論文:調査方法論」カテゴリーアーカイブ

読了:Balinski & Laraki (2007) Majority Judgement とはなにか

Balinski, M., Laraki, R (2007) A theory of measuring, electing, and ranking. PNAS, 104(21), 8720-8725.

 研究会で経済学の先生に、majority judgementという社会的決定ルールがあると教えて頂き、俺にもわかるだろうか?と探して読んでみた。たった6頁だけど、けっこうしんどい。
 定理の証明は著者らの近著 “One-Value, One-Vote: Measuring, Electing and Ranking” をみよとのこと。おそらく “Majority judgment: measuring, ranking, and electing“(2011)のことであろう。
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読了: Dutwin & Buskirk (2017) 回収率が低いRDD調査とネットパネルの調査、どっちがましか

Dutwin, D., Buskirk, T.D. (2017) Apples to Oranges or Gala Versus Golden Delicious? Comparing Data Quality of Nonprobability Internet Samples to Low Response Rate Probability Samples. Public Opinion Quarterly, 81, 213-249.

 これも2017年POQ「サーヴェイ調査の明日」特集号より。
 タイトル通り、確率標本ではないネットパネル調査と、確率標本ではあるが回収率が低い調査のどっちがいいかという地獄のような話題である。第一著者はSocial Science Research Solutionsという調査会社の人。もの知らずなものでタイトルの表現がよくわからなかったのだが、GalaとGolden Deliciousというのはリンゴの品種らしい。
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読了:Mercer, et al. (2017) 因果推論から眺めた非確率的標本調査

Mercer, A.W., Kreuter, F., Keeter, S., Stuart, E.A. (2017) Theory and Practice in Nonprobability Surveys: Parallels between Causal Inference and Survey Inference. Public Opinion Quarterly, 81, 250-271.

 仕事の都合で読みまくった論文群のひとつ。
 POQの2017年「サーベイ調査の明日」特集号に載った論文。非確率標本ベースの調査を因果推論の観点からとらえ直すという啓蒙論文である。
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読了:Andreadis & Kartsounidou (2020) 調査票が長すぎるときはむしろ2回の調査に分けたほうが完了率や回答品質が上がるのでは? 試してみました

Andreadis, I., Kartsounidou, E. (2020) The Impact of Splitting a Long Online Questionnaire on Data Quality. Survey Research Methods, 14(1), 31-42.

 仕事の調べものをしていて見かけ、要旨をざっとみて、あ、これは今探してるやつじゃないな… とわかっていたのだけど、面白いんでついつい全部めくっちゃった奴。
 著者らはギリシャの大学にお勤め。掲載誌はIF 0.9… シブイ…
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読了: Agarwal & Rao(1996) ブランドエクイティを測る調査項目ってどれがいいのか実験してみました

Agarwal, M.K., Rao, V.R. (1996) An empirical comparison of consumer based measures of brand equity. Marketing Letters, 7(3), 237-247.

 消費者ベースのブランド・エクイティ指標の妥当性を調べましたという論文。
 ずっと前に「必ず読むこと」とタグをつけ(たしかケラーの分厚い本で引用されていたのだと思う)、入手を試みたのだが成功しなかった。ところが、このたび調べものをしていてこの論文がreferされているのをみかけ、試しに検索してみたらPDFが一発で見つかった。仕方がないのでざっと目を通すことに。
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読了: Hofstetter, et al. (2013) あなた最近エクササイズしてますか? Facebook上のあなたの友達にも裏をとり、答えが一致したら報酬をあげます

Hofstetter, R., Hildebrand, C., Herrmann, A., Huber, J. (2013) Revealing Painful Truths: the Impact of Friends on Self-Reports of Health-Related Behavior. Advances in Consumer Research, 41.

 仕事で探し物をしていてついでに目を通した奴。本文1ページ半、見出しも図表も空行も一切なく本文が切れ目なく続く。推敲もなんだかちょっといい加減な感じ。学会発表要旨なんじゃないかと思う。
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読了:Yeatman & Trintapoli (2011) あなたの友達のセフレの人数を教えてください、あなたのじゃなくて

 少し前に目を通した奴。

Yeatman, S., Trintapoli, J. (2011) Best-friend reports: A tool for measuring the prevalence of sensitive behaviors. American Journal of Public Health, 101(9), 1666-1667.

 偏見とか薬物使用のようなセンシティブな事柄についての調査で、調査対象者自身について訊いてもどうせ答えてくれないだろうから、対象者の友達を思い浮かべてもらって訊いちゃう、というのはときどき見かけるやり方だと思うんだけど、先日友人から先行研究を問われて答えに詰まり、ネットを探して見つけた奴。たった2頁だけど、掲載誌からしてそんなに変な内容ではないだろうと。
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読了:大隅, 鳰(2012) 総調査誤差とはなにか

読んだものはなんでも記録しておこうということで… しばらく前に目を通したもの。

大隅昇, 鳰真紀子 (2012) 「総調査誤差」をめぐって : ロバート M.グローヴス、ラース ライバーグ論文「総調査誤差-過去、現在、未来-」を中心に. 日本世論調査協会報「よろん」, 110, 18-31.
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読了: Preston & Colman (2000) X件法評定尺度のXはなにがよいか実験 in 2000

Preston, C.C., Colman,A.M. (2000) Optimal number of response catgories in rating scales: Reliability, validity, discriminating power, and respondent preferences. Acta Psychologica, 104, 1-15.

 仕事の都合でざっと目を通した。「X件法評定尺度のXはどうするのがよいか」実験。あまりに枯れたトピックなので、00年代の論文は珍しい。
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読了:Wikman & Warneryd (1990) 再検査信頼性はどんな調査項目で低くなるか

Wikman, A., Warneryd, B. (1990) Measurement errors in survey questions: Explaining response variability. Social Indicators Research, 22, 199-212.

 仕事の都合でばーっと目を通した奴。
 要するに「どんな項目で検査再検査信頼性が低いか」を、実際の公的調査で調べてみました、という話であった。
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読了:Felix (2011) 3件法で訊こうが9件法で訊こうがリスケールしちゃえば変わんないよ

Felix, R. (2011) The impact of scale width on responses for multi-item, self-report measures. J. Targeting, Measurement and Analysis for Marketing, 19, 153-164.

 仕事の都合でリッカート尺度の段階数について調べてたら、なんと2011年の研究が出てきて、びっくりして目を通した。この話題でまだ論文書く人がいるの!? という驚きだが(検索でひっかかる論文はたいてい80年代まで)、まああれかもね、盛り上がることも滅びることもなく総括も進展もない、ゴルフの打ちっ放しみたいな感じのテーマなのかもしれないっすね。
 著者はメキシコのマーケティングの先生。途中で疑問に思って調べたけど(失礼な…)、ちゃんとした業績のある方であった。掲載誌についてはよくわからない。CiNiiによれば現在はJ. Marketing Analyticsという誌名らしい(寡聞にして初耳である)。大学図書館での所蔵館数は1。渋い。
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