論文」カテゴリーアーカイブ

読了: Zhang, et al. (2025) LLMエージェント・ベース・モデルSocioVerse

Zhang, X., et al. (2025) SocioVerse: A World Model for Social Simulation Powered by LLM Agents and A Pool of 10 Million Real-World Users. arXiv:2504.10157

 LLMにエージェントをやらせたエージェント・ベース社会シミュレーションというのは最近論文がいっぱい出ていて、仕事の都合で読み漁っていたのだけど、なんだか疲れてしまった。むりやり思い出して一本だけメモしておく。
 内容のメモは他のところでとったので省略。えーっと、これはなんだったっけ… そうそう、SNSの実アカウントに対応するLLMエージェントを1000万体作って持ってますよという話だ。

読了: Gao, et al.(2024) LLMエージェント・ベース・モデリング・レビュー

Gao, C., Lan, X., Li, N., Yuan, Y., Ding, J., Zhou, Z., Xu, F., Li, Y. (2024) Large language models empowered agent-based modeling and simulation: a survey and perspectives. Humanities & Social Science Communications. 11:1259.

 LLMエージェントを導入したエージェント・ベース・モデリングについてのレビュー。
 内容のメモは他の形でとったので省略。このテーマについてのレビュー論文は他にも何本か出ていて、このたび読み比べてみたのだが、この論文が他を圧倒する出来であった。いま気が付いたんだけど、掲載誌はNatureが出しているのね。へー。

読了: Arora, et al. (2025) デプス・インタビューやサーヴェイ調査をLLMで代替するためのガイドライン

諸事情により、ここんとこLLMの社会科学系の応用についての論文を読みまくっていた。わりかしきちんと読んだ奴をいくつか思い出してメモしておく。

Arora, N., Chakraborty, I., Nishimura, Y. (2025) AI–Human Hybrids for Marketing Research: Leveraging Large Language Models (LLMs) as Collaborators. Journal of Marketing, 89(2), 43-70.

 マーケティング・リサーチにおける調査対象者のLLM代替についての提案論文。
 メモは他のかたちで取ったので省略。定性調査(デプス・インタビュー)の対象者のLLM代替や、分析者のLLM代替まで視野に入れているところがポイントである。実証研究としてはかなりしょぼいのだが、そういう主旨の論文ではないというのもよくわかる。

読了: Li, et al. (2024) シリコン・サンプリングで知覚マップを再現

Li, et al. (2024) Determining the Validity of Large Language Models for Automated Perceptual Analysis. Marketing Science, 43(2), 254–266.

 しばらく前に読んだ奴。えーと、これ、まだここに記録してなかったよね… もう記録しているのに俺が忘れちゃってるわけじゃないよね… (疑心暗鬼)

 シリコン・サンプリング(調査対象者のLLMによる代替)の実証研究のひとつ。既存ブランドの知覚マップを再現する。
 内容については別のところで要約を作ったので省略。マーケティング・リサーチ分野での調査課題のなかで、いちばんLLM代替がうまくいきそうな課題を選んだねえ、というのが感想でありました。

読了: Cloud, et al. (2025) LLMのサブリミナル学習

Cloud, A., Le, M., Chua, J., Betley, J., Sztyber-Betley, A., Hilton, J., Marks, S., Evans, O. (2025) Subliminal Learning: Language Models Transmit Behavioral Traits Via Hidden Signals In Data. arXiv:2507.14805

 そうそう、これも読んだのを記録し損ねていた。LLMの「サブリミナル学習」なる現象を報告し話題を呼んだプレプリント。内容は別のところでメモしたので省略。興味深い内容であった。

追記: うわあ!これ、もう記録していたよ… すっかり忘れてた。俺、もうだめかもしれない…

読了: Argyle, et al. (2022) シリコン・サンプリング

最近バタバタしていて、なにかに目を通しても記録する気力がない。ここしばらくの間に読んだ論文を思い出しつつメモしておくと…

Argyle, L.P., Busby, E.C., Fulda, N., Gubler, J., Rytting, C., Wingate, D. (2023) Out of One, Many: Using Language Models to Simulate Human Samples. Political Analysis, 31(3), 337-351.

 シリコン・サンプリング(調査対象者のLLMによる代替)の初期論文。著者らは政治学者。
 メモは別のところでとったので省略。シリコン・サンプリングの未来はこの論文が主張するほどバラ色ではないと思うけれど、初期の実証研究として名を残すことになるだろう。

読了: Dall’Olio & Vakratsas (2023) 広告クリエイティブ戦略と広告効果の関係

Dall’Olio, F., & Vakratsas, D. (2023). The Impact of Advertising Creative Strategy on Advertising Elasticity. Journal of Marketing, 87(1), 26–44.

 仕事の都合で目を通した。広告クリエイティブが広告の効果にもたらす影響についての観察研究。

 こういうのって、巨大なコードブックを使って各クリエイティブを山のような変数についてコーディングし、モデルに全部ぶちこむんだろうと思っていたのだが(そういう研究ありますよね? あんまし読む気にならないけれど)、この研究は「まず広告クリエイティブ戦略のフレームワークを作りました」という話で、変数もメッセージ面が3個、形式面が9個しかない。そこのところに関心を惹かれた。
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読了: Cloud, et al. (2025) LLMのサブリミナル学習

Cloud, A., Le, M., Chua, J., Betley, J., Sztyber-Betley, A., Hilton, J., Marks, S., Evans, O. (2025) Subliminal Learning: Language Models Transmit Behavioral Traits Via Hidden Signals In Data. arXiv:2507.14805

 この7月末に公開され大いにバズッたらしきプレプリント。ちょっと検索するだけで、この論文を紹介するブログ記事が山のようにみつかる。ついでにいうと、最近はブログでの論文紹介は全く読まなくなってしまった。どうせ生成AIで書いたんだろ、と思うと急速に読む気が失せてしまうのである。なぜだろう、不思議だ。AIに任せた方が的を得た要約になるかもしれないのにね。
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読了: Wang & Praet (2016) 広告メッセージ戦略の分類 in 2016

Wang, L., & Praet, C.L C. (2016). Message Strategy Typologies: A Review, Integration, and Empirical Validation in China. In P. Verlegh, H. Voorveld, & M. Eisend (Eds.), Advances in Advertising Research, VI. 201–213.

 これも仕事の都合で目を通したやつ。広告クリエイティブ戦略のうちメッセージ戦略(what to say)について分類を提案する論文。著者らは小樽商大の先生らしい。
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読了: Laskey, Day, & Crask (1989) 広告メッセージ戦略の分類

Laskey, H. A., Day, E., & Crask, M. R. (1989). Typology of Main Message Strategies for Television Commercials. Journal of Advertising, 18(1), 36–41.

いわゆる広告クリエイティブ戦略のうちメッセージ戦略(what to say)について分類を提案する論文。仕事の都合でざーっと読んだ。
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読了: Yoshida, Tsukatsune, Niida (2020) webページが表示されないことのメンタルモデル

Yoshida, H., Tsukatsune, K., Niida, S. (2020) Analysis of mental model of users with network mulfunction. Human Interface and the Management of Information. Designing Information (HCII 2020).

 仕事の都合で読んだやつ。
 個別のデバイスについてのユーザのメンタルモデルを調べる研究はたくさんあると思うけれど、インターネットのような大きなシステムについてのメンタルモデルを調べたのはないかなあと思い、たまたま見つけて目を通した。情報コミュニケーション技術(ICT)の動作不全に対するユーザのメンタルモデルを調べますという話。KDDI研究所におられた方々による発表らしい。
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読了: Sugasawa & Kubokawa (2020) 混合モデルによる小地域推定のレビュー

Sugasawa, S., Kubokawa, T. (2020) Small area estimation with mixed models: a review. Japanese Journal of Statistics and Data Science. 3, 693–720.

 勉強のためにめくったやつ。小地域推定という地味な分野にも、なんか新しい展開とかあるんじゃないかなと思って。
 小地域推定のうち混合モデルを使う手法についてのレビュー論文(小地域推定の多くの議論は混合モデルに基づくので、ほぼ小地域推定レビューといえよう)。第二著者は「現代数理統計学の基礎」の著者の先生であろう。
 2章が基礎、3章が分散推定の話。4章が本題である。
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読了: Smith, Pettigrew, Pippin, & Bialosiewicz (2012) 相対的剥奪研究レビュー

Smith, H.J., Pettigrew, T.F., Pippin, G.M., Bialosiewicz, S. (2012) Relative Deprivation : A Theoretical and Meta-Analytic Review. Personality and Social Psychology Review, 16(3), 203-232.

 街を歩くと憂鬱になる。あちこちに目につくオレンジ色の選挙ポスター。ついに日本にも極右ポピュリズムの高波が押し寄せてきた。欧州諸国のニュースをみるに、いつかはそのときが来ると頭ではわかっていたのだが、世情の変化は想像を超えて速い。これから見たくないものをたくさん見なければならないだろう、という絶望感がある。
 あの人たちの主張に対してはどうかしているとしかいいようがないし、オレンジ色の政党そのものはいずれ別の何かに代わるかもしれないけれど、その背後にある人々の「大事なものを奪われた」という感覚は、これからの社会を突き動かし、毒し続けるだろうと思う。私にできることはあまりないけれど、せめてこれから起きることを少しでも理解したいものだ、とあれこれ思いあぐね、相対的剥奪に関するレビュー論文に目を通した。心理学のリジッドな実証研究に目の前の生々しい現象についての示唆を期待するのは、ちょっと筋違いかなという気もするんだけど。
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読了: Godambe & Thompson (1986) 推定関数理論からみた超母集団パラメータと調査母集団パラメータ

Godambe, V.P., Thompson, M.E. (1986) Parameters of Superpopulation and Survey Population: Their Relationships and Estimation. International Statistical Review, 54(2), 127-138.

 有限母集団特性の推定の話を読んでいるとときどき出てくる、推定関数・推定方程式という考え方がどうにも理解しにくく、悔しい思いをしている。腹立ちまぎれに、標本抽出論の解説書Arnab (2017) の該当章を読んでみたんだけど、やはりよくわからない。よし、原典に戻ってみよう! 逐語訳に近いレベルでメモを取れば俺にだって少しはわかるだろう! と思って、Godambeさんの論文を読んでみた。無謀だなあ。
 短い論文だが、たぶん当該領域の重要文献だと思う。google様曰く被引用回数238。
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読了: Yang, Kim, & Song (2020) 非確率標本に基づく二重頑健推定の際の共変量選択法

Yang, S., Kim, J.K., Song, R. (2020) Doubly robust inference when combining probability and non-probability samples with high dimensional data. Journal of the Royal Statistical Society Series B: Statistical Methodology, 82(2), 445–465.
 
 非確率標本と確率標本があるとき、前者をうまいことウェイティングしましょうとか、前者でモデルを組んで後者にあてはめて母集団特性を予測しましょうといった方法があるけれど、最近ではその延長線上に、両方やって二重頑健推定しましょうという話もある。ひゅー、かっこいい、今流行りの因果推論みたいだ。私も市場調査みたいな地味な仕事じゃなくて、web広告の最適化とかでぶいぶいいわせられるかもしれない。よーし転職してタワマンの上の方に住んで港区女子と不倫するぞ! (←貧困なイメージ)
 まあとにかくそういうとき、かつ、共変量がたくさんありすぎて困っちゃうとき(どんどんSFっぽくなっていくね)、罰則付き回帰で変数選択するぞ、という論文。
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読了: Arnab (2017) 推定関数とはなにか

Arnab, R. (2017) Estimating Function. in “Survey Sampling Theory and Applications“, Chapter 22. Academic Press.

 有限母集団推定の話を読んでいると、ときどきGodambeの推定方程式アプローチというのが出てきて、話のポイントが全然つかめず困惑することがある。いらいらしてきたので教科書的な説明を探して読んでみた。著者とこの書籍についてはまったく初見だが、標本抽出についての難しめの教科書である模様。
 全部で23ページあるが、読むのは前半の14ページ。
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覚え書き: James-Stein推定量の全MSEは標本平均のそれよりも小さい

 多変量正規分布の母平均ベクトルのJames-Stein推定量は、誤差二乗和の観点から見て標本平均に優越している。これはあっちこっちに書いてある有名な話だが、証明をいくら読んでもピンとこなかった。
 このたび業を煮やし、真剣に考えた。
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読了: Samworth (2020) Steinのパラドックス

Samworth, R.J. (2020) Stein’s paradox. Eureka, 66.

 スタインのパラドクスについての短い解説。掲載誌はthe Mathematical Society of Cambridge Universityの発行で、学会誌というより親睦団体の会報みたいなのだと思う。
 パラドクスの証明(母平均ベクトルのJames-Stein推定量の誤差の二乗和の期待値が標本平均のそれより小さいという証明)が別の補題とかを使わずに半頁で示されていて、こんなにコンパクトに証明できるのか! と感心したんだけど、読んでみたら、全然むずかしいよ、これ。多変量正規分布を積分するんだけど、途中でしれっと変形しているところがからきしわからない。ChatGPTくんにPDFを渡し、延々問い詰めてようやく理解できたけど、著者はわからせようと思ってないんじゃなかろうか。頭のいい奴らってほんとに信用できない!

読了: 松田(2021) 縮小推定と優調和性

松田孟留(2021) 縮小推定と優調和性. 応用数理, 31(4), 7-14.

 題名の通り、縮小推定についての解説。母平均ベクトルのベイズ推定量は事前分布がどんなんだと許容的になるかとか(優調和性という性質があるといいんだってさ)、行列の縮小推定とか。正直、内容の8割は理解できなかったが、これは私が背伸びしすぎだからである。
 参考書としてSpringerから出ているFourdrineir, Strawderman, & Wells(2018) “Shrinkage Estimation”というのが挙げられていた。たまたま原著を手に取る機会があったのでめくってみたら、少なくとも最初のほうはなんとか読めそうな感じであった。あれで勉強すればいいのかな。

読了: Schonlau & Couper (2017) Web調査虎の巻 in 2017

Schonlau, M., Couper, M.P. (2017) Options for Conducting Web Surveys. Statistical Science. 32(2), 279-292.

 非確率標本の傾向スコア調整の文脈でときどき引用される論文。ついでに目を通しておこうという主旨で手に取ったのだが、正直、この話題にちょっと飽きかけている。
 著者らの名前からもわかるように、この論文は統計学というより調査方法論の論文で、数式はほとんど出てこない。
 → いま気が付いたけど、この雑誌のこの号はComplex Surveys特集号。というか、私はこの特集号の存在にとっくに気づいていて、イントロと収録論文2本にすでに目を通しているではないか。笊で水を汲んでいるようなものだな…
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