論文:心理」カテゴリーアーカイブ

読了:吉野(1989) 公理論的測定論の歴史

 ここしばらく、朝から晩までコンジョイント分析で頭がいっぱいだったのだが、物事なんでもそうであるように、これも調べ始めると限りなく奥が深い。いささか疲弊してしまった。
 こうなったら毒をくらわば皿までと思い、コンジョイント分析のご先祖としてよく引用されるLuce & Tukey (1964)を読みはじめたら、これがもうさっぱりわからない。昔の数理心理学には公理的測定理論というのがあって、この論文もそのひとつだと思うんだけど、統計手法や実証研究とは話の組み立てがまるで異なり、いま何の話をしているのかさえつかめないのである。これさあ… これを引用している先生方って、ほんとに読んだんですか…?
 いやまあ、私の理解力不足なんですけどね。だいたい私にわかるわけないじゃん。数理心理学なんて修士のときに Coombs, Dawes, & Tversky (1970) を読まされたのが唯一の接点だし、それだってほとんど寝ていた。

吉野諒三(1989) 公理論的測定論の歴史と展望. 心理学評論, 32(2), 119-135.
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読了:Cliff (1992) 公理的測定理論、そして起こらなかった革命

 ここんところ朝から晩までコンジョイント分析について考えていたのだが(さすがにちょっと飽きてきた)、いろいろ調べているとどうしても突き当たってしまうのが、マーケティング分野においてコンジョイント分析が普及する前、数理心理学の基礎研究において登場したコンジョイント測定の理論である。
 嗚呼、公理的測定理論、1960年代心理学の精華、わが青春のアルカディア。Luce, Suppes, Tverskyらによる名著”Foundations of Measurement”は、心理学科の院生であった我々の必携のバイブルであり、隅から隅まで穴が開くほどに熟読したものだ。
 嘘です。なんかこう「心理測定かくあるべし」的なのを数式で定義する超難しい理論が大昔にあったらしいとなんとなく聞き及んでいるが、たまーにそういう話を見かけてもチンプンカンプンだったし、勉強したいなんて露ほども思わなかった。”Foundations of Measurement”とかいう古い三巻本が書庫にあったような気がするけれど、そんなの手も触れませんでしたね。

Cliff, N. (1992) Abstract Measurement Theory and the Revolution That Never Happened. Psychological Science, 3(3), 186-190.
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読了:矢守(2009) 正常性バイアスとは実はなんのことなのか

矢守克也 (2009) 再論-正常化の偏見. 実験社会心理学研究, 48(2), 137-149.

 本日、仕事のファイルが開かれているディスプレイをぐったり眺めながら、サブディスプレイで講演を流していたのだけれど(←こういう姿勢はよろしくないな…)、いわゆる正常性バイアスについての面白いコメントがあって、へえそうなのか… と思って検索し、たまたま見つけた論文。
 別にいま読まなきゃいけない用事があるわけじゃないんだけど、ついつい読んでしまった。(←こういうのもよろしくないな)
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読了: Taylor et al.(1998) メンタル・シミュレーションはどう役に立つか

Taylor, S.E., Pham, L.B., Rivkin, I.D., Armor, D.A. (1998) Harnessing the Imagination: Mental Simulation, Self-Regulation, and Coping. American Psychologist, 53(4), 429-439.

 メンタル・シミュレーションの研究としてよく引用される論文だと思う。Google様いわく引用件数1110件。
 心理学の論文はあんまり読みたくないんだけど、このたび仕事の都合で再読していた竹内・星野(2017)で引用されているので、仕方ねえなと思って目を通した。
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読了:Show & Calimore (1988) マズロー心理学徹底批判

Show, R., Colimore, K. (1988) Humanistic Psychology as Ideology: An Analysis of Maslow’s Contradictions. Journal of Humanistic Psychology, 28, 51-74.

 マズロー心理学に潜むイデオロギーを徹底批判しますという論文。Google様いわく引用元は59件、意外に多い。
 別にいま読むこたないんだけど、ファイルを整理していてなんとなく目を通してしまった。前に読んだ松井(2001)で存在を知り、面白そうだなとPDFを探して保存しておいたものだと思う。
 著者の一人目は博士の院生さん、二人目は大学のmanagerial staffとある。お名前で検索したところ、Karen ColimoreがPrinceton Regional Chamber of CommerceのPresidentに着任しましたという記事があって、その略歴紹介で、別れた夫はビジネス・コンサルタントのRobert Showという人だと書いてあった。若かりし二人の青春の論文なんでしょうね。
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読了:Thaler (1999) 心的会計について語り倒す

Thaler, R.H. (1999) Mental Accounting Matters. Journal of Behavioral Decision Making. 12, 183-206.

 セイラー先生、心的会計について語り倒すの巻。google様によれば引用文献4208件というお化け論文である。
 仕事の都合で目を通した。正直なところ、こういうのいまさらあんまり読みたくないんだけど… 人生はアイロニーに満ちている。

 読み物としては面白いんだけど、事例が豊富すぎて疲れてしまい、途中からメモがいい加減になっている。
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読了: Galinsky, Maddux, Galin, & White (2008) 交渉相手の立場に立って考えるべきか、交渉相手に共感すべきか

Galinsky, A.D., Maddux, W.W., Galin, D., White, J.B. (2008) Why it pays to get inside the head of your opponents: The differential effects of prespective taking and empathy in negotiations. Psychological Science, 19(4), 378-384.

 他者視点を取得させる手続きについて調べていて手に取った奴。
 著者らについてはよく知らないんだけど、第一著者はコロンビア大ビジネススクールの偉い人で、「競争と協調のレッスン」という翻訳書がある。表紙がいかにもなビジネス書っぽくて、なんかこう手が伸びない感じだけど…
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