読了:Gabor & Granger (1964) 消費者の価格感受性について調べましょう

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1964) Price sensitivity of the consumer. Journal of Advertising Research, 4(4), 40-44.

 消費者調査でいうところの価格調査(価格感受性についての調査)をめぐる議論では、Gabor-Granger法という縄文式土器くらいに古めかしい方法が、いまだに引き合いに出されることがある。その元論文として引用される論文のひとつ。学会発表の準備のために目を通した。
 実際に読んだのは、1979年にManagement Decisionという雑誌に再録されたもの。たぶん内容は同じだと思う。

 調べたところ、André Gaborは英国の経済学者で、1990年に死去。ものすごく有名な人というわけではなさそうだけど、J. Economic Psychologyの追悼記事の要旨には価格研究のパイオニアと書かれている。
 第2著者のC.W.J. Grangerとは、なんと、グレンジャー因果性で知られるあのノーベル経済学賞受賞者グレンジャーである。実は以前、若い同僚に「Gabor-Granger法のGrangerって経済学者のグレンジャーですか」と訊かれて、そんなわけないじゃん!と一笑に付したことがあったのだ。いやあ、お恥ずかしい、ごめんなさい。
 google scholar上では、Management Decisionのほうの被引用回数が39件。本家のほうは古すぎて出てこないようだが、もし被引用回数を数えたらとんでもないことになりそうだ。

 なにしろ1964年の論文なので、読む側も現代の浅薄な精神を捨て、新古今和歌集と向かい合うような典雅な気持ちで読まなければならないだろう。というわけで、ですます体でメモする。

(イントロダクション)
 プライシングの主な方法が3つあります。

  • 主競合の価格をコピーする。さすがにこの方法はすぐに却下されるでしょうね。
  • コストに標準的利幅を載せる。ある人によればこれは良い小売マーチャンダイジングのアンチテーゼなのだそうです。
  • backward costing。標準的価格から事前に決めた粗利益を引いて許容されるコストを決め、それに合わせて製品をつくる。この方法もまた、良い価格決定方法とは限りません。標準的価格が適切でないかもしれないからです。

 消費者の主観的な価格の尺度は対数尺度に似ていて、ある価格変化は高価な製品よりも安価な製品でより強い効果を持ちます。経済学者の言い方では需要の弾力性は一定であり、心理学者の言い方ではWeber-Fechner則に似ています。
 また、消費者の価格感受性はある価格から急に高くなります。

価格感受性を測る
 価格決定に際してはむしろ、潜在的消費者の価格感受性を測り、もしそれが高いならば、社会経済的下位集団ごとに価格受容性の範囲を検討すべきでしょう。
 そこで私たちは、Stoetzel(1954), Adam(1958)[どちらも仏語文献]に従い、価格受容性を調べる方法を考えました。それを使った結果はGabor & Granger (1961) をみてください。
 ここでは次の2点について議論したいです。

  • 価格感受性は製品間で大きく異なる。
  • ある切りの良い数字round figures のすぐ下に価格を固定することの効率性。

 まずひとつめについて。
 [価格感受性ではなく、特定製品の価格再生課題についての紹介。価格感受性の高さは価格の認知を前提にするはずだ(逆はいえないけど)、という理屈である。Gabor & Granger(1961)と、アメリカの雑誌?がやった調査とを比べている。製品によって再生成績の高低があり、それは購入頻度では説明できない、云々]
 価格再生において変動があるということは、価格変化に対する感受性にも同様の変動があると考えられます。もっとも、価格について完全に知っている顧客が必ずもっとも安い価格で買うとも言い切れません。[…ぐちゃぐちゃ書いてあって文意をとりづらい…]

良い価格と悪い価格
 ふたつめについて。
 Just-below-the-right-figure価格は広く用いられています。私たちの1958年の未公刊の調査でも…
 [特定製品について横軸に価格、縦軸に%who would buyをとったときの曲線を示して議論している。調査は「買う」「高すぎて買わない」「安すぎて買わない」の3件法でやっているらしい。面倒くさくなってきたのでメモは省略するけど、Just-below-the-right-figure価格に対する選好というのはそういう値付けがされていることを学習した製品についてのみ生じるアーティファクトで、そういう値付けをしてない製品で生じないんだ、とかなんとか]

(結論)
 というわけで、価格感受性は製品の性質と価格設定政策によって変動する。ビジネスマンのみなさん、価格決定の伝統的な方法を信じてはいけません。キャンペーンに投資する前に、提案価格に対する顧客の態度を調べなさい。
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 予期してはいたけれど、古い学術論文って書き方が現代と違っていて、非常に読みづらい…
 本文中に出てくる英国の価格表記がややこしいのにも困惑。12ペニーが1シリング、20シリングが1ポンドだったそうだから、Just-below-the-right-figure価格の例としてあげられている4/11ってのは「4ポンド11シリング」のことなんでしょうね。