マーケティング・リサーチというよくわからない分野で細々と生計を立てていて、ときどきうんざりするのは、あまりに説明と理解が重んじられるという点である。「分析の結果が腹落ちすることが大事だ」とかね。その「腹落ち」ってなに? そんなに神聖なこと? 現実には、人は往々にして、いいかげんな説明によって浅薄な理解に陥ってしまい、それによってかえって視野を狭くしてしまうことだってある。むしろ、わからないことをわからないままに抱え込んでいく強靱さが大事なのではなかろうか…
などとぐるぐる考えていると、ではそもそも説明ってなんなの? と不思議に思えてくる。広辞苑によれば説明とは、(1)事柄の内容や意味を、よく分かるようにときあかすこと、(2)記述が事実の描写や確認に留まるのに対して、事物や出来事が「なぜかくあるか」の根拠を示すこと。科学的研究では、個別事象を一般的法則と初期条件から因果的に導くこと。なのだそうである。しかし、差し障りがあるから細かく書けないけど、世のビジネス書に書いてあるアレも、マーケティングの偉い先生が仰るアレも、よくよく考えると、上記の意味での説明にはなってないよね? などと考え込んでしまう。
小林裕太・苗村弘太郎・清水雅也 (2021) 非因果的説明論の現在: 多元説・還元的一元説・非還元的一元説. フィスカル, 6(3), 146-174.
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