論文:マーケティング」カテゴリーアーカイブ

読了: Drolet & Wood (2017) 消費者行動論における習慣研究

Drolet, A. & Wood, W. (2017) Introduction to Special Issue: The Habit-Driven Consumer. Journal of the Association for Consumer Research, 2(3), 275–278.

 仕事の都合でパラパラめくってたやつ。
 この雑誌のこの号は習慣研究の特集号で、これはそのイントロ。たった4ページだけど、なんだか論旨をよみとりにくかったのでメモをとった。まあ、すべての掲載論文を均等に引き合いに出すという大喜利みたいな文章なので、そんなに真剣に読んでも仕方ないんだけど。でも、こういう一歩引いた巨視的な概観というのは、初学者にとってはありがたいものである。
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読了: Vosgerau, Scopelliti, Huh (2019) 消費者が実用品より快楽品を選んだからといってセルフ・コントロールに失敗しているとはいえないのではないですか?

Vosgerau, J., Scopelliti, I., Huh, Y.E. (2019) Exerting Self-Control (not equal) Sacrificing Pleasure. Journal of Consumer Psychology, 30(1), 181-200.

 ぜいたく品購買の正当化について調べていてたまたま見つけた論文。食品消費におけるセルフコントロールについての理論的主張論文である。
 この雑誌にはResearch Dialogueという、招待論文と数人のコメントと返答をまとめて載せる企画があるようで、この号には、企画趣旨説明(Aradhna Krishnaさんによる)、この論文、LambertonとMochon & Schwartzという人のコメント、コメントへの返答が載っている模様。最初の説明をざっとみたところ、コメンテーターとの間で鋭い意見対立があるわけではなさそうなので、ま、これだけ読んでおけばいいかな。
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読了: Xu & Shuwarz (2009) 理由のないぜいたくをすると罪悪感のせいで心から楽しめないだろうな、と私たちは思うけど実際にはそうでもない

Xu, J., Schwarz, N. (2009) Do We Really Need a Reason to Indulge? Journal of Marketing Research, 46(1), 25-36.

 調べ物の一環で読んだやつ。てっきりぜいたく消費の正当化の論文かと思ったんだけど(題名からはそう思いますわね)、ちょっと毛色の変わった問題設定で… 途中から面白さに気づきメモを取った。
 あとで気が付いたんだけど、第二著者は調査法研究のシュワルツじゃん! そうか、本業は感情の認知的研究の人だもんね。マーケティング領域でも身体化認知の論文とか書いてたし。
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読了: Mukhopadhyay & Johar (2009) 前に買うのを我慢したことが、今回のぜいたくを正当化する

Mukhopadhyay, A., & Johar, G.V. (2009) Indulgence as self-reward for prior shopping restraint: A justification-based mechanism. Journal of Consumer Psychology, 19, 334-345.

 仕事の都合で読んだやつ。無関係なぜいたく品購買機会のあいだで生じるダイナミクスの話。第一著者の博論とのこと。
 消費者購買行動の研究で、お金を快楽的に無駄遣いしたり高カロリー食品を買っちゃったりすることをindulgenceというのだけれど、良い訳語が見当たらない。「放縦」というのも硬すぎてわかりにくいし…

 時間の都合で実験の部分をとばして読んだ。いずれメモを取りなおそう。いずれっていつだよ… → 実験の部分のメモを追記しました。

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読了: Okada (2001) 消費者の買い替え決定における下取りの効果を心的会計できれいに説明する

Okada, E.M. (2001) Trade-ins, Mental Accounting, and Product Replacement Decisions. Journal of Consumer Research, 27(4), 433-446.

 ちょっと都合があって読んだ。耐久財の買い替えの意思決定についての、心的会計の観点からの実験研究。著者の先生は前に読んだ購買正当化についての論文の著者で(あれは美しい実験研究であった)、謝辞によればこの論文はPenn U.での博論(ちょっと待って、じゃ購買正当化の論文は修論とかだったの?)。現在は一橋大の先生らしい。
 前の論文でも感心したんだけど、これまた、実にスマートな論文で…
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読了:Redine, Deshpande, Jebarakakirthy, Surachartkumtonkun (2023) 衝動購買研究システマティック・レビュー

Redine, A., Deshpande, S., Jabarakakirthy, C., Surachartkumtonkun, J. (2023) Impulse buying: A systematic literature review and future research directions. International Journal of Consumer Studies, 43, 3-41.

 衝動購買研究のシステマティック・レビュー。183本の論文を集計している。
 きちんと読めてないけど、整理の都合上読了にしておく。メモは他の形で取ったので省略。

 個人的な読みどころは理論的枠組みによる分類であった。
 さあ、目を閉じて、衝動購買の研究がどういう理論に基づいてなされているかを想像してみましょう。本数カウントだと、一番多いのはきっと個人差研究、ビッグ・ファイブとかだろう。横断調査一発で研究できるからお手頃だ(すいません)。認知過程の研究だったら… あ、解釈レベル理論が絶対出てくるな、消費者行動の研究ときたら猫も杓子も解釈レベルなんだから(すいません)。そうだなあ、きっと精緻化見込みモデルとかも出てくるだろう。。。
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読了: Skwara (2023) 購買意思決定過程における心的会計の研究のシステマティック・レビュー

Skwara, F. (2023) Effects of mental accounting on purchase decision processes: A systematic review and research agenda. Journal of Consumer Behavior, 22, 1265-1281.

仕事の都合で読んだ。心的会計と購買意思決定についてのシステマティック・レビュー。
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読了: Ulu, Honhon, & Alptekinoglu (2012) 品揃え実験で消費者の好みを推定しようとする小売業者の動的最適品揃えモデル

Ulu, C., Honhon, D., Alptekinoglu, A. (2012) Learning consumer tastes through dynamic assortments. Operations Research, 60(4), 833-849.

 研究会でお世話になっている経済学の先生が面白がっておられたので、ダメモトで読んでみた論文。
 自分が決めた品揃えの下での売上を観察することを通じて消費者の選好を推測し、長期的な利益を最大化しようとするメーカーだか小売だかの最適品揃えモデルを提案している研究。数値例は出すけど、実証研究ではない。
 google様いわく、被引用件数82。どうなんだろう、掲載誌に照らせば、それほど多くも少なくもないって感じかな。
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読了: Suzuki, Hamamura, Takemura (2019) 感情制御方略としての無節制消費

Suzuki, S., Hamamura, T., Takemura, K. (2019) Emotional fortification: Indulgent consumption and emotion reappraisal and their implication for well-being. Journal of Consumer Behavior, 18(1), 25-31.

 都合により目を通した論文。ぜいたく消費が感情制御というか気分修復の方略として用いられていて、その点でwell-beingに寄与しうる、という話。google様いわく、被引用回数14件、うーん、ちょっと寂しい。
 第一著者は一橋大の先生らしい… あ、ご褒美消費についての面白い本を書いた方だ! 全然気が付かなかった。
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読了: Burns & Perkins (1996) 購入に失敗した人の説明フローチャート

Burns, D.J., Perkins, D. (1996) Accounts in post-purchase behavior: Excuses, justification and meta-accounts. J. Consumer Satisfaction, Dissatisfaction and Complaining Behavior, 9.

 そうそう、これも記録するのを忘れていた。聞いたこともない学術誌?に載った、なんだか不思議な論文? で、google様いわく被引用件数9件という寂しさである。
 商品の購入後、購入に失敗したことが明らかであるような場面で、人がどういう説明をするかのフローチャートを提案します(証拠いっさいなしで思弁的に)、という内容。まず自分の責任の切り離しを試み、それが無理なら結果のネガティブ性を最小化し、それが無理なら説明の拒否などを行うであろう、とのこと。

読了:Heath, Tynan, & Ennew (2015) 「自分へのご褒美」消費についての本人の説明

Heath, T.P., Tynan, C., & Ennew, C. (2015) Accounts of self-gift giving: nature, context and emotions. European Journal of Marketing, 49(7/8), 1067-1086.

 都合により読んだ論文。「自分へのご褒美」消費についての質的研究である。インタビューをたくさんやって、感情への効果とか、今後の研究枠組みとかについて論じている。
 メモは別のところでとったので省略。しっかし、洋の東西を問わず、質的研究は方法論に関する能書きが多くて面倒くさい… (すいません)

読了: Cian, Longoni, & Krishna (2020) 痩せる前後の写真を並べた広告より、痩せる前と痩せていく途中と痩せた後の写真を並べた広告のほうが効く(ただし鼻づまりスプレーだと逆になる)

Cian, L., Longoni, C., Krishna, A. (2020) Advertising a desired change: When process simulation fosters (vs. hinders) credibility and persuation. Journal of Marketing Research, 57(3), 489-508.

仕事の都合で読んだやつ。広告におけるメンタル・シミュレーション研究である。最後の著者はセンサリー・マーケティングで有名なAradhna Krishnaさん。
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読了: Helveston (2023) 選択課題の個人レベル多項ロジットモデルをふつうのパラメータ化と「WTP空間」パラメータ化の両方で高速に最尤推定するRパッケージlogitr

 先月、コンジョイント分析の実験計画をRで作る方法についてのメモを作ってたんだけど(我ながらマニアックな話だ…)、そのきっかけになったのはRの cbcTools というパッケージをみつけたからであった。メモを公開したら、このパッケージの作者の方にコメント頂いたりして(機械翻訳で読んで下さったのだそうだ)、誠に恐縮でございました。一円の儲けにもならないけど、なんだかちょっと嬉しいですね。
 で、この方が作っている別のパッケージについて解説を眺めていたら、冒頭でいきなり「そうそう!そうなのよ!」と膝を叩くような話が出てきて…

Helveston, J.P. (2023) logitr: Fast Estimation of Multinomial and Mixed Logit Models with Preference Space and Willingness-to-Pay Space Utility Parameterizations. Journal of Statistical Sofware, 105(10).
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読了: Agrawal & Maheswaran (2005) たとえば製品への評価がその製品に与えられた賞とかによって影響されてしまうことがあるけれど、どんな動機づけのもとでそうなりやすいか

Agrawal, N., Maheswaran, D. (2005) Motivated reasoning in outcome-bias effects. Journal of Consumer Research, 31, 798–805.

 仕事の都合でmotivated reasoningについて調べている際に手に取って、最初のパラグラフを読んだ瞬間に「これは読みたいのとちがう…」と思った奴なんだけど、せっかくなので最後まで目を通した。
 Google様いわく被引用数107。

 簡潔に書きすぎていてちょっと不親切な論文だと思うのだが、ここでいう帰結バイアスoutcome biasというのは、たとえば製品について評価する際、その製品そのものについてちゃんと調べて考えるのではなく、その製品のもたらしたなんらかの結果(「いま売れてます」とか)でもって評価してしまうバイアスのことである。そのバイアスがどんな動機づけの下で強くなったり弱くなったりするか、というのがお題である。
 イントロで事例を挙げてくれるとわかりやすいのにね。
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読了: Heyman & Mellers (2008) 価格が公正であると思われるのはどういうときか

Heyman, J.E., Mellers, B. (2008) Perceptions of Fair Pricing. Haugtvedt, C.P, Herr, P.M., & Kardes, F.R. (eds) “Handbook of Consumer Psychology“, Chap.27.

 価格の公正性の知覚についての解説。オフィスの本棚で幅を占めているわりにはあまり役に立ったことがない消費者心理学のハンドブックのなかに、価格に関する章がいくつかあることに気づき、ためしに読んでみた。
 イントロダクションと結論の2節しかないというなかなか斬新な構成である。見出し行が落ちているのかも。
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読了: Gabor & Granger (1966) 品質の指標としての価格

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1966) Price as an Indicator of Quality: Report on an Enquiry. Economica, 33(129), 43-70.

 先日読んだ Gabor & Granger (1964)に引き続き、価格感受性測定の超・古い論文に目を通した。
 古い論文は、書き方が風雅すぎて困ってしまう…
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読了: Burlison & Oe (2018) ストア・パトロネージ研究レビュー

Burlison, J., Oe, H. (2018) A discussion framework of some image and patronage: A literature review. International Journal of Retail & Mamagement, 46(7), 705-724.

 仕事の都合で目を通した奴。store patronageについての文献レビュー。store patronageってのは、日本語では「ストア・パトロネージ」と書くことが多いようだが、要するにあれだ、店舗ロイヤルティみたいなもんであろう(雑な言い方でスイマセン)。
 Google様いわく、被引用件数41件。第二著者は現在は日本の大学の先生らしい。
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読了:Gabor & Granger (1964) 消費者の価格感受性について調べましょう

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1964) Price sensitivity of the consumer. Journal of Advertising Research, 4(4), 40-44.

 消費者調査でいうところの価格調査(価格感受性についての調査)をめぐる議論では、Gabor-Granger法という縄文式土器くらいに古めかしい方法が、いまだに引き合いに出されることがある。その元論文として引用される論文のひとつ。学会発表の準備のために目を通した。
 実際に読んだのは、1979年にManagement Decisionという雑誌に再録されたもの。たぶん内容は同じだと思う。
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読了:Leone, et al. (2011) プライシング研究の書誌学的分析

Leone, R.P., Robinson, L.M., Bragge, J., Somervuori, O. (2011) A citation and profiling analysis of pricing research from 1980 to 2010. Journal of Business Research, 65(7), 1010-1024.

 仕事の都合で調べ物をしていて目を通した奴。タイトルの通り、pricingに関連する論文の書誌学的分析である。
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読了: Jagpal & Spiegel (2011) 無料サンプル配布と市場構造・ゲーム戦略

Jagpal, S., Spiegel, M. (2011) Free samples, profits, and welfare: The effect of market structures and behavioral modes. Journal of Business Research, 64, 213-219.

 仕事の都合で製品サンプリングについて調べていて読んだ奴。サンプリング活動の効果の実証研究ではなく、ゲーム理論による規範的研究である。
 正直、タイトルの段階で「これは読みたいのと違う…」って思ってたんだけど、なんとなく目を通してしまった。仕事からの逃避かもしれない。
 google様いわく、被引用関数16。す、少ない…
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