読了: Burlison & Oe (2018) ストア・パトロネージ研究レビュー

Burlison, J., Oe, H. (2018) A discussion framework of some image and patronage: A literature review. International Journal of Retail & Mamagement, 46(7), 705-724.

 仕事の都合で目を通した奴。store patronageについての文献レビュー。store patronageってのは、日本語では「ストア・パトロネージ」と書くことが多いようだが、要するにあれだ、店舗ロイヤルティみたいなもんであろう(雑な言い方でスイマセン)。
 Google様いわく、被引用件数41件。第二著者は現在は日本の大学の先生らしい。

1. イントロダクション
1.1 本研究の背景
 消費者は店舗の魅力に貢献するいろんな要因について評価し、その店舗についての知覚を形成し、それによってstore patronageと店舗イメージが心のなかに作られる。どうすればstore patronageをうまいこと構築できるか。この問題は研究者らを引き付けてきた。以下をみよ。[入手できそうなやつだけメモする]

  • Stephenson(1969 J.Mktg.)
  • Jolson & Spath(1973 J.Retailing)
  • Arnold et al.(1983 JMR)
  • Kelly & Smith (1983 Adv.Cons.Res)
  • Erdem & Oumlil(1999 Int.J.Retail & Distribution Management)
  • Ogle et al.(2004 Enviroment & Behav.) [えええ? 環境心理の雑誌じゃんか。ひょっとして、店舗イメージってリンチの「都市のイメージ」みたいな研究領域の延長線にあると考えることもできるわけ?]
  • Yavas & Babakus(2009 Int.J.Retail & Distribution Management)
  • Maruyama & Wu (2014 J.Retailing & Cons.Services)

1.2 目的
本研究は(1)過去50年の学術研究をレビューして、(2)小売のマーケティング戦略構築のためのフレームワークを提供し、(3)store patronage拡張のための便利なツールを提供する。

2. 方法
2.1 概要
[略]

2.2 データソースと研究選択
[どうやって論文を集めたか。略] … というわけで863本の論文についてレビューします。

3. 理論的検討
3.1 店舗イメージ
 店舗イメージの定義は明確でないんだけど […歴史的レビュー。メモ省略…] Lindquist(1974 J.Retailing)は機能的な要因と心理的な要因の組み合わせだといっている。
 store imageに影響する要因は下の8つにわけられる。前半の3個が機能的、後半の5個が心理的。それぞれが含む下位要因を合わせて示す。

  • Machandise. 小売が提供する財・サービスを反映する。Quality, Selection Assortment, Styling & Fashion, Gurantee, Pricing。
  • Promotion. 象徴的行為を含む。Sales promotion, Advertising/Display, Advertising, Trading stamps, Symbols and colors。[4つって書いてあるぞ。間違えてAdvertisingを2回書いてしまったか、5つの誤記だろう]
  • Physical facilities. 内的・外的環境の影響を示す。physical facilities, store layout, shopping ease, architecture。
  • Service. 顧客が経験するintangibleな相互作用。general service, sales clark service, self-service, ease of return, credit, delivery, phone orders。
  • Convinience. 店舗へのアクセス容易性。convenience, location, parking.
  • Clientele. 従業員・利用者のタイプの影響。social class appeal, self-image congruency, store personnel. [なるほどね、そういう要因もあるね、気が付かなかった。私、たまに紀ノ国屋スーパーに入ったりすると実に落ち着かない気持ちになるが、自己イメージと合わないからだろうな]
  • Atmosphere. 親しみやすさの感覚。congeniality. [ここでいうatmosphereってのは、要は顧客との相性ってことですかね。おそらく店内が明るいといったtangibleな要因はphysical facilitiesにいれるのだろう]
  • Institution. 店舗のinner workings. Conservation/Modern, Reputation, Reliability.

[過去の24本の論文について、8要因のどれを扱っているかの星取表が載っている。面白い。いちばんよく扱われているのがMarchandise, いちばん扱われていないのがInstitutionalだそうだ。そうなの?むしろClienteleとかInstitutionalに注目した研究があるほうがびっくりだよ]

3.2 store patronage
 Baker et al.(2002 J.Mktg.)いわく、消費者は(1)いろんな独立変数を一気に評価し、(2)「店舗の雰囲気」といったジェネリックな変数にまとめ、(3)なんらかのリアクションを生成する(あの店にはもう行かない、とか)。
 store patronageは複雑な問題なんだけど、次の点については合意がある。まず、低価格製品の提供は売上を高めてstore patronageを高める。しかし製品情報が乏しいときは価格が知覚品質を決めるので、逆にstore patronageも被低くなる。こういう風に、store patronageの予測子というのは明確でない。店舗訪問時の欲求が多様だからである。
 [ここでも星取表が示されている。表側を勝手に整理すると、店舗要因としてはProduct Quality, Service, Price, Store atmosphere, Store attitude, Store Image, Shopping orientation, Sales tax, Hedonic value, Fast checkout, Confidence. 個人要因としてSex, Income, Age, Race, Perceived risk, Marial status, Education. ]

 Osman(1993 Int.Rev.Retail,Distribution&Cons.Res.)いわく、顧客の期待を小売が満たすか越えるかすればロイヤルティは高まる。[…中略するけど、Burt & Callarero-Encinas(2000 Int.Mktg.Rev.), Britwisle et al.(1999 Int.Rev.Retail,Distribution&Cons.Res.)というのが紹介されている…]
 というわけで、store patronageのパラメータとして、顧客の店舗イメージとマネージャーの店舗イメージの整合性と、過去購入経験を挙げることができる。
 store patronageに影響する、整合性や過去購入経験の諸側面もいっぱい挙げられている[また星取表が示されている]。
 […中略…]

3.3 store patronage変数の概観
 まとめると、store patronageに影響する独立変数は主に次の8つだ: product quality, service, selection, store atmosphere, price, age, sex, atore attitude.
 前述のBaker et al.(2002)に従い、3つのステージを考えることができる。

  1. store enviroment. つまり、店舗が顧客に与える全体的なフィーリング。social factor, design factor, ambient factorからなる。
  2. store choice criteria. すなわち、対人サービス品質の知覚、マーチャンダイズ品質の知覚、価格知覚、時間/労力コスト知覚、psychicコスト知覚。
  3. 行動。

4. 分析に際しての測定についての命題
4.1 店舗イメージ
 過去の研究から、店舗イメージの重要な要素を重要順に並べてみると…[メモは省略するけど、styling/fascing, convenience, acces to self-serviceが上位3つ]。
 もっとも、時代による変化というのもあって…[面倒くさくなってきたので読み飛ばした]

4.2 store patronage
 store patronageに影響する要因についてはあまり合意がない。[…いくつか研究が挙げられている…]
 最近はデジタルでの製品提示が小売店舗への感情的反応にどう効くかという研究もあって[…中略…]

4.3 消費者のpatronage行動における店舗イメージの影響
 [小売にとって店舗イメージが大事だという話。メモ省略…] 店舗イメージはpatronageの要因でもある。
 学術研究での最近の話題として店舗の環境的手がかりがある。[なんのことだろう? Verma(2012 Amity Management Review)というのが挙げられている]
 […中略…]

5. 結論
5.1 全体的知見と含意
 […中略…]
 多くの研究は店舗イメージとstore patronageを別々に扱っていて、全体論的な分析プラットフォームがない。顧客/マネージャーの店舗イメージ整合性と顧客の過去購入経験という2つのパラメータに焦点を当てた分析ツールが有用であろう。

5.2 限界
 文献レビューに留まっている。実証分析が必要。

5.3 リコメンデーション
 みなさん、これまで注目されてこなかった未知の要因についても研究しましょう。また、グローバル化時代では、いろんな文化的条件下の店舗イメージについて検討しないといけませんね。云々。
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 話の流れを見失ってしまったところが多いんだけど(ちゃんと読んでないせい)、でも勉強になりました。店舗イメージの規定要因を整理するところとか。

 本文中で触れられていなくて意外だったのだが、store patronageとstore loyaltyっていったいどうちがうんだろうか。どっちも、態度で定義する場合と行動で定義する場合がありますよね? 測定上の操作的定義も似たようなもんですよね? 要するに、あの店が好きだとか、あの店によく行くとか、ですよね? 結局のところどう違うの?
 清水(1989)によれば、この2つは研究の目的がちがっていて、store patronageは購買回数とか最近購入とかで定義され、好意度の理由を捉えることを目的にしているのに対し、store loyaltyは店舗セットに占める購入割合とか継続的購買とかで定義され、店舗選択の理由を捉えることを目的にしているのだそうだ。いっぽう中野(2016)は、本稿では同じ意味です、といっている。