読了: Toth & Eltinge (2011) ウェイトつきの調査データでつくった回帰木が一致性を持つ条件

Toth, D., Eltinge, J. (2011) Building consistent regression trees from complex sample data. Journal of the American Statistical Association, 106(409), 1626-1636.

 仕事の都合で標本ウェイトつきのデータを使って分類木モデルをつくりたくなり、あれこれ調べていて見つけた論文。
 少なくともタイトルは知りたいことにぴったりだし、第一著者はサーベイデータに特化した分割木・森モデリングのRパッケージrpmsの中の人だし、これを読めば道が開けるかな、と思ったのが運の尽き… いやあ、えらい目にあった。
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読了: Yao, Lo, & Graubard (2014) ウェイトつき調査データからAUCを求めるには

Yao, W., Li, Z., Graubard, B.I. (2014) Estimation of ROC curve with complex survey data. Statistics in Medicine, 34(8), 1293-1303.

 仕事の都合で読んだやつ。複雑な標本抽出デザインのデータからROC下面積(AUC)とその分散を推定するにはどうしたらいいか、という論文である。
 うーん、マニアックな話だなあ。夢もへったくれもないなあ。俺もChatGPTのマーケティング活用だとかそういうの語りたいのに。なんかこう、カメラの前でろくろとか回したいのに…
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読了:竹内・星野(2014), 竹内(2015), 竹内・星野(2017), 竹内(2017) 消費者に製品評価を求める前にマインドセットを操作する

竹内真登, 星野崇宏(2014) 解釈レベルの操作を伴うコンジョイント測定法の開発: マーケティングリサーチに生じるバイアスの排除に関する実証分析. マーケティング・サイエンス, 23(1), 15-34.

竹内真登(2014) マーケティングリサーチへの応用を目的とした解釈レベルの新操作法の開発: 解釈レベル理論とメンタルシミュレーションに基づく提案と実験検証. 経済科学(名古屋大学大学院経済学研究科), 63 (2), 15-26.

竹内真登, 星野崇宏(2017) プロセスシミュレーションを伴うコンジョイント測定による購買予測: 写真提示を用いた操作と追跡調査による予測精度向上の確認. 行動計量学, 44(1), 45-56.

竹内真登(2017) マインドセット操作によるマーケティングリサーチの精度向上は可能か? メンタルシミュレーションと解釈レベル理論に基づく操作の違いに着目して. 行動計量学, 44(2), 151-165.

 仕事の都合で立て続けに読み直した。竹内真登先生による一連の研究。
 内容のメモは別のところでとっているので省略。実のところすべて再読なのだけれど、なんでも記録しておこう、ということで…

読了: Jiang, Adaval, Steinhart, & Wyer (2014) 製品やサービスについて広告なり説明なりを示すとき、消費者が消費経験をなんのために想像するかによって心的処理が変わるし、広告・説明の良し悪しも変わる

Jiang, Y., Adaval, R., Steinhart, Y., Wyer, R.S. (2014) Imagining yourself in the scene: The interactive effects of goal-driven self-imagery and visual perspectives on consumer behavior. Journal of Consumer Research, 41, 418-435.

これも仕事の都合で読んだやつ。消費者行動の文脈でのメンタル・シミュレーションの実験研究である。ひとくちに自己関連的メンタル・シミュレーションといっても、それには目標ってものがあるでしょう? という面白い切り口。
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読了: Cian, Longoni, & Krishna (2020) 痩せる前後の写真を並べた広告より、痩せる前と痩せていく途中と痩せた後の写真を並べた広告のほうが効く(ただし鼻づまりスプレーだと逆になる)

Cian, L., Longoni, C., Krishna, A. (2020) Advertising a desired change: When process simulation fosters (vs. hinders) credibility and persuation. Journal of Marketing Research, 57(3), 489-508.

仕事の都合で読んだやつ。広告におけるメンタル・シミュレーション研究である。最後の著者はセンサリー・マーケティングで有名なAradhna Krishnaさん。
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読了: Amit, Algom, Trope, & Liberman (2009) 絵と言葉のちがいは我々の解釈レベル理論で説明できるのだ

Amit, E., Algom, D., Trope, Y., Liberman, N. (2009) “Thou Shalt Not Make Unto Thee Any Grave Image”: The Distance Dependence of Representation. Markman, K.D, Klein, W.M.P., Suhr, J.A. (eds.) “Handbook of Imagination and Mental Simulation“, Chapter 4. Psychology Press.

 仕事の都合でざっと目を通したやつ。メンタル・シミュレーションの研究と解釈レベル理論との関連性がわかるかと思ったんだけど(メンタル・シミュレーションの論文集に載っていて、著者らは解釈レベル理論の中の人だから)、期待した内容とはかなり違いまして…
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読了: Buckley, et al. (2023) みんなプーチンを支持しているとみんな思ってるからみんなプーチンを支持している

 今月、新聞に世論調査についてのちょっと面白い記事が載っていた。リンク切れに備えてメモしておくと、朝日新聞の2023/9/11の記事で、見出しは「『不人気』報道 不人気呼ぶ?」。ロシアで行った実験で、プーチンの人気の有無についてフレーミングしたのちにプーチン支持を訊くと、ネガティブ・フレーム下で支持率がすごく下がった、つまり、プーチンに人気が無くなったと人々が信じればプーチンの支持率は急落するんじゃないか、という話。
 当該の記事には研究者の名前さえ載っていない。しばしのWeb検索の末、元ネタはこれじゃないかなという論文をみつけた。こういう記事にはソースのURLをつけてくれればいいのにね。

Buckley, N., Marquardt, K.L., Reuter, O.J., Tertytchnaya, K. (2023) Endogenous Popularity: How Perceptions of Support Affect the Popularity of Authoritarian Regimes. American Political Science Review, First View, 1-7.
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読了: Helveston (2023) 選択課題の個人レベル多項ロジットモデルをふつうのパラメータ化と「WTP空間」パラメータ化の両方で高速に最尤推定するRパッケージlogitr

 先月、コンジョイント分析の実験計画をRで作る方法についてのメモを作ってたんだけど(我ながらマニアックな話だ…)、そのきっかけになったのはRの cbcTools というパッケージをみつけたからであった。メモを公開したら、このパッケージの作者の方にコメント頂いたりして(機械翻訳で読んで下さったのだそうだ)、誠に恐縮でございました。一円の儲けにもならないけど、なんだかちょっと嬉しいですね。
 で、この方が作っている別のパッケージについて解説を眺めていたら、冒頭でいきなり「そうそう!そうなのよ!」と膝を叩くような話が出てきて…

Helveston, J.P. (2023) logitr: Fast Estimation of Multinomial and Mixed Logit Models with Preference Space and Willingness-to-Pay Space Utility Parameterizations. Journal of Statistical Sofware, 105(10).
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読了: Downes& Carlin (2020) Mr.P (マルチレベル回帰・層化)ってやっぱり良いの? はい、良いみたいです

 代表性のない標本調査に基づいて母集団特性をうまいこと推測する、という話題のひとつに、Mr.P ことMRP(マルチレベル層化・回帰)というのがある。選挙予測で注目を集めた手法で(たしかYouGovがジョンソン勝利を当てたときに使ったんですよね)、私は面白がってGelman先生たちのarXivの論文のメモをとったりしてたんだけど、国内でもあれよあれよという間に有名になり、周囲から「MRPって知ってます?」と訊かれ、学会発表やそのへんの調査結果リリースでも見かけるようになり、なんと日本の伝統的大手メディアの方まで採用を検討しはじめ、ついには「MRPってできますか」と問い合わせが来たりするようになった。さすがにここまで来ると、個人的な熱は冷めてしまう。

 このたびちょっと思い立って検索してみたら、もはや心理学などの隣接諸分野で啓蒙論文が出るレベルにまで普及したようだ。2020年以降の論文は件数が少なく、とっくにハイプ・カーブの峠を越えたという感じである。
 そのなかから試しに一本読んでみた。疫学分野での手法検証研究である。
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読了: Wang, Yue, Faraway (2023) INLAで学ぶ時系列モデリング (モデル編)

 ここしばらく、時系列モデリングの解説書を頼りに、INLA(積分段階的ラプラス近似)の理屈を理解しようと試みていた。目当ての2章は読み終えたので、この本はこれでおしまいにするつもりにするつもりだったのだが、なんとなく3章も目を通してしまった。

Wang, X., Yue, Y.R., Faraway, J. (2023) Dynamic Time Series Models using R-INLA: An Applied Perspective. Chapter 3. Details of R-INLA for Time Series.

せっかくなので、各節のごくごく概要についてメモしておく。ちなみに本章は長いのだが、チャートが多く、実質的な内容はみかけほど多くない。
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読了: Wang, Yue, Faraway (2023) INLAで学ぶ時系列モデリング (概論編)

 前回に引き続き、時系列モデルについてのINLA(積分段階的ラプラス近似)の解説書。全14章だが、第1,2章だけはメモしながら読むことにした。いよいよ第2章。

Wang, X., Yue, Y.R., Faraway, J. (2023) Dynamic Time Series Models using R-INLA: An Applied Perspective. Chapter 2. A Review of INLA.
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読了: Wang, Yue, Faraway (2023) INLAで学ぶ時系列モデリング(準備編)

Wang, X., Yue, Y.R., Faraway, J. (2023) Dynamic Time Series Models using R-INLA: An Applied Perspective. Chapter 1. Bayesian Analysis.

 長く個人的懸案のひとつであったINLA(積分段階的ラプラス近似)について学ぶべく、このたびRue, Martino, Chopin(2019)にチャレンジし、学力不足により涙を飲んで撤退した次第だが、いきなり原典における一般的記述を読もうとしたのがいかんかったよな、というのが反省点であった。気を取り直し、今度は領域を絞った解説書をあたってみた。
 R-INLAについての解説本のうち、特に時系列モデルについての本。本の評判については知らないが、なんだかわかりやすそうだし、きちんとした感じだし、なにより全文が公開されている。ありがたい。
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読了: Laken, Scheel, Isager (2018) 諸君、もっと等価性検定をやれ

Lakens, D., Scheel, A.M., Isager, P.M. (2018) Equivalence Testing for Psychological Research: A Tutorial. Advances in Methods and Practices in Psychological Science. 1(2), 259-269.

 仕事の都合でごくたまに等価性検定の話が出てくることがある。消費財のマーケティングリサーチでは、たとえば原材料や製法をコスト削減しても製品知覚は変わんないことを確認したい、というような場面が典型的である。今回もちょっと似たような用事があって、話のついでにめくってみた。ときどき読まないと忘れてしまう。
 等価性検定や非劣性検定の話をマジメに勉強するならば、それはもう医学統計の教科書をあたるべきなんだけど、今回は心理学者向けの易しい啓蒙論文。週末の気分転換だからね、と自分に言い訳して…
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読了: Rue, Martino, Chopin (2009) INLAを使って楽しい楽しい潜在ガウシアン・モデル (後編)

 前回に引き続き、以下の論文のメモ。

Rue, H., Martino, s., Chopin, N. (2009) Approximate Bayesian Inference for Latent Gaussian Models by Using Integrated Nested Laplace Approximations. Journal of Royal Statistical Society, B. 71(2), 319-392.

 どうやら私の能力を超えている… 辛い…
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読了: 万, et al. (2020) 比例ハザード性を仮定しない生存時間Bump Hunting手法の提案

万可, 谷岡健資, 南弘征, 下川敏雄, 水田正弘 (2020) 治療効果が顕著なサブグループを抽出するための境界内平均生存時間に基づく生存時間Bump Hunting法の開発. 計算統計学, 33(1), 1-28.

 仕事の都合でめくった奴。
 どういう話かというと、観察データなり臨床試験のデータなりから、新治療と既存治療のアウトカムの差が特に大きいサブグループを抽出したいという話である。大変失礼ながら提案手法そのものには関心がなくて、この領域にはどういう手法があるのかな、という関心から斜め読みした次第。すいません、ちゃんと読んでないです…
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覚え書き: ヤコビアンとかヘシアンとかコシアンとかもうわけがわかんない

 もう一万回くらい書いていると思うけど、私はきちんとした教育をうけていないので数学が全然わからない。しかし仕事上わかりませんでは洒落にならないので、いいトシこいて机に向かって練習問題を解いたりして貴重な休日を費やしたりしているのである。ほんとに辛い。
 いま仕事の都合で読んでいる資料にも、なんの前置きもなくヘシアンがどうたらこうたらと書いてあり、少しでも理解しようと思って机の横にある教科書をめくると、さらにヤコビアンだのナントカアンだのというのが乱舞していて、ほんとにもう、頭の良い奴はみんな死ねばいいのにと思う。

 以下はヤコビアン、ヘシアン、ナントカアンについての自分のための覚え書きである。誰も読む人はいないだろうけど、うっかり読んでしまうと、さみしい中年男の悪あがきに涙が止まらなくなるだろう。
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読了:小林・苗村・清水(2021) 科学的説明というのは必ず因果的説明なのか、そうでもないのか

 マーケティング・リサーチというよくわからない分野で細々と生計を立てていて、ときどきうんざりするのは、あまりに説明と理解が重んじられるという点である。「分析の結果が腹落ちすることが大事だ」とかね。その「腹落ち」ってなに? そんなに神聖なこと? 現実には、人は往々にして、いいかげんな説明によって浅薄な理解に陥ってしまい、それによってかえって視野を狭くしてしまうことだってある。むしろ、わからないことをわからないままに抱え込んでいく強靱さが大事なのではなかろうか…
 などとぐるぐる考えていると、ではそもそも説明ってなんなの? と不思議に思えてくる。広辞苑によれば説明とは、(1)事柄の内容や意味を、よく分かるようにときあかすこと、(2)記述が事実の描写や確認に留まるのに対して、事物や出来事が「なぜかくあるか」の根拠を示すこと。科学的研究では、個別事象を一般的法則と初期条件から因果的に導くこと。なのだそうである。しかし、差し障りがあるから細かく書けないけど、世のビジネス書に書いてあるアレも、マーケティングの偉い先生が仰るアレも、よくよく考えると、上記の意味での説明にはなってないよね? などと考え込んでしまう。

小林裕太・苗村弘太郎・清水雅也 (2021) 非因果的説明論の現在: 多元説・還元的一元説・非還元的一元説. フィスカル, 6(3), 146-174.
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読了:小川(1997) 沖縄の民俗宗教をまるごとキリスト教に鞍替えさせた牧師の話

 宮田登「弥勒」という本を読んでいて、宮古島に洞窟を崇拝するミロク教という新宗教があったと知り、へええ? と興味本位で検索したところ、下記の紀要論文をみつけた。論文の本題とは別に、登場する松森善正という人の人生があまりに面白いので、その点に絞ってメモしておく。

小川順啓(1997) 民俗宗教からキリスト教へ ある沖縄のキリスト教会の物語. 駒澤大学文化, 17, 45-74.
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読了: Rue, Martino, Chopin (2009) INLAを使って楽しい楽しい潜在ガウシアン・モデル (前編)

 流れ流れてデータ解析とかで生計を立てていますが、一日に三回くらい、なぜ私はこんなことをしているのか… もっとましな人生があったのではないか… という疑念に囚われる。もっとましな人生ってなに? よくわかんないけど。
 さらに、Stanのコンパイルでイライラするたび、なぜ私はこんな面倒なことをしているのか… これはMCMCじゃなくてなにか別の方法でも解けるのではないか… という疑念に囚われる。別の方法ってなに? 知らんけど。INLAとか?
 そんなこんなで、数年前から何度かINLAを実戦投入しようとし、その度に挫折している。検索すると2017年、R-INLAについての解説を読んでいるようだが、メモを読み返すと内容をあまり理解できていないことが丸分かりである。切ないのう。

Rue, H., Martino, s., Chopin, N. (2009) Approximate Bayesian Inference for Latent Gaussian Models by Using Integrated Nested Laplace Approximations. Journal of Royal Statistical Society, B. 71(2), 319-392.

 そういうわけで、先日も仕事の都合で発作的にINLAの勉強をはじめた(仕事のほうは時間切れでそれどころではなくなり、結局はStanで切り抜けた)。その際のメモ。長くなるので2パートくらいにわける。
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