論文」カテゴリーアーカイブ

読了: Payne, Bettman, & Johnson (1988) リスク下選択の方略は時間圧力のような文脈特性・課題特性によって適応的に変わる

Payne, J.W., Bettman, J.R., Johnson, E. (1988) Adaptive Strategy Selection in Decision Making. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. 14(3), 534-552.

 仕事の都合で大慌てで読んだやつ。情報ボード法による情報探索実験の論文である。
 まさかのJEP:LMC。まさかこのトシになって、我ながらよくわかんない仕事で生計を立てつつ、なぜか80年代のJEP論文を読んでおるとは。若いころの自分が知ったらどう思うのだろうか。(どう思うのかもなにも… どっかから飛び降りてるよね)
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読了: Berger & Tille (2009) 確率不均一な標本抽出

Berger, Y.G., Tille.Y. (2009) Sampling with Unequal Probabilities. Handbook of Statistics, Vol. 29A. Sample Surveys: Design, Methods and Applications. 39-54.

 ポアソン抽出みたいな感じの標本抽出についてあれこれ調べていたんだけど、基礎知識が足りないのに論文ばかり読んでいても… と思って、試しに読んでみたやつ。
 これもぼやきになっちゃいますけど、標本抽出論っていったいどこで学ぶんだ? 皆目見当がつかない。
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読了: Sever & Salehi (2013) 逆抽出デザインのための推定量

Seber, G.A.F., Salehi, M.M. (2013) “Adaptive Sampling Design: Inference for Sparse and Clustered Populations.” Springer. Chapter 5. Inverse Sampling Methods.

 ちょっと関心があって、適応的抽出デザインについてのモノグラフ(全6章)を読んできた(1章, 2章, 3章)。いよいよ、この本を読み始めた目的である第5章、逆抽出についての解説である。
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読了: Ohlsson (1998) 系列ポアソン抽出

Ohlsson, E. (1998) Sequential Poisson Sampling. Journal fo Official Statistics, 14(2), 149-162.

 いまやっている調べ物のついでに読んだやつ。標本サイズを固定した確率不均一抽出デザインのひとつ、系列ポアソン抽出を提案した論文である。
 標本抽出法について調べていると、考案したあなたしか使ってないんじゃないかというようなマイナーな新手法提案がちらほらあるんだけど、この論文はgoogle様曰く被引用回数116。実際に現役の抽出デザインだと思う。
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読了: Seber & Salehi (2013) 適応的抽出デザインに関心があるおまえが学ばなねばならないRao-Blackwell化

Seber, G.A.F., Salehi, M.M. (2013) “Adaptive Sampling Design: Inference for Sparse and Clustered Populations.” Springer. Chapter 3. Rao-Blackwell Modifications.

 適応的抽出デザインについてのモノグラフの第3章。実をいうと5章の逆抽出についての章を読みたいだけなんだけど、いきなり読んでも訳が分からないので最初から目を通している次第である。
 出たよ、Rao-Blackwellの定理… 恥ずかしながら、このあたりの話が理解できたためしがない。そもそも数学がからきしだめだから文系の学部に行ったのに、なんでこの年になってこんな目にあっているのだろうか。憂鬱だなあ。
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読了: Seber & Salehi (2013) 適応的クラスタ抽出デザイン、そして適応的抽出デザインでの母平均推定量

Seber, G.A.F., Salehi, M.M. (2013) “Adaptive Sampling Design: Inference for Sparse and Clustered Populations.” Springer. Chapter 2. Adaptive Cluster Sampling.

 適応的抽出についてのモノグラフ、全6章のうちの第2章。適応的クラスタ抽出についての章だが、この抽出デザインが主題というより、この抽出デザインを題材として適応的抽出の際の主要な推定量を導出する、という主旨だと思う。
 苦手分野だけど、たったの12ページだ。がんばろう! と気合をいれて…
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読了: Seber & Salehi (2013) 適応的標本抽出デザインの世界へようこそ

Seber, G.A.F., Salehi, M.M. (2013) “Adaptive Sampling Design: Inference for Sparse and Clustered Populations.” Springer. Chapter 1. Basic Ideas.

 適応的な標本抽出についての70ページくらいのモノグラフの第一章。
 著者らが書いた別の資料を読んでいて、理屈が全くわかんなかったので(特にMurthey推定量というのがわからんかった)、勉強のために読んでみた。不得意分野でもあることだし、細かくメモを取るぞ!と気合を入れて読み始めたのだが、まだイントロなもので、あんましややこしい話はない。
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読了: Greco & Naddeo (2007) 抽出確率が不均一な逆抽出デザインでの母合計推定量

Greco, L., Naddeo, S. (2007) Inverse Sampling with Unequal Selection Probabilities. Communications in Statistics: Theory and Methods. 36, 1039-1048.

 いま調べていることの足しになるかなと思ってめくったやつ。抽出確率が確率不均一な逆抽出デザインでの母合計推定の話。Google様いわく、被引用件数18件。さみしい。
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読了:Datta & Polson (2022) 標本調査におけるIPW推定量からモンテカルロ法におけるIPW推定量へ

Datta, J., Polson, N. (2022) Inverse Probability Weighting: from Survey Sampling to Evidence Estimation. arXiv:2204.14121v2.

 IPW推定量についての解説だというので、勢い込んでめくってみたんだけど、調査データ分析とか因果推論とかじゃなくて、シミュレーションの話で出てくる、重点サンプリングっていうの? ああいう角度からの話であった。わたくし、そういう難しい話ってよくわかんないので、なけなしの関心がかろうじて維持できた部分についてのみメモする。
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読了: Tille (2016) 包含確率が不均一な逆抽出

Tille, Y. (2016) Unequal probability inverse sampling. Survey Methodology, 42(2), 283-295.

 3年位前からずっとあれこれ思い悩んでいた問題があって、このたびその問題について自分なりにまとめた説明を作っていて、たまたま見つけた関連論文をなにかの足しになるかなと思って眺めていたところ、不意に、これじゃん! と気が付いた。一見そうは見えないけれど、まさにこれこそが自分が抱えている問題ではないか。ぞわぞわっと鳥肌が立ち、慌ててきちんと読み始めた。

 マーケティング・リサーチにおけるささやかな問題について悩んでいるはずだったのに、なんということでしょう、まさかの標本抽出法の論文である。できれば関わり合いを持ちたくない分野だ。
 二段目がポアソン抽出の逆抽出であるような標本抽出法についての解説。カナダにJob Vacancy and Wage Surveyというのがあり、そこでの標本抽出を例に挙げている。著者は先日読んだ標本抽出についての論文の著者である。
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読了:Herbison, et al. (2011) 臨床試験における「二重盲検化したといってはいるが実はいい加減な手続き」によるバイアス

Herbison, P, Hay-Smith, J., Gillespie, W.J. (2011) Different methods of allocation to groups in randomized trials are associated with different levels of bias. A meta-epidemiological study. J. Clinical Epidemiology, 63, 1070-1075.

 読み始めてすぐに「これは俺が探しているものではない…」と気が付いてしまったのだが、面白半分に読み終えてしまった。
 臨床試験で、患者を統制群と処置群に割り当てるとき、どちらに割り当てられたかは患者には知らせないわけだが、隠し方が甘いこともあるよね。そういうときどうなるか、というメタ分析。
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読了:Gambino (2009) 「デザイン効果」利用者諸君への注意事項

Gambino, J. G. (2009) Design Effect Caveats. The Americal Statistician, 63(2), 141-146.

 調査データ解析に関してときどき出てくる話題である「デザイン効果」についての資料を探していたら、2009年のAmerican Statisticianに解説が載っているのを見つけた。ありがたや。考えてみれば2009年は最近とはいえないが、話題自体がわりかし古いので、この話題の解説としては新しめであるといえよう。
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読了: Kish(1995) デザイン効果とはなにか

Kish, L.(1995) Methods for Design Effects. Journal of Official Statistics, 11, 55-77.

 調査データ解析のレジェンド、Kish大先生によるデザイン効果の解説。デザイン効果ってのはあれですね、推定量の分散が標本デザインのせいでどれだけ拡大したかってやつですね。調査に関わる多くの人にとってさえ、わりかしどうでもいい話かもしれないが、マーケティング・リサーチにおいては結構深刻な話題である。その深刻さに気付いているかどうかは別にして。
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読了: Ulu, Honhon, & Alptekinoglu (2012) 品揃え実験で消費者の好みを推定しようとする小売業者の動的最適品揃えモデル

Ulu, C., Honhon, D., Alptekinoglu, A. (2012) Learning consumer tastes through dynamic assortments. Operations Research, 60(4), 833-849.

 研究会でお世話になっている経済学の先生が面白がっておられたので、ダメモトで読んでみた論文。
 自分が決めた品揃えの下での売上を観察することを通じて消費者の選好を推測し、長期的な利益を最大化しようとするメーカーだか小売だかの最適品揃えモデルを提案している研究。数値例は出すけど、実証研究ではない。
 google様いわく、被引用件数82。どうなんだろう、掲載誌に照らせば、それほど多くも少なくもないって感じかな。
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読了:田中(2023) 毎月勤労統計の不正な集計に政府・専門家・非専門家はどう反応したか

田中重人(2023) 統計コミュニティは統計不正にどう対応したか:毎月勤労統計調査問題における政府・専門家・非専門家のはたらき. OSF Preprint 2023-11-05.

 別にいま読む必要はないんだけど、なんとなく読みふけってしまった…
 基幹統計のひとつである毎月勤労統計において生じた不正集計問題を振り返る。一般メディアでは事業所の不正抽出問題が大きくクローズアップされたけれど、集計の仕方がおかしいという指摘もあったのです。私は途中まで固唾を飲んで情報を集めていたのだけれど、「一国が衰退するときはあらゆる側面がおかしくなるのだ…」となんだか妙な悟りを開いてしまい、以降は関心が薄れてしまっていた。
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読了: Suzuki, Hamamura, Takemura (2019) 感情制御方略としての無節制消費

Suzuki, S., Hamamura, T., Takemura, K. (2019) Emotional fortification: Indulgent consumption and emotion reappraisal and their implication for well-being. Journal of Consumer Behavior, 18(1), 25-31.

 都合により目を通した論文。ぜいたく消費が感情制御というか気分修復の方略として用いられていて、その点でwell-beingに寄与しうる、という話。google様いわく、被引用回数14件、うーん、ちょっと寂しい。
 第一著者は一橋大の先生らしい… あ、ご褒美消費についての面白い本を書いた方だ! 全然気が付かなかった。
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読了: Shaw, Wild, & Colquitt (2003) 組織における説明の効果のメタ分析

Shaw, J.C., Wild, E., & Colquitt, J.A. (2003) To justify or excuse? A meta-analytic review of the effects of explanations. Journal of Applied Psychology, 88(3), 444-458.

 ちょっと都合があって読んだ論文。説明の効果についてのメタ分析。タイトルからもっと認知心理学的な話を予想していたのだが、組織研究の文脈での話である。レイオフのニュースが流れて社内がざわついているときに経営陣がきちんと説明することの効果、みたいな話であろう。
 google様いわく、被引用件数636件。おおお、意外に多いな。
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読了: Burns & Perkins (1996) 購入に失敗した人の説明フローチャート

Burns, D.J., Perkins, D. (1996) Accounts in post-purchase behavior: Excuses, justification and meta-accounts. J. Consumer Satisfaction, Dissatisfaction and Complaining Behavior, 9.

 そうそう、これも記録するのを忘れていた。聞いたこともない学術誌?に載った、なんだか不思議な論文? で、google様いわく被引用件数9件という寂しさである。
 商品の購入後、購入に失敗したことが明らかであるような場面で、人がどういう説明をするかのフローチャートを提案します(証拠いっさいなしで思弁的に)、という内容。まず自分の責任の切り離しを試み、それが無理なら結果のネガティブ性を最小化し、それが無理なら説明の拒否などを行うであろう、とのこと。

読了: Cheema & Soman (2006) 心的会計は案外柔軟で、望む支出を正当化するために操作される

Cheema, A., & Soman, D. (2006) Malleable Mental Accounting: The Effect of Flexibility on the Justification of Attractive Spending Decisions. J. Consumer Psychology. 16(1), 33-44.

 そうそう、これもしばらく前に読んだんだけど、記録するのを忘れていた。心的会計の実験研究で、カテゴリがあいまいな魅力的購買は支出が正当化されやすいほうにカテゴリ化される、という実験。言われてみれば当たり前の話を小粋な実験で示して有名理論の隙を突く、というタイプの研究である。
 内容のメモは別のところでとったので省略。

読了:Heath, Tynan, & Ennew (2015) 「自分へのご褒美」消費についての本人の説明

Heath, T.P., Tynan, C., & Ennew, C. (2015) Accounts of self-gift giving: nature, context and emotions. European Journal of Marketing, 49(7/8), 1067-1086.

 都合により読んだ論文。「自分へのご褒美」消費についての質的研究である。インタビューをたくさんやって、感情への効果とか、今後の研究枠組みとかについて論じている。
 メモは別のところでとったので省略。しっかし、洋の東西を問わず、質的研究は方法論に関する能書きが多くて面倒くさい… (すいません)