事が捗るのではないでしょうか。MBAコースの先生とかのお役に立つのではないかと思います。著者のひとりはMBAコースで学生にこのデータベースを渡してレビューさせてます。
 サブジェクトをみると、やっぱりここ数年の注目はインターネットですね。云々。

5. 要約
[略]
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 想像がつく話だけれど、主要著者のリストに日本人の姿はない。日本で神様みたいに超有名な先生であっても国際的にはそんなに有名じゃないわけだ。皮肉でもなんでもなく、爽やかな風が吹き抜けていくような感じがしますね。権威を相対化できるというのは良いことだと思う。
 細かいことだけど、著者ネットワークの視覚化にものすごく紙面を割くいっぽう、サブジェクトの時間変化は単純な集計表で済ませちゃう、というところが不思議であった。研究レビューという観点からは大事なのは中味のほうじゃないかなあ? この表をコレポンとかで視覚化すればいいのにね。まあ、どうでもいいんですけど。