月別アーカイブ: 2020年4月

読了:Pauwels, et al. (2017) マーケティング・モデルの未来

Pauwels, K., Leeflang, P.S.H., Bijmolt, T.H.A, Wieringa, J.E. (2017) The Future of Marketing. Leeflang, P.S.H. et al.(eds) “Advance Methods for Modeling Markets.” Springer.

 しばらく前に読んだ奴。Advanced Methods for Modeling Markets という、読んで字の如くマーケティングの数理モデルを解説した分厚い論文集があって、これが意外に面白そうで、いつか役に立つだろうと買い込んだはいいが、読もう読もうと思いながら全然読んでなくて(2万円オーバーだったのに!!)、なんだか気がとがめたので、最終章だけむりやり目を通したのであった。
 論文集についてるこういう締めくくりの章は、総花的になりがちで(かつ、本編の寄稿者に気を遣うせいで)つまんなくなることが多いと思うんだけど、これは頭の整理になった。個別にみて新規な話題があるわけではないけれど、整理されているところに価値がある。
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読了:Papies, Ebbes, Van Heerde (2017) マーケティング・モデルにおける内生性という難題

 去年の今頃は諸事情あってマーケティング・ミックス・モデリングのことばかり考えていたのだが、セミナー用資料を作っていてぎりぎりまで悩んだ点のひとつは、内生性に関する話題をどこまで扱うか、という点であった。結局、そういう問題があるんですよという紹介にとどめ、伝統的な伝達関数時系列モデルの定式化と推定に全力を注いだ。虻蜂取らずという言葉もあるし、正しい判断だったとは思うんだけど、いまでもちょっともやもやしている。
 これは私の力量の問題ではなくて(言い訳)… マーケティング効果推定の実務においては、たぶん「内生性のことは触れないのが暗黙のお約束」になっているんじゃないかな、という気がするのである。もちろんアカデミックな文脈では実証研究がいっぱいあるんだけど、実務の文脈においては、あまりに深刻な問題なのにあまりにできることが少なくあまりにしんどいので、視線をそらして見えないふりをしているというか… これは「研究者はきちんとしているが実務家はいいかげん」という話ではなくて、問題解決を取り巻く状況の違いであろう。
 いま試しにgoogleで「マーケティング・ミックス・モデリング」と検索してみたら、業界各社様の華やかな宣伝が目白押しであったが、「マーケティング・ミックス・モデリング 内生性」で検索すると、さっきは何ページめくっても出てこなかった私のしょぼいセミナー資料がいきなり最上位になった。ウケる。

Papies, D., Ebbes, P, Van Heerde, H.J. (2017) Addressing Endogeneity in Marketing Models. Leeflang, P.S.H., et al. (eds) Advanced Methods for Modeling Markets. Chapter 18. Springer.

 これはセミナー準備の際に読みかけた奴。著者はどんな人たちなんだろう、よくわからない。→いま思い出したが、第三著者の論文は読んだことがあった。あ、販促で起きるブランドスイッチングは見た目よか小さいぜ論文もこの人だ。なんだよもう、俺らマブダチじゃん。(でかい態度)
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読了:Gao et al.(2019) MRP(マルチレベル回帰・層化)に構造化事前分布をいれる

Gao, Y., Kennedy, L., Simpson, D., Gelman, A. (2019) Improving multilevel regression and poststratification with structured priors. arXiv:1908.06716v2. 30 Sep 2019.
 しばらく前に読んだ奴。たしか勉強のつもりで読んだのだと思う。
 最近の選挙予測でブイブイいわせているらしき、Mr.P こと Multilevel Regression and Poststratification (日本語ではなんていうんだろう? マルチレベル回帰・層化?) に、構造を持つ事前分布をいれるという論文。Mr.Pの生みの親 Andrew Gelman さんも著者に入っている。たぶん未公刊。
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読了: Hyndman & Billah (2003) 時系列予測手法「シータ法」を解剖する

Hyndman, R.J., Billah, B. (2003) Unmasking the Theta method. International Journal of Forecasting, 19, 287-290.
 仕事の都合で読んだ奴。タイトルのとおり、時系列予測の手法のひとつTheta法についての解説。たったの4p。
 第一著者のHyndmanさんはいわずとしれた有名人で、Rのforecastパッケージの中の人であらせられる。
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読了: Makridakis, et al.(2018) 機械学習による時系列予測は優れているかというと、これが案外そうでもない

Makridakis, S., Spiliotis, E, Assimakopoulos, V. (2018) Statistical and Machine Learning forecasting methods: Concerns and ways forward. PLoS ONE, 13(3), e0194889.

 都合によりあわてて読んだ奴。時系列予測における伝統的な統計手法と機械学習を比較するという論文。筆頭著者は予測研究で著名なマキリダキスさん。予測に関してなにか調べ物をしていると、Andersonさんとこの人に突き当たることが多い。キプロスの大学の先生なのね。
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