論文」カテゴリーアーカイブ

読了:Gabor & Granger (1964) 消費者の価格感受性について調べましょう

Gabor, A., Granger, C.W.J. (1964) Price sensitivity of the consumer. Journal of Advertising Research, 4(4), 40-44.

 消費者調査でいうところの価格調査(価格感受性についての調査)をめぐる議論では、Gabor-Granger法という縄文式土器くらいに古めかしい方法が、いまだに引き合いに出されることがある。その元論文として引用される論文のひとつ。学会発表の準備のために目を通した。
 実際に読んだのは、1979年にManagement Decisionという雑誌に再録されたもの。たぶん内容は同じだと思う。
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読了:Leone, et al. (2011) プライシング研究の書誌学的分析

Leone, R.P., Robinson, L.M., Bragge, J., Somervuori, O. (2011) A citation and profiling analysis of pricing research from 1980 to 2010. Journal of Business Research, 65(7), 1010-1024.

 仕事の都合で調べ物をしていて目を通した奴。タイトルの通り、pricingに関連する論文の書誌学的分析である。
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読了: Jagpal & Spiegel (2011) 無料サンプル配布と市場構造・ゲーム戦略

Jagpal, S., Spiegel, M. (2011) Free samples, profits, and welfare: The effect of market structures and behavioral modes. Journal of Business Research, 64, 213-219.

 仕事の都合で製品サンプリングについて調べていて読んだ奴。サンプリング活動の効果の実証研究ではなく、ゲーム理論による規範的研究である。
 正直、タイトルの段階で「これは読みたいのと違う…」って思ってたんだけど、なんとなく目を通してしまった。仕事からの逃避かもしれない。
 google様いわく、被引用関数16。す、少ない…
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読了: Moes, Fransen, Verhagen, Fennis (2022) CSR的な広告が道徳的正当化を経由して衝動購買を引き起こす

Moes, A., Fransen, M., Verhagen, T., Fennis, B. (2022) A good reason to buy: Justification drives the effect of advertising frames on impulsive socially responsible buying. Psychology & Marketing, 39(12), 2260-2272.

 しばらく前に読んだ奴。
 メモはほかのところに書いたので省略するけど、消費者による購買の正当化を価値的正当化と道徳的正当化にわけ、それぞれを誘発する広告(自己利益的広告と他者利益的広告)を提示して衝動購買(意向と行動)への効果をみるという話であった。他者利益型のほうが効く、それは道徳的正当化に媒介される、という結果。
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読了: Chandukala, Dodson, & Liu (2017) 製品サンプル配布の効果を観察データから推測する

Chandukala, S.R., Dodson, J.P., Liu, Q. (2017) An Assessment of When, Where and Under What Conditions In-Store Sampling is Most Effective. Journal of Retailing, 93(4), 493-506.

 仕事の都合で読んだ奴。店頭での製品サンプル配布が売上に及ぼす影響をモデル化して既存データからパラメータを推測するという話。
 Google様いわく、被引用件数18件。す、少ねえ…
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読了: Glickman & Jensen (2005) 一対比較の適応的実験計画 by ベイジアン最適計画アプローチ

Glickman, M.E., Jensen, S.T., (2005) Adaptive paired comparison design. Journal of Statistical Planning and Inference, 127, 279-293.

 仕事の都合で一対比較法の実験計画の動的最適化について考えていて(なぜこんな柄にもないことを考えているのか…)、タイトルがそのものずばりだったのでめくってみた。Google様いわく被引用件数73件。この分野では多いのだろうか、少ないのだろうか。

 本論文はあいにくトーナメント戦の設計を考えていて(大相撲の15日間の各日の取り組み表を決めるというような状況)、私が抱えているところの、調査における刺激の心理量の一対比較測定という問題とは、いっけん乖離が著しいのだが、でも本質的には同じ話なんだろうなと思う。
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読了: Geyer (2011) MCMC入門 (前編)

 仕事の都合でMCMCについて考えていて、マルコフ連鎖が目標分布に収束する理由がやっぱりわかんなくなってしまった。説明を読んだときには「よし理解した」と思うんだけど、いざちょっと応用的な問題になると、実は本当はよく理解できていないということに否応なしに気づかされるのである。

Gayer, C.J. (2011) Introduction to Markov Chain Monte Carlo. in Brooks, S., et al. (eds) “Handbook of Markov Chain Monte Carlo“, CRC Press.

 諦めてはなるまい、というので、MCMCについての分厚い論文集の最初に載っている解説の章を読んでみた。
 全17節。さあ深呼吸。
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読了: Hsu, Martin, Sanborn, & Griffiths (2019) 人間MCMC・離散バージョン

Hsu, A.S., Marting, J.B., Sanborn, A.N., Griffiths, T.L. (2019) Identifying category representations for complex stimuli using discrete Markov chain Monte Carlo with people. Behavior Research Methods, 51, 1706-1716.

 最近は仕事の都合で、朝から晩までMCMCのことばっかり考えているんだけど、本論文はSanborn & Griffiths (2007) の後続論文。彼らが考案した測定手法・人間MCMCに焦点を当てた解説論文である。
 掲載誌は、私が院生の頃はBRMICという誌名で、結構トンチキなのが平気で載っていたものであったが… 立派になったねえ…
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読了: 西本・勝又(2018) WTP測定手法の比較(自由回答、第一価格オークション、Vickreyオークション、BDM)

西本章宏, 勝又壮太郎(2018) コンジョイントデザインを用いた消費者のWillingness to Pay測定方法の比較. 流通研究, 21(3), 15-25.

 仕事の都合で読んだ。WTP測定方法を比較する実験。日本でもこういうことをやっている方がおられるのね、ありがたいことであります。
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読了: Sonner, Aislie, & Otther (2007) コンジョイント分析で属性のWTPを推定したいとき、価格の効用を真面目に推定したほうが良いか、いっそ傾き1に固定しちゃった方が良いか

Sonnier, G., Ainslie, A., Otther, T. (2007) Heterogeneity distributions of willingness-to-pay in choice models. Quantitative Marketing and Economics, 5, 313–331.

 仕事の足しになるかと思って読んだ奴。Googleさんいわく被引用件数223。経済学の論文としては、これって多いほうなんですかね?
 最初なにいってんだかわかんなくなって混乱したんだけど、ここでいっているWTPというのは製品そのものに対する支払意思額のことではなく、価格以外の属性の部分効用の増分を価格に換算した値のことである(たとえば、同じ製品がブランドBじゃなくてAだったらいくら多めに払うか)。
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読了: Breidert, Hahsler & Reutterer (2006) 支払意思額の測定手法レビュー

Breidert, C., Hahsler, M., Reutterer, T. (2006) A review of methods for measuring willingness-to-pay. Innovating Marketing, 2(4), 8-32

 仕事の都合で読んだ。WTP(支払意思額)測定手法のレビュー。てっきりCVM(仮想評価法)のレビューだと思って放置していた。
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読了: Sisson & Fan (2011) 尤度を使わないMCMC

Sisson, S.A., Fan, Y. (2021) Likelihood-Free MCMC. in Brooks, S., et al.(eds) “Handbook of Markov Chain Monte Carlo,”, CRC Press.

 尤度フリーMCMCについての解説。いま仕事の関係で悩んでいることについて、ちょっとした手がかりでも得られるかも、と思って目を通した。高い本を買っちゃったから無理にでもモトを取らなくちゃ、というのがもう一つの動機である。
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読了: Chib & Greenberg (1995) Metropolis-Hastingsアルゴリズム解説

Chib, S., Greenberg, E. (1995) Understanding the Metropolis-Hastings Algorithm. American Statistician, 327-335.

 MCMCの古典的手法であるMetropolis-Hastingsアルゴリズムについての解説。Hitchcock(2003) によれば、この手法の普及させる立役者となった論文なのだそうだ。
 現在では日本語でも優れた解説が山のようにあるのに、いまになってこれを読んでいるのは無駄なような気もするんだけど… なんとなく目を通してしまった。
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読了: Okada (1995) 消費者は購買を正当化しなければならない、そのせいでこんなことが起きる

Okada, E.M. (1995) Justification Effects on Consumer Choice of Hedonic and Utilitarian Goods. Journal of Marketing Research, 42(1), 43–53.

 仕事で読んだ論文。
 内容のメモは別の形でとったので省略するけれど…

 たとえばレストランのデザートメニューに、おいしそうだけどカロリー高めのやつともう少し低脂肪のやつがあるとして、もしどっちかしか載ってなかったらそれを頼むけど(カロリー高めだからやめとこうということにはならないけど)、両方載ってたら後者を選んじゃうでしょう?
 あるいは、高いカメラを買うとき、「離れた店で同じカメラがもっと安く売ってるよ」といわれたとして、必要に迫られてではなくて趣味で買うときのほうが、じゃあそっちの店まで歩くかってことになるでしょう?
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読了: Hitchcock (2003) MCMCの歴史

Hitchcock, D.B. (2003) A History of the Metropolis-Hastings Algorithm. American Statistician, 57(4), 254-257.

 仕事の都合で柄にもなくMCMCについて調べているのだけれど、なにしろ数学の知識がないので到底歯が立たない。いったいボレル測度ってなによ!? どれだけ短期間に値上げできるかってことですか!? (それはぼれる速度だ)

 ついつい現実逃避で、こんなのを読んじゃったりして、メモまでとっちゃったりなんかして…
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読了:伊勢田(2013) ウィッグ史観のなにが悪い?

 調べものをしていて時々思うんだけど、たいていの学術書や論文はイントロで先行研究の限界を指摘する。それはいいんだけど、X学というすでに確立したディシプリンの入門書とか教科書とかのイントロ部分で、それに先行して確立していたディシプリンであるところのY学の限界をいちいち述べていることがあって、あれ、ちょっとうんざりするんですよね。あなたたちは既存体系との比較を通じてしか自らをアイデンティファイできないのかい? いつまで人をディスっているんだい? って思う。具体的にいうと行動経済学の話なんですけど… 素人の感想なので勘弁してください。
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読了: Brennan, Person & Priola (2015) 企業ブランドの内面化を通じた従業員のアイデンティティ形成(あるいは、未来の自己の動員を通じた規律権力の構築)

Brennan, M.J., Persons, E., Priola, V. (2015) Brands at work: The search for meaning in mundane work. Organization Studies, 36(1), 29-53.

 仕事の都合でコーポレート・ブランディングについて調べていて、実証とポエムとセールストークが奇妙に混淆した資料の山にほとほとうんざりしていたんだけど、たまたまこれをみつけ、あまりの面白さに読み耽ってしまった。こんなことをしている場合じゃないのに。
 記録のために書いておくけど、久保田・阿久津・余田・杉谷(2019, マーケティング・ジャーナル)のなかで、阿久津聡さん(有名な先生ですね)が、経営組織論におけるコーポレート・ブランディング研究としてこの論文を例示していたのがきっかけである。ありがとうございます。
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