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2020年1月 2日 (木)

Bookcover 論点別 昭和史 戦争への道 (講談社現代新書) [a]
井上 寿一 / 講談社 / 2019-11-13

読了:「論点別 昭和史」

2018年5月 3日 (木)

Bookcover 戦前日本のポピュリズム - 日米戦争への道 (中公新書) [a]
筒井 清忠 / 中央公論新社 / 2018-01-19

Bookcover 高度成長―シリーズ日本近現代史〈8〉 (岩波新書) [a]
武田 晴人 / 岩波書店 / 2008-04-22

Bookcover 戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書) [a]
井上 寿一 / 講談社 / 2017-11-15

読了:「高度成長」「戦争調査会」「戦前日本のポピュリズム」

2017年12月10日 (日)

Bookcover 自由主義は戦争を止められるのか: 芦田均・清沢洌・石橋湛山 (歴史文化ライブラリー) [a]
美和, 上田 / 吉川弘文館 / 2016-05-20
読んだ後にメモをとっておけば良かった... とても面白い本であった。

Bookcover 暗い時代の人々 [a]
森 まゆみ / 亜紀書房 / 2017-04-14
大正・昭和期に生きた人々の評伝集。取り上げられているのは、斉藤隆夫、山川菊栄、山本宣治、竹久夢二、九津見房子(ゾルゲ事件に連座した社会主義者),斉藤雷太郎・立野正一(全く知らなかった。京都で反ファッショの新聞を発行した人)、古在由重、西村伊作(文化学院の創立者)。

読了:「自由主義は戦争を止められるか」「暗い時代の人々」

2016年12月31日 (土)

Bookcover 自由民権運動――〈デモクラシー〉の夢と挫折 (岩波新書) [a]
松沢 裕作 / 岩波書店 / 2016-06-22
感想をメモしている時間がないけれど、これは最近読んだ本の中で一番の面白本であった。
 戊辰戦争ってのは、大きな出来事だったんだなあ... 「戊辰戦後デモクラシー」なんて、思いもよらなかった。(←これはもともと政治学者・三谷太一郎が提唱した概念らしい。どの本を読めばいいのかしらん)

読了:「自由民権運動 <デモクラシー>の夢と挫折」

2016年10月 6日 (木)

Bookcover 「南京事件」を調査せよ [a]
潔, 清水 / 文藝春秋 / 2016-08-25
しばらく前に、日本テレビが「南京事件 兵士たちの遺言」という優れたドキュメンタリー番組を放映し評判を呼んだけれど、これはその制作者による本。

読了:「『南京事件』を調査せよ」

2016年8月 4日 (木)

Bookcover 元老―近代日本の真の指導者たち (中公新書) [a]
伊藤 之雄 / 中央公論新社 / 2016-06-21
近代史の本を読んでて、首相交代の際になぜ西園寺公望がこんなに強い発言権を持つのかと不思議だったのだが、元老というのは非公式とはいえある種の制度だったのか、知らなかった。
 国際連盟脱退の際、西園寺は内心では反対であったが黙認した。天皇機関説が排撃されたとき、西園寺は反対ではあったが逆らわなかった。元老の権力と宮中人事を守るためであった由。時節を待つといえば聞こえはいいけれど、要するに、システムの中の人にとってシステムの維持は目的と化す、国民はどうでもいい、ってことじゃないですかね...

読了:「元老 近代日本の真の指導者たち」

2016年4月13日 (水)

Bookcover 終戦後史 1945-1955 (講談社選書メチエ) [a]
井上 寿一 / 講談社 / 2015-07-11

Bookcover 戦争と検閲――石川達三を読み直す (岩波新書) [a]
河原 理子 / 岩波書店 / 2015-06-27

読了:「戦争と検閲 石川達三を読みなおす」「終戦後史1945-1955」

2016年2月29日 (月)

Bookcover ナショナリズム: その神話と論理 (ちくま学芸文庫) [a]
橋川 文三 / 筑摩書房 / 2015-08-06
著者の橋川文三という人、1983年没だそうだ。もっと昔の人かと思っていた。
 面白かったという記憶はあるんだけど、しばらく前に読んだ本なので、ええと、どう面白かったんだっけか...そうそう、この本で明治元年の隠岐コミューンのことを知ったのだった。

読了:「ナショナリズム」

2016年1月 3日 (日)

Bookcover 日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の証言より (岩波現代文庫) [a]
澤地 久枝,半藤 一利,戸高 一成 / 岩波書店 / 2015-07-16

Bookcover 吉原はこんな所でございました 廓の女たちの昭和史 (ちくま文庫) [a]
福田 利子 / 筑摩書房 / 2010-10-08
原著は86年刊。著者(語り手)は吉原の茶屋育ち、戦後の混乱期には自ら娼館を経営、料亭に商売替えして活躍。赤線廃止後に久保田万太郎の支援を受けて「花魁ショー」を立ち上げ、観光名所として人気を呼んだそうだ。興味深い本であった。
 吉原は東京大空襲で全滅、ところが政府は吉原復興を命じ、生き残った花魁たちを掻き集めて無理矢理営業を開始した。それが1945年8月5日で、10日後には再び店を閉める羽目になった由。もっとも、すぐに進駐軍の慰安施設に衣替えさせられることになるのだが。 。。なんだか暗澹とさせられる話だ。空襲では凄まじい数の人々が亡くなっているはずである。

 そういえば、ソープランドを手広く営んでいる角海老グループというのがある。子供の頃私は「角海老」と大書してある看板の横でよく遊んだもので、成長してからその業種がわかってびっくりした。たしかボクシングジムも手がけてますね。この屋号、明治期の吉原の大見世の一つであった角海老楼から取っているそうだ。wikipediaによれば、直接のつながりはないのだけど、創業者でありソープの帝王と呼ばれた実業家・鈴木正雄は、若き日に車夫として角海老楼に出入りしていたとのこと。

読了:「日本海軍はなぜ過ったか」「吉原はこんな所でございました」

2015年11月 1日 (日)

Bookcover 特攻――戦争と日本人 (中公新書) [a]
栗原 俊雄 / 中央公論新社 / 2015-08-24

Bookcover 昭和天皇―「理性の君主」の孤独 (中公新書) [a]
古川 隆久 / 中央公論新社 / 2011-04

読了:「特攻 戦争と日本人」「昭和天皇 『理性の君主』の孤独」

2015年8月16日 (日)

Bookcover 最後の「日本人」―朝河貫一の生涯 (岩波現代文庫) [a]
阿部 善雄 / 岩波書店 / 2004-07-16
日米開戦回避のために尽力した在米の歴史学者・朝河貫一の伝記。83年刊の単行本を近所の古本屋で見つけ、関心を惹かれて買った。いま調べたら、岩波現代文庫にはいってんじゃん。なあんだ。

読了:「最後の『日本人』 朝河貫一の生涯」

2015年5月 8日 (金)

Bookcover 三酔人経綸問答 (光文社古典新訳文庫) [a]
中江 兆民 / 光文社 / 2014-03-12
本の主旨からは離れるけど、この原文のリズム感、ドライブ感といったらない。これは兆民の才能なのだろうか、それとも漢文読み下しというもの自体が持つ特性なんだろうか。ところどころ原文にあたっては、声に出さずに音読してウットリしていた。時間がないので現代語訳のほうで通読しちゃったんだけど、できれば原文で全部読み直してみたいものだ。

Bookcover 官僚制としての日本陸軍 [a]
北岡 伸一 / 筑摩書房 / 2012-09

読了:「三酔人経綸問答」「官僚制としての日本陸軍」

2015年4月 9日 (木)

Bookcover 〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等 (講談社選書メチエ) [a]
坂野 潤治 / 講談社 / 2014-11-11
著者によれば、総力戦体制の下である種の社会的平等が実現したの事実だが(小作農解放とか)、そこに因果関係があるかどうかは別の問題だ、とのこと。そうかー。

読了:「階級の日本近代史」

2014年10月27日 (月)

Bookcover 言論抑圧 - 矢内原事件の構図 (中公新書) [a]
将基面 貴巳 / 中央公論新社 / 2014-09-24
1937年、矢内原忠雄が東京帝大を逐われた、矢内原事件についての解説書。
 矢内原は著名な無教会キリスト教指導者でもあったのだが、辞職の報を聞いた無教会の多くの人々は、むしろ辞職を歓迎したのだそうである。事件の深刻な政治的意味に注目せず、むしろ矢内原が伝道に専心してくれることを喜んだのだそうだ。これだから、もう...

読了:「言論抑圧」

2014年9月 1日 (月)

Bookcover 関東大震災と中国人――王希天事件を追跡する (岩波現代文庫) [a]
田原 洋 / 岩波書店 / 2014-08-20
関東大震災の際の朝鮮人虐殺、大杉栄らの虐殺や亀戸事件は有名だけれど、中国人学生リーダーの暗殺事件というのもあって(王希天事件)、遠藤三郎中将の告白に基づきこの事件を追跡するノンフィクション。
 著者は王の旧制高校の同期生に片っ端から連絡を取るんだけど、思い出話を好意的に提供してくれる人はごく少ない。その一人が、内務省のエリート官僚として生涯を送った磯部巌という人。なんだか気になって検索してみたら、この人、石原慎太郎に抗議して都立大を去った磯部力先生のお父さんなんですね。へえー。

読了:「関東大震災と中国人」

2014年5月11日 (日)

Bookcover 輿論と世論―日本的民意の系譜学 (新潮選書) [a]
佐藤 卓己 / 新潮社 / 2008-09
あまりに面白すぎてうんざりし、途中で放り出してしまう本、というのがあるように思う。この本もそんな一冊で、読みかけのまま三年ほど書棚の奥にあった。このたび意を決して無理矢理読了。
 輿論(ヨロン, public opinion)と世論(セロン, popular sentiments)を区別すべきだ、という主張を軸に、戦後言論史を縦横に語る。

 いくつか覚え書き。

読了:「輿論と世論」

2014年4月 9日 (水)

Bookcover 九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響 [a]
加藤 直樹 / ころから / 2014-03-07
関東大震災の際の朝鮮人・中国人虐殺についてまとめた本。読んでいて気が滅入る辛い内容だが、丁寧に作られた良書だと思う。

読了:「九月、東京の路上で」

2014年3月18日 (火)

Bookcover 無念なり: 近衛文麿の闘い [a]
大野 芳 / 平凡社 / 2014-01-24
近衛は決して優柔不断な政治家ではなかった。木戸幸一と都留重人の陰謀が彼を追い詰めた。など、工藤美代子「われ巣鴨に出頭せず」に近い内容であった。

読了:「無念なり 近衛文麿の闘い」

2014年2月24日 (月)

Bookcover 革新幻想の戦後史 [a]
竹内 洋 / 中央公論新社 / 2011-10-22
著者自身の知的遍歴と思い出話を織り交ぜながら、戦後の論壇を語る、という... 偉い人にしか許されないタイプの本であった。

読了:「革新幻想の戦後史」

2014年2月12日 (水)

Bookcover 明治維新の遺産 (講談社学術文庫) [a]
テツオ・ナジタ / 講談社 / 2013-08-09
アメリカの日本思想史研究者テツオ・ナジタによる、79年の本。徳川時代から太平洋戦争までの日本の政治思想を、「維新主義」と「官僚的合理主義」のせめぎ合いとして捉え直す、という内容であった。
 すごく難しい本しか書かない学者だと思っていたので、こういう一般向けの本を書いているとは知らなかった。それでも十分難しかったけどさ。

読了:「明治維新の遺産」

2014年1月 5日 (日)

Bookcover 「紙上の教会」と日本近代――無教会キリスト教の歴史社会学 [a]
赤江 達也 / 岩波書店 / 2013-06-27
序章からなんだか肩に力が入っている感じで、ひょっとして若い研究者の博士論文かな、と思ったら、まさにその通りであった。ともあれ、面白い本であった。
 内村鑑三以降の無教会キリスト教の歴史を、特に雑誌メディアとの関わり(著者のいう「紙上の教会」)に注目して辿る。前半は内村、後半は矢内原忠雄らが中心人物となる。
 本の主旨もさることながら、とても面白かったのは、内村の不敬事件のくだり。教育勅語への敬礼を雄々しくも敢然と拒否したのだとばかり思っていたのだが、実際にはそういう話ではなくて、そもそももっと堅い信念を持つキリスト教徒の教員は仮病で休んでいたし、内村鑑三は迷った末ちょっと頭を下げてみせ、その頭の下げ方が十分でないという指弾を受けたのである。
 なるほど、とかえって感銘を受けた。このように、誠実であるが故に中途半端な姿、そして事件を乗り越えて自分の道を進んでいく姿にこそ、学ぶべきものが多いように思う。

読了:「『紙上の教会』と日本近代-無教会キリスト教の歴史社会学」

2013年12月22日 (日)

Bookcover ゾルゲ事件とは何か (岩波現代文庫) [a]
チャルマーズ・ジョンソン / 岩波書店 / 2013-09-19
著者の名前はアメリカの軍産複合体を厳しく批判する親日派の学者としてぼんやりと記憶にあったが、それは晩年の話で、もともとはCIAの手先と警戒されていたタカ派だったのだそうだ。で、この先生はかつてゾルゲ事件を研究しており、この本は64年に出版された本の改訂版の邦訳。
 ゾルゲ事件の研究書ではあるが、その主役のひとりである尾崎秀実に大きな比重が置かれていて、もはや尾崎の評伝に近い。いやー、面白かった。
 筆致がやや感傷的になる末尾の文章をメモしておく。最後に引用されているのはシェイクスピア「ジュリアス・シーザー」、彼とはブルータスのこと。

尾崎の亡霊は現在も日本に住みつき、かれの昔ながらの友人たちを当惑させている。[笠信太郎、風間章、鶴見俊輔のそれぞれの尾崎評を紹介し...] 尾崎のことを知ることのなかったあまたの日本人にとって、また彼の生きざまとその時代の意味するところを理解したいと思うすべての人にとって尾崎は、今後も偏ることなく判断するにはし難い人物のままでいよう。彼の抱いた希望のうちには、いまとなっては非現実的に思えるものもあるし、彼のとった行動のうちには無益だったものもある。しかし彼は、彼の同時代人のなかでは稀有なことに、日中戦争はアジアを変貌させるとみていたし、古い中国社会の廃墟の中からこそ真の民族国家が誕生しようと予言していた。さらに、中国革命の潮流に日本政府が軍国主義をもって棹さす愚行を見ていた。人間として最も重要なことは、彼が観察者のままではいられなかったことである。彼は信念に生命を賭けたのである。
 彼の徳に従って
 彼を遇しよう

読了:「ゾルゲ事件とはなにか」

2013年8月26日 (月)

Bookcover 日本ファシズム論争 ---大戦前夜の思想家たち (河出ブックス) [a]
福家 崇洋 / 河出書房新社 / 2012-06-09

読了:「日本ファシズム論争」

2013年8月 5日 (月)

Bookcover 出口なお――女性教祖と救済思想 (岩波現代文庫) [a]
安丸 良夫 / 岩波書店 / 2013-07-18
大本教の開祖・出口なおが神憑りとなって記した膨大な預言書「お筆先」を、教団の聖典としてではなく、幕末から明治を極貧のなかに生きたひとりの女性の精神の記録として読み解く本。「お筆先」には前からちょっと関心を惹かれていて、こういう本を探していたのである。現存する宗教団体の教祖様の話でもあるので、クールな議論を探すのはなかなか難しい。
 無闇に面白くて、他の本を全部放り出して一気に読み終えた。途中でエリクソンのアイデンティティ論がちょっと都合良く持ち出されるところがあって、なにかこなれない感じがするのだけれど、そのあたりは、この本が書かれた時代を考慮すべきなのかもしれない(原著は1977年刊)。

 「お筆先」が提示する終末思想は、世界の根源的な「立て替え」のあとの理想世界をたとえば次のように語る。「今度天地の岩戸が開けたら、草木も人民も山も海も光り輝いて誠にそこら中がキラキラ致して、楽もしい世の穏やかな世になるぞよ」「月も日もモツト光が強くなりて、水晶のやうに物が透き通りて見え出すから、悪の身魂の潜れる場所が無きようになるぞよ」

こうしたイメージャリィは、思想史的には、日本の民衆が歴史のなかで育ててきた理想世界像のもっともあざやかな結晶化だといってよい。民衆は、ごく一般的には、自分の願望や夢を言葉にならないうちに抑圧して、支配階級からあたえられる世界像をあいまいに受容して生きるのだが、困苦の生活と変革的状況がふかまるとき、民衆の自意識は支配的思想からみずからを剥離し、独自の理想世界についてのイメージャリィを育てるものである。日本の民衆意識の伝統において、こうしたイメージャリィは、基本的には、家族を単位とした勤勉で篤実な労働(とりわけ農耕)とその成果のゆたかな享受ということであり、天地自然はそした民衆の努力と享受を保証している本源的な神性だということであったと思われる。[...]こうした世界像は、おそらく小生産者大衆の千年王国的ユートピアと呼びうるものである。[...] もちろん、こうしたユートピアは、封建制から資本制へと展開していく歴史の大法則の大きなうねりのなかに生まれた、中小の渦としての幻想であり夢であって、民衆は [...] 歴史の大法則のなかに巻き込まれ、その内在的論理にしたがって生きるように強制される。しかし、それにもかかわらず、こうしたユートピアの成立は、日本の民衆が、幕藩制国家とも天皇制国家とも異なった、より根源的な解放をめざして自らの諸価値・諸理念を自立化させてきたことをものがたるものにほかならないといえよう。
くりかえしのべたように、[出口]なおのような生の様式は、もしそれをとりかこむ条件がある程度まで順調ならば、そうした生の様式を営む人々にささやかに安定した「家」を作らせて既成の社会体制を下から支えるような役割をあたえ、その人間の内面性を既成の体制と価値のなかへ統合するはずのものであった。だが、こうした統合が失敗に終わったとき、なおがひたむきにつらぬいてきた生の様式には、なにか根本的な意味転換とあたらしい輝きが生まれ、そこに拠点を据えてすえて、近代化していく日本社会の全体性が「ざまいて」[=だまして] 開いた偽りの体系として糾弾されることになったのだった。[...] なおの告発は、激越な宗教的終末観の形態をとらざるをえなかったから、手段的な領域では非合理的であいまいだったといえる。しかし、こうした終末観的形態は、なおが既成的な文明のかたちから自らを分離し、その分離を根源的で徹底したものにするためには不可欠なものであり、なおの思想の透徹性の証左となるものであろう。
生活事実としての苦難が存在することと、そこから個性的な意味をくみあげることとは、まったくべつのことがらである。後者の道には、苦難を生きぬきそれを逆手にとる、強靱にきたえぬかれた自己がなければならない。なおは [...] みずからのはげしい苦難からかぎりないほどゆたかな意味をくみとり、私たちの世界のもっとも根源的な不正と残虐性とにたちむかったのであった。こうしてなおは、みずからの生の貧しさを、かえって、根源的なゆたかさに作り替えたのである。
 その意味で、なおは、もっともよく戦った人生の戦士だった。

読了:「出口なお 女性教祖と救済思想」

2013年7月18日 (木)

Bookcover 世田谷代官が見た幕末の江戸 日記が語るもう一つの維新 角川SSC新書 [a]
安藤 優一郎 / 角川マガジンズ / 2013-05-10
先日たまたま世田谷線世田谷駅の近辺を散歩していたら、世田谷代官屋敷という立派な史跡があった。なんでもあのへんは彦根藩(井伊家)の領地で、地元の豪農である大場家が代官として支配していたのだそうである。
 へええ、とにわかに興味を惹かれて、本屋で探して読んでみた本。幕末の大場家の当主夫妻がこまめにつけていたという日記に基づいた、軽めの歴史読み物。代官というのも、いろいろと大変だったんだそうです。

読了:「世田谷代官が見た幕末の江戸」

2013年6月26日 (水)

Bookcover 詩歌と戦争―白秋と民衆、総力戦への「道」 (NHKブックス No.1191) [a]
中野 敏男 / NHK出版 / 2012-05-26
北原白秋を手がかりに、近代日本における抒情・郷愁の発明・開発が国民総動員体制に寄与していくプロセスを描きだす。実に興味深い内容であった。
 明治期の民謡ブームの話も面白かったのだが、すでに見田宗介による社会学的分析がある由。78年刊の「近代日本の心情の歴史」という本だそうだ。興味深いテーマはとっくに掘り起こされていて、社会学者の人も大変だろうなあ...

読了: 「詩歌と戦争」

2013年6月 4日 (火)

Bookcover 戦争の論理―日露戦争から太平洋戦争まで [a]
加藤 陽子 / 勁草書房 / 2005-06

読了:「戦争の論理」

2013年4月17日 (水)

Bookcover 理想だらけの戦時下日本 (ちくま新書) [a]
井上 寿一 / 筑摩書房 / 2013-03
翼賛体制成立に至る数年間、政府が主導した「国民精神総動員運動」を手がかりに、太平洋戦争に突入する直前の日本社会を描く。
面白かった点をいくつかメモ:

Bookcover モダン・ライフと戦争―スクリーンのなかの女性たち (歴史文化ライブラリー) [a]
宜野座 菜央見 / 吉川弘文館 / 2013-02
たまたま同じ時代を扱った本が重なったけれど... こちらは日本映画の研究者による、1930年代の映画における女性の表象についての本。これは面白い本であった。
 成瀬の「乙女ごころ三人姉妹」という映画、ぜひ観てみたいものだ。。。

読了:「モダン・ライフと戦争」「理想だらけの戦時下日本」

2013年3月13日 (水)

Bookcover 昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐 (中公新書) [a]
川田 稔 / 中央公論新社 / 2011-12-17
永田鉄山、石原莞爾、武藤章、田中新一ら、昭和陸軍幹部の戦略構想に焦点を当てた本であった。
 それにしても、なんで田中新一という人は戦犯に指定されなかったんだろう...

読了:「昭和陸軍の軌跡」

2012年12月25日 (火)

Bookcover 昭和戦前期の政党政治―二大政党制はなぜ挫折したのか (ちくま新書) [a]
筒井 清忠 / 筑摩書房 / 2012-10
1924年の加藤高明内閣から五・一五事件までの8年間つづいた,戦前の政党政治期について述べる本。案の定,とても面白くて一気読み。
 特に興味深かったところをメモしておくと:

[1927年,若槻]内閣崩壊の実相は,朴烈怪写真事件で追い詰められて妥協や多数派工作を図っていたところに,金融恐慌が発生して最後のKOパンチをくらったということであった。すなわち問題は,普通選挙を控え,政策的マターよりも大衆シンボル的マターの重要性が高まっていたことを若槻が十分理解していなかったことのほうにあるのである。「劇場型政治」への無理解が問題なのであった。[...]ロンドン条約時の「統帥権干犯問題」を取り上げて,政党人自らが自分の首を絞めたと主張する人は多く,それは間違いではない。しかし,政治シンボルの操作が最も重要な政治課題となる大衆デモクラシー状況への洞察なしに,そのことだけを問題にしても,現代に起きる反省には結びつかないだろう。[...] 健全な自由民主主義的議会政治(それは政党政治である)の発達を望む者は「劇場型政治」を忌避するばかりでなく,それへの対応に十分な配慮をしておかなければ若槻と同じ運命を辿ることになろう。
多くの先進国がそうであるように,今日,自由で民主主義的な政治とは議会政治であり,議会政治とは政党政治である。政党政治は政党が自らの政策を実現するために,それを選挙民に訴え,反対党と政争を行いまた合従連衡を行う政治である。それは自派の政策を実現するために,他派と不可避的に闘争・競争を行う。ところが,日本社会ではこれらをすべて「党利党略」として忌避し批判する傾向が強いのである。[...] そのことにできるだけ寛容でなければ政党政治は維持できない。この観点が未成熟なので,日本ではメディアによる「既成政党批判」と「支持政党なし」が多数という世論調査結果が繰り返され,政党政治を充実させることよりも政党政治を補完することのほうが先に考えられるというような奇妙な現象が繰り広げられるのである。それが結局「軍部」「官僚」「警察」「[近衛文麿]新体制」などの「第三極」を導き出したことは本書が再三叙述したことであった。

なるほど...

読了:「昭和戦前期の政党政治」

2012年10月 3日 (水)

Bookcover 江戸の思想史―人物・方法・連環 (中公新書) [a]
田尻 祐一郎 / 中央公論新社 / 2011-02
「妙貞問答」から平田篤胤まで,日本近世の思想家たちを幅広く紹介した本。面白かった。ひとりひとりについての紹介がどうしても短くなってしまい,いささか不満がたまっちゃうんだけど...

読了:「江戸の思想史」

2012年8月13日 (月)

Bookcover パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い [a]
黒岩 比佐子 / 講談社 / 2010-10-08
今年読んだ本のなかでベスト・ワン,文句なしの大傑作であった。
 初期社会主義者・堺利彦と,彼が弾圧の時代を生き抜くために興した一種の編集プロダクション・売文社を中心に,明治大正の知識人の群像を描く。堺利彦という人は信念の活動家であるだけではなく,組織づくりの達人,一流のユーモリストでもあった。心の奥に暖かい灯がともるような名評伝。

 著者は一昨年,この本の上梓直後にガンで亡くなっていて,だから刊行後にこの本が得た大評判にも,少し追悼の意味が含まれているのではないか,と疑っていたのである。下衆な勘ぐりであった。

読了:「パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い」

2012年8月 6日 (月)

Bookcover 治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書) [a]
中澤 俊輔 / 中央公論新社 / 2012-06-22
著者は79年生まれの学振の人。自分より若い人の本はあまり読まないことにしているのだけれど(心が狭い...),つい読んじゃいました。
 法律ってのは,いったん出来ちゃうとひとりでに膨張していくんだなあ... と,変なところで感心した。

Bookcover 新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書) [a]
松尾 匡 / 講談社 / 2012-07-18
明治期から戦後にかけての日本の社会主義運動を紹介。意図してのことと思うが,文章がくだけすぎていて,好みが別れるところだと思う。

読了:「新しい左翼入門」「治安維持法」

2012年7月18日 (水)

Bookcover 特高警察 (岩波新書) [a]
荻野 富士夫 / 岩波書店 / 2012-05-23

Bookcover 聞き書 野中広務回顧録 [a]
/ 岩波書店 / 2012-06-29
さきほど読了。政治の世界は,やはり,怖い。。。

読了:「野中広務回顧録」「特高警察」

2012年5月10日 (木)

Bookcover 高度成長 (中公文庫) [a]
吉川 洋 / 中央公論新社 / 2012-04-21
昼飯や待ち時間のついでにさーっと読んじゃったんだけど,これは面白い本だった。高度成長のメカニズムのフローチャートに感銘を受けた。
 文献として挙げられている「経済大国を作り上げた思想:高度経済成長期の労働エートス」という本,面白そうだなあ。最近,私の父の世代の人々は仕事についてどう思っていたのか。。。と考えることが多いせいもあって,関心を惹かれる。

読了:「高度成長」

2012年3月23日 (金)

Bookcover 語りつぐ田中正造―先駆のエコロジスト [a]
/ 社会評論社 / 1998-09
98年刊。このたび閉店するジュンク堂新宿店の,閉店記念「店員さんが売りたかった本」フェアで買った本なのだが,これ,本来は版元品切れの本だと思う。手に取る機会を作ってくれた店員さんに感謝。

読了:「語りつぐ田中正造」

2012年2月29日 (水)

Bookcover 失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) [a]
戸部 良一,寺本 義也,鎌田 伸一,杉之尾 孝生,村井 友秀,野中 郁次郎 / 中央公論社 / 1991-08
なんだか再読のような気がして仕方がないのだが... 日本軍の5つの失敗(ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、インパール、レイテ、沖縄戦)についての分析を通じ、組織の失敗について検討する、とても有名な本。
 著者の先生方(組織論や外交史の研究者)の意図とは違うのだが、ひとことで失敗といっても、そこには膨大な死者たちがいるわけで、とてもつらい読書であった。

読了:「失敗の本質」

2012年2月22日 (水)

Bookcover 信徒 内村鑑三 (河出ブックス) [a]
前田 英樹 / 河出書房新社 / 2011-02-11
「純信仰の人」内村鑑三の,ちょっとクセのある評伝。偉大な人だったのだなあ。身近にいたら,ちょっと煙たい人だったかもしれないなあ。

読了:「信徒 内村鑑三」

2012年1月30日 (月)

Bookcover 大逆事件――死と生の群像 [a]
田中 伸尚 / 岩波書店 / 2010-05-29
日本近代史に残るフレーム・アップ,大逆事件についてのノンフィクション。日本各地で事件後を生きた人々に焦点を当てて,その足跡を丁寧に追跡している。
 大逆事件では24名に死刑判決,後に12名が特赦される。検事・平沼騏一郎は(のちに「欧州の天地は複雑怪奇」と云って首相を退陣した人ですね),戦中に談話録を残していて,こういっているそうだ。「被告は死刑にしたが,中に三人陰謀に参与したかどうか判らぬのがある」「陛下に減刑のご沙汰の気配はないかと桂さん[桂太郎首相]から申し上げてみた。そして特赦することとなった」実際に特赦になったのは12名だからこれは誤っているのだが,それにしても,死刑にしておいて「参与したかどうか判らぬ」って,あなた...

読了:「大逆事件」

2011年12月31日 (土)

Bookcover 農村青年社事件―昭和アナキストの見た幻 (筑摩選書) [a]
保阪 正康 / 筑摩書房 / 2011-12
全く知らなかったのだが,昭和12年に大逆事件の再来として大々的に報じられた「農村青年社事件」というのがあって,でもそれは結局のところアナキスト弾圧のためのフレーム・アップであった,のだそうだ。著者は70年代にこの事件について取材し,でも結局著作にすることがなかったのを,このたび(ある種の後悔を抱えながら)一冊にまとめた由。
 戦時中に保護観察下にあった思想犯に対する警官の態度が,戦争末期になってころっと変わってきた,という話はどこかで読んだことがあったのだが,農村青年社事件の関係者たちもそのような経験をしているのだそうで,なかにはこんな証言もあるのだそうだ。
 「昭和二十年に入ってからのことですよ。長野県警察本部の思想担当の刑事たちが当時逮捕された者の家一軒一軒を訪ね,自分は拷問しなかった,思想犯を痛めつけたことはなかったという証明書を書いてくれと言って歩いていた。実はほとんどの者は拷問されていたんです。ふざけるなと怒る者もいれば,まああのときはあのときでと証明書を作るのに協力した者もいますよ」
 ううむ。私には嗤えない。組織のなかで生きることは,ときとして滑稽で陰惨だ。いまでも変わらないと思う。

読了:「農村青年社事件」

2011年11月24日 (木)

Bookcover 賀川豊彦 (岩波現代文庫) [a]
隅谷 三喜男 / 岩波書店 / 2011-10-15
民間企業に勤めてから何度か発表させてもらった学会があって,先日大阪で大会があったので出かけてきたのだが,自分の発表がなくても,学会というのはなんとなく気が重いものであって,全く関係ない本を買って気を紛らわすのが,ちょっとした恒例になってしまっている。今回は新大阪駅の本屋で,この本と木田元さんの本を買い込んだ次第。
 賀川豊彦の戦中・戦後の行動にちょっと関心があったのだが,この本は戦前期に焦点を当てた評伝であった。賀川は社会運動のパイオニアで,貧民窟での生活にはじまり労働運動に農民運動に無産政党に生協運動,なんでもリードし,そのたびごとに共産主義に敗れ,そして最後は宗教運動に回帰するのであった。
 学会会場でマーケティングがどうこう,購買行動がどうこうという発表を聴きながら,カバンのポケットには賀川豊彦の伝記が入っているという,そのことにちょっぴり奇妙さを感じてしまったりして。。。

読了:「賀川豊彦」

2011年10月11日 (火)

Bookcover 満州事変――政策の形成過程 (岩波現代文庫) [a]
緒方 貞子 / 岩波書店 / 2011-08-19
緒方貞子さんはもともと政治学専攻だったのだそうで,この本は著者の博士論文に基づく66年刊「満州事変と政策の形成過程」の文庫化。というと随分堅苦しく聞こえるが,俺のような素人にとってもわかりやすく,かつ面白く読める本であった。
 多少そのせいで損することがあっても,やはり組織の意思決定というものには透明性がないといけないなあ,と痛感した。謀略はろくな結果を生まないようだ。

読了:「満州事変」

2011年8月 8日 (月)

Bookcover 近代日本のナショナリズム (講談社選書メチエ) [a]
大澤 真幸 / 講談社 / 2011-06-10

読了:「近代日本のナショナリズム」

2011年7月11日 (月)

Bookcover 関東大震災 (文春文庫) [a]
吉村 昭 / 文藝春秋 / 2004-08
関東大震災でもっとも多数の死者を出したのは本所の陸軍被服廠跡で,この空き地に避難してきた人々が猛火と旋風に巻き込まれ,三万八千人が亡くなった。生き残った人の壮絶な証言といったら,もう。。。
 いま調べたら,この場所は現在の都立横網町公園,両国駅の北にあるらしい。

読了:「関東大震災」

2011年6月 2日 (木)

Bookcover 日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦 (中公新書) [a]
服部 龍二 / 中央公論新社 / 2011-05-25
本屋でぱらぱらめくっただけでなんだか引き込まれてしまい,他の読みかけの本を中断して一気に読んでしまった。
 この本は日中国交回復の際の田中首相・大平外相のリーダーシップに特に焦点をあてていて,だからあやうく「昔の政治家は偉かったなあ」などというろくでもない感想を持ちそうになってしまうのだが,よく考えてみると,手放しで誉められる話ばかりではない。たとえば,北京との交渉と並行して台湾に特使として派遣された椎名悦三郎に対して,首相も外相もろくな指示をしない。椎名は好き勝手な発言をし,台湾当局を混乱させてしまう。国内事情がどうであれ,結果オーライで誉められるような話ではないと思う。

 ところで,田中訪中団とのハードな交渉のなかで,周恩来が日本の外務省高官(高島益郎条約局長)を「法匪」となじった(そして最後の歓談の場では逆に誉め讃えた)という話がある。俺が知っているくらいだから有名な話だと思うし,実際俺がこの話を読んだのも一度や二度ではないと思うのだが,この本によれば,実は「法匪」という発言は無かったのだそうだ。
 いま試しにwebを検索してみると,この「法匪」発言を引き合いに出しているページが山のようにヒットする。たった40年ほど前の話なのに,怖いものだ。

読了:「日中国交正常化」

2011年5月23日 (月)

Bookcover 大鳥圭介―幕府歩兵奉行、連戦連敗の勝者 (中公新書) [a]
星 亮一 / 中央公論新社 / 2011-04
日清戦争や閔妃暗殺についての本を読んでいると,清国に赴任した大鳥公使という人が出てくるけど,あれは戊辰戦争の旧幕府軍の若き指揮官・大鳥圭介とどういう関係にあるのか,不思議に思ったことがあった。たまたま新書で伝記が出ていたので読んでみたら,やっぱし同じ人であった。かつての朝敵ではないですか。明治時代ってよくわからん。
 やれやれ,老後はこうやって歴史の本でも読んで過ごすか。。。俺が貧乏で孤独で悲惨な老後を過ごすことになる近未来にも,まだ無料の公共図書館があるとよいのだが。

読了:「大鳥圭介」

2011年5月 6日 (金)

Bookcover 昭和とは何であったか―反哲学的読書論 [a]
子安 宣邦 / 藤原書店 / 2008-07
日本近世思想史の有名な先生による書評集。読みたい本が増えてしまった。。。

Bookcover 悪名の棺―笹川良一伝 [a]
工藤 美代子 / 幻冬舎 / 2010-10
笹川良一の評伝というより,「男・笹川良一一代記」とでもいうべき内容であった。

読了:「昭和とはなんであったか」「悪名の棺 笹川良一伝」

2011年5月 2日 (月)

Bookcover 谷干城―憂国の明治人 (中公新書) [a]
小林 和幸 / 中央公論新社 / 2011-03
谷干城という名は,西南戦争で熊本城に籠城した陸軍の指揮官として見覚えがあった程度で,読み方さえわからなかった(タニ・タテキ,ないしカンジョウと読む)。経歴から想像できるようにバリバリの国家主義者ではあるのだが,その純正保守主義ゆえに足尾鉱山事件の被害者を支援し,日露戦争では非戦論を唱えたのだそうだ。とても面白い本だった。

読了:「谷干城」

2011年4月11日 (月)

Bookcover 知と情 宮澤喜一と竹下登の政治観 [a]
御厨 貴 / 朝日新聞出版 / 2011-03-18
著者は戦後史の重要人物たちへの聞き書きで有名な政治学者。この本は宮澤喜一、竹下登、福本邦雄(戦後政治のフィクサーと呼ばれた人物)の聞き書きをもとに、二人の対照的な保守政治家の軌跡をたどる本。この先生による宮澤さんと福本さんの聞き書きはそれぞれ読んでいたのだが、この本では彼らの微妙な言い回しの真意についても解説されていて、そうだったんですか、という発見があった。
 宮澤さんの聞き書きでは、田中政権以降、突然話がプラザ合意に飛ぶ。途中の三木内閣では外務大臣、鈴木内閣では官房長官だったのに。著者によれば、これは宮澤さんの強い意向であり、語りたくなかったのだろう、とのこと。

読了:「知と情」

2011年4月 5日 (火)

Bookcover それでも、日本人は「戦争」を選んだ [a]
加藤 陽子 / 朝日出版社 / 2009-07-29
歴史家が高校生(といってもメチャクチャ優秀な生徒たち)を相手に縦横無尽に語る,日本近代の戦争の歴史。出版時(2009)に大変な評判になった本を今頃になって読了。

読了:「それでも,日本人は『戦争』を選んだ」

2011年3月 9日 (水)

Bookcover 伊藤博文―知の政治家 (中公新書) [a]
瀧井 一博 / 中央公論新社 / 2010-04
伊藤博文の政治思想家としての側面に光を当てた本。従ってこの本における伊藤はドスケベの機会主義者ではない。
維新後の伊藤は留学経験を武器に権力の階段を駆け上る。日本人の王道ですね。

読了:「伊藤博文」

2010年12月15日 (水)

Bookcover 横井小楠 (ちくま学芸文庫) [a]
松浦 玲 / 筑摩書房 / 2010-10-08
歴史にはからきし疎いし,幕末の英雄譚にもあまり関心がないので,ヨコイ・ショーナンといわれても誰のことだかわからないのである。にも関わらず買い込んだのは,ひょっとすると面白いかもと虫が知らせたからなのだが,あとでよく考えると,この夏に読んだまさかの超面白本「日本政治思想史」(渡辺浩) のなかで,この儒学者がハーバーマスやロールズに比されていたのが頭の片隅に残っていたのかもしれない。
 大当たりであった。途中で読みやめるのが難しい位に面白い内容で,睡眠時間を削って一気に読み終えた。
 酒癖の悪さで人生しくじってばかりの小楠は,しかし乞われて松平春嶽のブレーンとなり,ごく短期間ではあるが幕政を動かすほどの力を持つのである。人民の支持を失った君主はすげ替えろと言い切る,あまりにラディカルな「儒教民主主義」理論家であるにも関わらず。幕末ってほんとにわけわかんないですね。
 一番面白かったくだりをメモ。小楠は支配的学問であった朱子学からスタートし,後にその鋭い批判者となる。

彼は,朱子学の究理=格物 [道理の追求のこと] が持つ可能性を完全に検討しきることを省略し,民生の用を達する格物でないときめつけてしまったのだ。その性急さは小楠から,ヨーロッパの技術を内在的に批判する視角を奪った。

事業の学,すなわち小楠が捉えるところのヨーロッパの学は,

劣位には置かれているけれども,それ自身は独立の価値を保持している。事業の学なるゆえにますます開け,今後とも開けていくのだ。小楠には,この事業の学の内部に立ち入って,事業の学が不道徳を生み出してくる構造を見極め,事業の学を拒否あるいはつくりかえようとするまでの姿勢はない。これは朱子学の格物究理を性急に放棄した結果であると私は見る。そのため,事業の学の欠陥をカバーすることは,小楠という巨大な個性ゆえに確保している心徳の学に求めるしかなかったのだ。小楠学の継承されにくさも,おそらく,ここに起因する。
しかしこれは,十九世紀半ばの小楠にとっては,いささか苛酷に過ぎる注文だろう。[...] 異質文化の巨大な圧力にさらされていた十九世紀の小楠としては,堯舜三代を読み替え,自分をそれに一致させてヨーロッパの『事業の学』に対抗することで精一杯だったのであり,もちろんそれで十二分に意義があったのである。

読了:「横井小楠」

2010年11月22日 (月)

Bookcover 人物戦後政治 私の出会った政治家たち (岩波現代文庫) [a]
石川 真澄 / 岩波書店 / 2009-11-14

読了:「人物戦後政治 私の出会った政治家たち」

2010年10月13日 (水)

Bookcover 歌う国民―唱歌、校歌、うたごえ (中公新書) [a]
渡辺 裕 / 中央公論新社 / 2010-09
日本近代を音楽の観点から描き出すという,大変面白い本であった。
文部省唱歌にみるように,音楽とは近代日本にとって「国民づくり」のツールであった。戦時体制下,「国民音楽」は国家主義の片棒をかついだ。時代変わって1950年代中盤,「うたごえ運動」が日本を席巻する。それは共産党の指導と密接に関連しており,政治的には戦前と正反対ではあるものの,音楽を通じて新しい国民文化の創出が目指されたという点では共通している。

[うたごえ運動の中で歌われた] 『美しい祖国のために』『祖国の山河に』などの曲に繰り返し出てくる,戦争によっても失われることのなかった豊かな自然のイメージは,言ってみれば,天皇に変わって『国民』の連帯の新たな中心として機能しているようにすらみえ,そのことによって,中心となるものを入れ替えただけで,『国民』の帰属意識や連帯意識自体は損なわれずに温存されている,そんな印象を持つのです。

読了:「歌う国民」

2010年9月 4日 (土)

Bookcover 蟻の兵隊―日本兵2600人山西省残留の真相 (新潮文庫) [a]
池谷 薫 / 新潮社 / 2010-07-28

読了:「蟻の兵隊」

2010年8月 1日 (日)

Bookcover 外務省革新派 (中公新書) [a]
戸部 良一 / 中央公論新社 / 2010-06-25
東京裁判でA級戦犯として起訴された外交官・白鳥敏夫を中心に,30~40年代の皇道主義的若手外交官たちを描く。戦中を描いた小説や映画では,たいていの場合外交官は親英米的な良識派として描かれることが多いので,この本は新鮮であった。革新派官僚のなかにはのちの米大使・牛場信彦の名前もある。

読了:「外務省革新派」

2010年7月16日 (金)

Bookcover 日本政治思想史―十七~十九世紀 [a]
渡辺 浩 / 東京大学出版会 / 2010-03
意外や意外,最近読んだ本のなかでベストワンの超面白本。書名から受ける堅い印象とは異なり,碩学による歴史エッセイというべきフォーマットである。内容をメモしている時間がないが,儒学から中江兆民まで,江戸・明治期の多様な知的挑戦を生き生きと描き出す,そのあまりの面白さに一気読みしてしまった。アクチュアルかつエキサイティング。ホンモノの学者はちがう。

読了:「日本政治思想史」

2010年4月15日 (木)

Bookcover 回顧七十年 (中公文庫) [a]
斎藤 隆夫 / 中央公論新社 / 2007-08
戦前に活躍した自由主義政治家・斎藤隆夫が,死の前年,昭和23年に出版した回顧録。歴史の知識が足りないもので,恥ずかしながら混乱していたのだが,有名な「粛軍演説」とはニ・ニ六事件直後の国会演説。いっぽう衆議院を除名されたのは,盧溝橋事件以降の軍部の独走を批判する「反軍演説」のせい。ごっちゃにしてました。
その後の翼賛選挙に非推薦で出て当選。敗戦後は即座に政治活動に乗り出し,公職追放の対象にもならず,片山内閣で大臣を務めたりしている。戦前の政治家という印象があったので,意外であった。

読了:「回顧七十年」

2010年4月 8日 (木)

Bookcover 日本政治「失敗」の研究 (講談社学術文庫) [a]
坂野 潤治 / 講談社 / 2010-03-11
戦前の日本政治史における社会民主主義の系脈を辿る,という本。初出は大学の講義録や総合雑誌への寄稿などで,素人にもわかりやすい内容なのだけれど,考え事をしながら読んでいて,後半は頭にはいらなかった。もったいないなあ。機会あらば読み直したい。
 著者曰く,1910年代の吉野作造の民主主義論はいまでもなお有効である。それは現代の政治学者・佐々木毅の議論とそっくりである。佐々木毅は吉野作造の業績を知らないのである。そして吉野作造は,彼に先行する徳富蘇峰の主張が自分の主張ときわめて近いものであることを知らなかった。徳富蘇峰は,自分の主張がその6年前の福沢諭吉の主張と同じであることに言及しなかった。昭和の日本には社会民主主義がなかったのではない。「彼らは『民主化』にはつとめたが『民主主義の伝統化』にはまったくつとめなかったのである。こうして今日でも,近代日本の『伝統』といえば,『天皇を中心とした神の国』が出てくるのである」 なるほど。「伝統」というと,ついつい所与なものだと考えがちだが,ほんとは作りだされていくものなんだよな。

読了:「日本政治『失敗』の研究」

2010年4月 5日 (月)

Bookcover 日本の近現代史をどう見るか〈シリーズ 日本近現代史 10〉 (岩波新書) [a]
/ 岩波書店 / 2010-02-20
去年から岩波新書で日本近現代史のシリーズが出ていて,「幕末・維新」期から「ポスト戦後社会」期までの各9期につき1著者づつという割り振りで9巻が刊行された。この本はシリーズ最終巻で,9人の著者が質問に答える形で,担当した時期の日本の姿を語る,または執筆の舞台裏や読者からの反応を語る,という構成。本編のほうを数冊しか読んでないのにこの本を読むのも,なんだか妙なものである。
 戦前・戦後を通じての政治・経済・社会を理解する上で,自由主義と協同主義という軸を考えることができる(「占領と改革」の章)。このふたつは常に対立するわけではなくて,結びつく場合もある。たとえば自由主義派の政治家・芦田均が一時期経営していた郡是製糸会社は,養蚕農家・製糸業者の組合が母体で,コミュニティと生産活動を結びつけ,敗戦直後には経営協議会をつくって地域経済や福祉に責任を持とうとしたのだそうである。いまのグンゼですね。へえー。

読了:「日本の近現代史をどう見るか」

2009年12月30日 (水)

Bookcover “玉砕”の軍隊、“生還”の軍隊―日米兵士が見た太平洋戦争 (講談社選書メチエ) [a]
河野 仁 / 講談社 / 2001-01
第二次大戦時の日米兵士に対する膨大な聞き書きに基づく,両軍の比較社会学的分析。大変な力作で,なにごとかと思ったら,これは著者(防衛大勤務の社会学者)の博士論文なのだそうだ。

読了:12/29まで (CH)

2009年12月27日 (日)

Bookcover 日本型「教養」の運命 歴史社会学的考察 (岩波現代文庫) [a]
筒井 清忠 / 岩波書店 / 2009-12-16
この本の主題からはちょっと離れるけど,4章の付論「修養主義の思想的課題」が面白かった。
 明治初期の日本の原動力は立身出世主義であった。本でいえば,スマイルズ「西国立志篇」(「自助論」の当時の邦題),二宮尊徳「報徳記」の価値観である。ところが国家体制の整備に伴い,次第に過酷な競争が現実化し,立身出世=成功に手が届かない時代がやってくる。このプロセスで,努力による人格向上を神聖視する「修養主義」イデオロギーが確立する。著者によれば,この修養主義こそが,のちの旧制高校的な教養主義の母体となり,いわば日本版「資本主義の精神」として機能するのだ。さて明治後期,修養主義は人格修養と成功とを結びつける回路を作り出し,閉塞感に押しつぶされた青年たちを説得しなければならなかった。では,その説得戦略は?

なるほどねえ。。。

 俺は高校入学時に引っ越したもので,地元の事情を知らずに転居先の近所の公立高校に通ったのだけれど,そこは実はその田舎ではちょっとした進学校であった。卒業前にようやく気がついたのだが,同級生たちの多くは,親戚一同の期待を一身にあつめ,そのプレッシャーにあえいでいたのであった。今にして思えば,彼ら/彼女らは,自分が死ぬほど努力して一流校に入らなければならない,その主体的な理由を必死に探していたのだろう。俺はボンヤリしていたから,その苦しみがよくわからなかった。いやあ,悪いことをしたなあ。彼らがうまく出世できていますように。
 彼らはきっと,受験勉強に適応するためのなんらかの合理化方略をその手でつかみ取る必要があったのではないかと思う。「受験勉強という努力そのものに価値がある。結果は不問」とか,「努力は目的であり,かつ成功への手段でもある」とか,「弁護士になって弱い人々を救うのだ」とか。そういうの,類型化できると面白いですね。で,その類型ごとに,大学進学後の適応性を縦断調査で追いかけたりなんかして。。。

読了: 12/27まで (CH)

2009年12月16日 (水)

Bookcover 近代日本の思想家〈11〉吉野作造 (近代日本の思想家 11) [a]
松本 三之介 / 東京大学出版会 / 2008-01
井上ひさしさんの戯曲「兄おとうと」がきっかけで手に取った。
吉野作造は大正デモクラシーの主導者のひとりだったが,彼にとってのデモクラシーとは議会に基づく立憲主義のことであって,主権在民どころか,天皇主権とじゅうぶん両立可能なものだった。さらに,彼にとっての民衆とは,議員を議員の(政見ではなく)人格に基づいて選出し,道徳的に監督する役割しか持っていなかった。逆に言えば,民衆は短期的には愚かで受動的な存在であるかもしれないが,長期的にはそれなりに道徳的進歩に貢献する,と彼はみなしていた。「吉野の民衆に対する信頼を根底において支えたのは人間に対する信頼にほかならなかった」「民衆は,世界の平和幸福のために人間の営みを道徳的に監視し判定する役割を果たすべきものと,吉野によって期待されていたのである」
吉野さんが亡くなったのは1933年,満州事変の2年後である。ときどき思うのだけれど,歴史における思想家のROIってのはどんなものなんだろうか。偉大な思想家が一人いると,その人のおかげで世の中はどのくらい良くなるといえるのかしらん?

読了:12/15まで (NF)

2009年12月 7日 (月)

Bookcover 日本人の戦争観―戦後史のなかの変容 (岩波現代文庫) [a]
吉田 裕 / 岩波書店 / 2005-02-16
75年,昭和天皇は記者会見に答えてこう述べた。「原子爆弾が投下されたことに対しては遺憾には思ってますが,こういう戦争中であることですから,どうも,広島市民に対しては気の毒であるが,やむを得ないことと私は思ってます」 それから32年後,防衛大臣が講演でこう述べた。「原爆が落とされた長崎は、本当に無傷の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で今、しょうがないなという風に思っているところだ」 で,この大臣はこの「しょうがない」発言のせいで辞任する羽目になった。辞任は当然だったと俺は思うが,でも,この政治家は怒ってもいいよね。陛下も同じ事をおっしゃってるのに,なぜ私だけがこんな目に,不公平だ,って。

読了:12/06まで (CH)

2009年12月 1日 (火)

Bookcover 北朝鮮帰国事業 - 「壮大な拉致」か「追放」か (中公新書) [a]
菊池 嘉晃 / 中央公論新社 / 2009-11-26
北朝鮮への帰還運動についてまとめた本。前に読んだ本「北朝鮮へのエクソダス」では,在日朝鮮人の排除をもくろむ日本政府の積極的関与が強調されていたが,この本によればそれは考えすぎである由。

読了:11/30まで(CH)

2009年10月28日 (水)

Bookcover 禅と戦争―禅仏教は戦争に協力したか [a]
ブラィアン・アンドルー ヴィクトリア / 光人社 / 2001-05
禅宗の高僧たちの戦争協力について述べた本。

いまこの本をランダムにぱらぱらとめくると,たとえばこんな文章がみつかる。「清泉は読者たちに禅の精神に満ちた武士道が,その時代の日本における意義の深さを知らせたかったのであろう。」(p.158)「もしも今まで述べたように集団仏教のすべてが真実であるとすれば,禅宗としてはまったくもってそのままあてはまるものとなる」(p.183)
というわけで,翻訳としての良し悪し以前に,なんだか日本語として妙なのだが。。。しかし,この本を翻訳するというのは,想像するだけで気の遠くなるような作業だ。仏教用語は頻出するし,明治以来の日本語文献の大量の引用について,いちいち原文を探さないといけないわけだし。その大変な作業のおかげで,我々もこの専門書を気軽に読むことができるのだから,文句を言ってはバチが当たる。

読了:10/27まで (CH)

2009年10月18日 (日)

Bookcover 歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書) [a]
溝口 敦 / 文藝春秋 / 2009-06
新宿・歌舞伎町の戦後史。
 歌舞伎町という町名は,戦後すぐに歌舞伎座を誘致しようという計画があったからなのだが,その計画があっという間に頓挫した後でも,ここに劇場街を建設しようという関係者の熱意は冷めなかった。事態が好転したのは,50年の「東京文化産業博覧会」開催で,この博覧会自体は赤字だったのだけれど,このときに建てたパビリオンが娯楽施設に転用され,歌舞伎町の核になった。たとえば「産業館」はスケートリンクになり,これが現在の新宿東急ミラノだそうだ。この頃の事業家たちには,当時三国人と呼ばれた中国・台湾・朝鮮出身者が多く,たとえばミラノの左斜め前のオデオン座(旧「社会教育館」)は東亜興業,すなわち韓国系。その隣のヒューマックスパビリオン(旧「婦人館」)を経営するヒューマックスグループは華僑系なのだそうだ。へえー,知らなかった。

読了:10/18まで (CH)

2009年8月31日 (月)

夏も終わってしまうというのに,バカンスともリフレッシュとも無縁のまま,土日も出社しひたすらデータ解析,mplusがぶんぶん回っている隙に仕事と全然関係ない本をぱらぱらめくるのが唯一の息抜き,という。。。泣くぞ,泣いちゃうぞ。

Bookcover ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書) [a]
小林 英夫 / 平凡社 / 2009-08
 ノモンハン事件の悲惨な結末にもかかわらず,主導者の関東軍参謀たちが責任をとらなかったことはよく知られているが,そのことと前線指揮官たちの処遇とはコインの裏表であった。状況判断により命令なしに撤退した指揮官たちは厳しく処罰され,自決が相次いだ。それには二つの意味があった。一つは,敗北の責任を取らせるための生け贄。もうひとつは,彼らが事件の実態をもっともよく知っており,もし彼らが真実を語りはじめれば,当時の日本人が共有していたノモンハン事件の虚像が崩壊しかねなかった,という点。
 歴史の話をすぐに手近な経験に当てはめるのは,なんだかオヤジくさくて嫌なんだけど,でもやっぱり,こういう話を読むと。。。失敗から学習しない組織ってのは,そのぶん退職者を必要とするのかもなあ,などと,感慨にふけってしまう。

読了:08/29まで (CH)

2009年8月12日 (水)

Bookcover 貧民の帝都 (文春新書) [a]
塩見 鮮一郎 / 文藝春秋 / 2008-09

読了:08/12まで (CH)

2009年5月24日 (日)

Bookcover 近衛文麿―教養主義的ポピュリストの悲劇 (岩波現代文庫) [a]
筒井 清忠 / 岩波書店 / 2009-05-15
なんとなく買ってみたんだけど,本屋の帰りの電車でめくり始めたらこれが面白くて,他の本を中断して読み終えた。予想外のヒット。
 いくつかメモしておくと,

読了:05/24まで (CH)

2009年4月 5日 (日)

Bookcover 決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫) [a]
半藤 一利 / 文藝春秋 / 2006-07
玉音放送のあった8月15日の未明,阿南陸相は官邸の廊下で切腹するが,なかなか絶命しない。その最中,官邸の別室で,中佐たちが次のように囁きあっていたのだそうだ。「俺はいまここに大臣の印鑑を預かっている。やろうと思えば...全軍蹶起を大臣命令でだせるのだ」「ニセの大臣命令などすぐばれる。それに,そんなことをしても大臣がはたして喜ばれるだろうか」「いまのは冗談だよ」
なるほど,混乱のさなかにこそ,その人の心の奥底があらわになるものなのだろう。

読了:04/05まで (CH)

2008年12月21日 (日)

Bookcover 大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書) [a]
福永 文夫 / 中央公論新社 / 2008-12
大平元首相はこう書いているそうだ。「政治は,もともとデスティネーションのない航海のようなものである。一日一日を何とか難破しないように安全に航海しなければならない。しかし乗船した人々は,明日の寄港地と最終目的地を知り,一刻も早くそこに到着することを望む。しかし,もともとデスティネーションはない。船客の願いは多彩であり,その欲求不満も限りはない。航海の責任をあずかる者の苦悩は深い。(中略) しかし,いかに悩みは深くとも,われわれは,航海を続けなければならない。しかも安全に続けなければならない」
 ついつい我々は,えらい人に対して将来についての明確なビジョンのようなものを求めてしまうけれども(「美しい国へ」とか「とてつもない日本」とかね),正味のところは上記の通りだろう。あまりに明確な行き先を掲げるリーダーに対しては,それはそれで眉に唾つけておいたほうがよさそうだ。政治家にせよ,経営者にせよ。

読了:12/21まで (CH)

2008年11月 3日 (月)

Bookcover 日本の百年〈9〉廃墟の中から―1945~1952 (ちくま学芸文庫) [a]
鶴見 俊輔 / 筑摩書房 / 2008-06-10
61年刊の戦後史シリーズ,その9巻目。終戦直後の世相を記録した内容。エピソードがどうしても東京に偏ってしまうのは,致し方のないことなのだろう。
 8月15日,民間の尊皇主義団体が内大臣木戸幸一の宿泊先を襲撃し警官を斬り(木戸は宮中にいて無事だった),その後愛宕山に立てこもり7日間に渡り籠城,最後は手榴弾で自爆するという事件があったのだそうだ。愛宕神社は勤め先の近所で,ときどき散歩にいくのだが,そんな事があったとは知らなかった。
 玉音放送を聞いても全軍が武器を置いたわけではなく,特に厚木航空隊は強硬な抗戦派で,だから愛宕山の籠城の折りにも飛行機が飛んできて,取り囲む警官隊に徹底抗戦を訴えるビラを撒いた由。パイプをくわえたマッカーサーがタラップを降りてくるあの有名なシーンは厚木基地でのものだが,占領軍が第一陣の到着地をこともあろうに厚木に指定してきたもので,日本側としては「厚木基地ではいま反乱が起きているから他の場所に変えてください」ともいえず,おかげで鎮圧に大変な苦労をしたそうだ。うーん,よくあるよなあ,そういうことって。

読了:11/03まで (CH)

2008年9月28日 (日)

Bookcover 日本の百年〈10〉新しい開国―1952~1960 (ちくま学芸文庫) [a]
鶴見 俊輔 / 筑摩書房 / 2008-07-09
'61年刊の本の復刊。明記されていないが,ほとんど鶴見俊輔の単著らしい。庶民の聞き書きや社会風俗に焦点を当てた内容で,当時として野心的な試みであったのだろうと想像できる。
 61年の時点で振り返った戦後像とは,なるほどこういうものだったか,と興味深く読んだ。「あらゆるブームのなかでもっとも不可解なものは,1960年夏のダッコチャンのブームだった」なんてね。

Bookcover それからの海舟 (ちくま文庫) [a]
半藤 一利 / 筑摩書房 / 2008-06-10

読了:09/28まで (CH)

2008年8月25日 (月)

Bookcover 永訣の朝 (河出文庫) [a]
川嶋 康男 / 河出書房新社 / 2008-08-31
数年前に札幌の博物館ではじめて知ったのだが,終戦直後,樺太にあった真岡という町にソ連軍が攻め込み,電話交換手の若い娘たちが次々と毒を呷って死んだ事件があったのだそうである。玉音放送の5日後の出来事である。その経緯を描いたノンフィクション。
集団自決は具体的な危険に迫られてというより,一種のマス・ヒステリーのようなものだったらしい。本当に悲劇的な話だ。
とはいえ,同時期には引き揚げ船が撃沈されたりソ連軍に砲撃されたり朝鮮人が虐殺されたり,たくさんの人が亡くなっているわけで,それらの無名の死者たちを棚に上げて自決した乙女たちだけを称揚するのも,なんだか変な話だと思う。

読了:08/25まで (CH)

2008年8月17日 (日)

Bookcover 学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書) [a]
高田 里惠子 / 中央公論新社 / 2008-07

Bookcover 阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫) [a]
佐野 眞一 / 新潮社 / 2008-07-29

Bookcover 最後の幕臣 小栗上野介 (ちくま文庫) [a]
星 亮一 / 筑摩書房 / 2008-08-06
幕末に切れ者の幕府高官として知られた小栗上野介についての評伝。偉い人だったかもしれないけど,すごく魅力的な人とは言い難いですね。

読了:08/17まで (CH)

2008年6月29日 (日)

Bookcover 甘粕正彦 乱心の曠野 [a]
佐野 眞一 / 新潮社 / 2008-05
文革の頃に日中共産党の関係が悪化し,日本の共産党から親中派の活動家たちが離脱したが,そのなかでいまでも活動を続けている党派のひとつが,下関にある日共左派である。反米愛国調の見出しが踊る新聞を出していて,もう亡くなっている党指導者がいまだ編集主幹ということになっていて,たしか劇団もやっていて,雰囲気がなんだかカルト的だと揶揄する文章を読んだ覚えがあるが,なにしろ遠く山口県の話だからよく知らない。
 かの甘粕大尉について書いたこの本を読んでいたら,突然その話が出てきてびっくりした。甘粕は満映で左翼からの転向者を多く配下に置いたが,その一人に三村亮一という非合法共産党の活動家がおり,この人が満州で結婚したのが檀一雄の妹の檀寿美さんという方(ってことは女優の檀ふみの叔母さんですね)。1917年生まれのこの方は現在,下関の長周新聞社(つまり,日共左派の機関紙)で「住み込みのスタッフとしてイラストなどの仕事をしている」のだそうで,檀一族の間では「毛沢東おばさん」と呼ばれているのだそうである。へえーー。
Bookcover 広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書) [a]
服部 龍二 / 中央公論新社 / 2008-06

読了:06/29まで (CH)

2008年4月 6日 (日)

Bookcover 戦う石橋湛山―昭和史に異彩を放つ屈伏なき言論 [a]
半藤 一利 / 東洋経済新報社 / 2008-01
戦争に向かう日本にあって,石橋湛山はひとり軍部を批判し,決して屈服することがなかった。素晴らしい。では,時代の流れを変えるためには,いったい何人の石橋湛山がいればいいんだろうか?

読了:04/06まで (CH)

2008年2月24日 (日)

Bookcover 幕末の大奥―天璋院と薩摩藩 (岩波新書) [a]
畑 尚子 / 岩波書店 / 2007-12-20
適当に読み飛ばしてしまった。残念。

読了:02/24まで (CH)

2008年2月17日 (日)

Bookcover 占領と改革―シリーズ日本近現代史〈7〉 (岩波新書) [a]
雨宮 昭一 / 岩波書店 / 2008-01-22
敗戦以前と以後の,政治思潮と社会体制の共通性を強調する内容であった。ふうん。

読了:02/17まで (CH)

2008年2月11日 (月)

Bookcover 東京裁判 (講談社現代新書) [a]
日暮 吉延 / 講談社 / 2008-01-18

読了:02/11まで (CH)

2008年2月10日 (日)

Bookcover 昭和天皇 (岩波新書) [a]
原 武史 / 岩波書店 / 2008-01-22
昭和天皇の,特に祭祀を司る王としての側面に焦点を当てた本。面白かった。ビックス「昭和天皇」を読んでいたときにも思ったのだけど,税金払っているわりには,我々は天皇について案外なにも知らないものだ。
 貞明皇太后(昭和天皇の母)は大変に宮中祭祀を重視しており,第二次大戦の戦況悪化とともにますます神懸かり,天皇はそれに反発しながらも引きずられていったのだそうだ。天皇の自然科学者としての側面と祭祀への熱意とはいっけん矛盾するようだが,著者によれば,生物学者が宗教に関心を持つのは珍しい事ではない由。
 昭和天皇独白録では,講和を目指した理由として,伊勢神宮・熱田神宮が米軍の制圧下におかれたら三種の神器が守れなくなると思ったから,と述べられている箇所がある(臣民を救う,なんていうのは二の次である。もちろんそういうものであろう)。戦後すぐに伊勢神宮に参拝した際の皇后の記録には,参拝して「親しく事のなりゆきをわびさせられ」。。。というくだりがあるのだそうだ。昭和天皇は戦争について,結局は誰にも謝罪しなかったといわれているが,ご先祖に対してはまた違ったんですね。

読了:02/10まで (NF)

2008年1月 8日 (火)

Bookcover 西南戦争―西郷隆盛と日本最後の内戦 (中公新書) [a]
小川原 正道 / 中央公論新社 / 2007-12
明治政府の高官たちも,まさか西郷さんが挙兵するとは思わなかったのだそうだが,その西郷さんは薩摩の若者たちに祭り上げられるあまり,かえって決定から隔離されていたのだそうだ。なるほど,カリスマ的指導者というのも良し悪しだなあ。

読了:01/08まで (CH)

2007年12月 9日 (日)

Bookcover 中国戦線はどう描かれたか―従軍記を読む [a]
荒井 とみよ / 岩波書店 / 2007-05-11
林芙美子を中心に,従軍作家の文章について論じた本。著者はもう退官した先生らしくて,本のスタイルは研究書というよりエッセイに近い。軍部のチアリーダーと化した林芙美子に対して,しかし複雑な共感を隠さないところが興味深かった。
 最終章はまさにエッセイという感じの内容で,朝日新聞の投稿歌壇のとある常連さんの作品に心惹かれ,その人が従軍の記憶を歌った投稿作を日々メモし続けたあげく,ついに新聞社を通じてその人(佐藤文夫さんという人)に連絡をとってしまうのである。その作例:「帰還してやさしかりしは久里浜の砂なり老いて踏みにゆきたり」

読了:12/09まで (CH)

2007年11月25日 (日)

Bookcover 明治を生きた会津人 山川健次郎の生涯―白虎隊士から帝大総長へ (ちくま文庫) [a]
星 亮一 / 筑摩書房 / 2007-11
艱難辛苦をくぐり抜け帝大総長にまでなった,会津出身の物理学者の伝記。日本の慈善活動の始祖・山川捨松はこの人の妹だそうだ。
 日経の「私の履歴書」欄と同じで,正直なところ,偉くなってからの話はつまんない。

読了:11/25まで (CH)

2007年11月 1日 (木)

Bookcover 沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫 [a]
/ 新潮社 / 1999-07-28

Bookcover 知られざる証言者たち―兵士の告白 [a]
太平洋戦争研究会 / 新人物往来社 / 2007-07

Bookcover 枢密院議長の日記 (講談社現代新書) [a]
佐野 眞一 / 講談社 / 2007-10-19

 ちょうど大本営参謀・瀬島龍三についての本を読んでいるときに風邪を引いた。鼻水,寒気,それから頭痛。
 俺は特に強健でも病弱でもないが,熱を出して寝込むとものすごい悪夢をみるという特徴があって,だから風邪のなにがコワイといってあの長い長い夜が怖いのである。たしか最初の経験は学生時代で,卒論提出の数日前の夜,チョムスキーがホワイトボードの前に立ち,お前の卒論はくだらない,本当にくだらない,犯罪的にくだらないからその激しい頭痛は決して治ることがないし朝も決してやってこない,いますぐ根本的に反省し生まれたあたりからやりなおしなさい,と論理的に説明してくれた(日本語で)。明け方になって,ちがうこれは妄想だ,頭が割れそうなくらいに痛いのは風邪を引いているからだと気が付いたときには,安堵で身体中が溶けそうになった。
 妄想の内容はそのとき考えていることに強く影響される。だから戦中戦後史の本を読んでいるときに風邪を引くのはいかにも具合がわるい。掛け布団を重ねて寝込んだところ,旧満州でソビエト軍に追われながら女性と子どもを次々に刺し殺し,最後は自分も。。。という夢を見始めて,これはいかん,いま寝るわけにはいかん,と青ざめた。
 で,布団に潜り込んでかわりに手にとったのが「知られざる証言者たち」という本で,これは戦中体験の聞き書きではあるものの,ちょっとくだけた内容なので(戦艦大和ではいかに男色が多かったか,とか),具合がいいんじゃないか,と思ったのである。間違っていました。ガダルカナル島の密林を舞台にした,ちょっとここでは文字に出来ない,とんでもない内容の夢をみました。
 運悪く,枕元に積んであるのはたまたま現代史の本ばかりだった。そのなかでは最も気楽そうな,記録魔の宮内官僚が残した膨大な日記についての本を読んだ。面白い本だったが,学習院大のキャンパスで家柄の良い青年たちに取り囲まれ,徹底的に馬鹿にされる夢をみた。
 本棚から探すとしても,アカデミックな本やビジネス書はもちろん論外である。布団に座り込み途方に暮れた末,思い切って起き出して,四コママンガの傑作「OL進化論」(既刊27冊)を手当たり次第に読みまくり,ようやく短い眠りを得た。秋月りすさんに心から感謝。お歳暮でも送りたい心境である。
 

読了:11/01まで (CH)

2007年10月14日 (日)

Bookcover キメラ―満洲国の肖像 (中公新書) [a]
山室 信一 / 中央公論新社 / 2004-07
ここんところずーっと持ち歩いていた本。新書とは思えない重くてしんどい内容で,読み進めるのが大変だった。
 満州国の成立から崩壊までを追いかける内容なのだが,焦点は細かな史実そのものではなく,日本の近代史における「満州国」の位置づけにある。だから結局は,日本にとってアジアとはなにか,我々にとって国家とはなにか,という話になってしまう。一読しただけでげっそり疲れるのも道理である。
 橘樸(たちばなしらき)という人がいて,中国ナショナリズムを直視し日本人の偏見に警鐘を鳴らしたリベラルな中国研究者であったのだが,この人は結果的に満州国初期"王道主義"のイデオローグとなった。その複雑ないきさつからは,俺たちが政治に向かい合う上でのさまざまな教訓を得ることができる,ような気がするんだけど,なにしろ複雑な話だもんで,よく理解しきれない。うぐぐぐ。

読了:10/14まで (CH)

2007年9月12日 (水)

Bookcover アジア・太平洋戦争―シリーズ日本近現代史〈6〉 (岩波新書) [a]
吉田 裕 / 岩波書店 / 2007-08-21
日本にはアメリカナイゼーションの長い歴史があって,太平洋戦争のあいだでさえそれが根絶やしにされることはなかった。42年には丸亀の女学校の生徒が捕虜にサインを求めた事件があったし,日本兵の間で中国兵の蔑称はあったが(「チャンコロ」とか) 米兵の蔑称はなかった。云々。なるほど,考えても見なかった。俺の祖父母の世代の日本人が,意外なほどあっけなく占領を受け入れ「敗北を抱きしめ」るに至った背景には,それなりの底流があったということなんだろうな。

読了:09/12まで (CH)

2007年8月 4日 (土)

Bookcover 軍神―近代日本が生んだ「英雄」たちの軌跡 (中公新書) [a]
山室 建徳 / 中央公論新社 / 2007-07
ここ数日の通勤本。マーケティングとも心理学とも関係のない本は,なんでこんなに面白いのでしょうか。
 日露戦争の「軍神」広瀬中佐の巨大な銅像が,かつて万世橋駅前の広場に立てられ東京名物となっていたのだそうだ。万世橋駅ってのはこないだ閉館した交通博物館のところだが,駅前広場ってどこだろう? どうやら銅像があったのは博物館の郵便局側,黒い機関車が置いてあった辺りらしいのだが,うーん,どうもぴんとこない。
 この銅像は昭和二十二年,占領軍の指示ではなく日本側の判断で,取り壊されたのだそうである。

読了:08/04まで (CH)

2007年7月 9日 (月)

Bookcover 満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書) [a]
加藤 陽子 / 岩波書店 / 2007-06-20
いまAmazonをみたら,この本のカスタマーレビューには,この本の内容とは全然関係のない主張が何件も書きつけてある(慰安婦が云々,朝日が云々)。たぶん同じ人だろうけど,面白いことに,本の「おすすめ度」はどれも満点にしてある。あきらかに読んでもいない本なのだから,どう評価してもよいだろうに,なぜだろうか。「おすすめ度」を高くしたほうが,スパムと判断されにくいのだろうか。

読了:07/09 (CH)

2007年6月22日 (金)

Bookcover 北朝鮮へのエクソダス―「帰国事業」の影をたどる [a]
テッサ・モーリス・スズキ / 朝日新聞社 / 2007-05-08
オーストラリアの日本研究者が,50年代末の北朝鮮への帰国事業について書いた本。特に前半部分が大変勉強になった。帰国事業は日本政府にとって,在日朝鮮人を厄介払いするという意味合いがあった由。

読了:06/22まで (CH)

2007年6月12日 (火)

Bookcover 大本襲撃―出口すみとその時代 [a]
早瀬 圭一 / 毎日新聞社 / 2007-05-23
戦前の大本教弾圧について関心があったので,このような本が出たのはありがたい。悪くない本だと思う。
 しかし,書き手が二代目教主に惚れ込んでしまっている点は評価が分かれるところだろう。80年代の内部分裂の話には触れていないし,大本系の新宗教についても記述がないし,巻末は現教主のインタビューだし,これでは大本の宣伝本だと受け取られても仕方がない。毎日新聞はいったいどうしちゃったんだろう?

読了:06/12まで (CH)

2007年5月20日 (日)

Bookcover 日清・日露戦争―シリーズ日本近現代史〈3〉 (岩波新書) [a]
原田 敬一 / 岩波書店 / 2007-02-20

読了:05/20まで (CH)

2007年5月13日 (日)

Bookcover 権力の病室―大平総理最期の14日間 [a]
国正 武重 / 文藝春秋 / 2007-04

読了:05/13まで (CH)

2007年5月 3日 (木)

Bookcover 大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書) [a]
成田 龍一 / 岩波書店 / 2007-04-20

読了:05/03まで (CH)

2007年4月20日 (金)

Bookcover 表舞台 裏舞台──福本邦雄回顧録 [a]
福本 邦雄 / 講談社 / 2007-04-10
戦後政治の聞き書きシリーズ。福本邦雄という人は岸内閣で官房長官の秘書官,その後長く政界のフィクサーと呼ばれたひとだそうだ。なんと,「福本イズム」で知られる戦前の共産党指導者・福本和夫の息子なんだそうである。ひえー。
 これでもかというくらいにどろどろとした話が淡々と語られていて,俺のような素人にも面白く読めた。

読了:04/20まで (CH)

2007年4月 1日 (日)

Bookcover 外交激変元外務省事務次官柳井俊二 (90年代の証言) [a]
五百旗頭 真,伊藤 元重,薬師寺 克行 / 朝日新聞社 / 2007-03-07
90年代偉い人インタビューの第三弾。外務省の偉い人というのはこういう風に考えるのか,とあれこれ感心した。
 湾岸戦争のときに自衛隊を海外派遣しようという法案をつくったのだが(結局廃案になった),外務省のなかでも事務次官(栗山尚一)が強硬に反対し,ハト派の政治家が妥協してもこの人は一向に折れないもので,朝まで議論になったそうだ。この栗山さんという人は,最近首相の靖国参拝を批判して,売国奴呼ばわりされている人である。一言で官僚といっても,いろいろな人がいるものだ。

読了:04/01 (NF)

2007年3月18日 (日)

Bookcover 二・二六事件とその時代―昭和期日本の構造 (ちくま学芸文庫) [a]
筒井 清忠 / 筑摩書房 / 2006-10
1920-30年代の日本は大衆社会化が進行し,思想面でも社会の平準化への志向が顕著になった。その原型として,(1)社会主義思想,(2)総力戦思想(永田鉄山とか),(3)一君万民主義があった。岸信介ら革新官僚の社会観はこの3つを混ぜ合わせたもので,中には社会党に入党寸前の官僚もいた(以上は2章から)。へええ。

読了:03/18まで (CH)

2007年2月26日 (月)

Bookcover 昭和史の教訓 (朝日新書) [a]
保阪 正康 / 朝日新聞社 / 2007-02

読了:02/26まで (CH)

2006年11月30日 (木)

Bookcover 天皇と政治―近代日本のダイナミズム [a]
御厨 貴 / 藤原書店 / 2006-09

読了:11/30まで (CH)

2006年11月18日 (土)

Bookcover ミッション・スクール (中公新書) [a]
佐藤 八寿子 / 中央公論新社 / 2006-09
明治期以来のミッションスクールのイメージの変遷を辿る,という本。ある意味どうでもいい話ではあるが,でもなかなか面白い内容であった。
著者が精魂込めて打ち込んだ研究の精髄を,晩飯食べながら小二時間で読んじゃえるんだから,新書というのはありがたいものですね。

読了:11/18まで (CH)

2006年11月12日 (日)

Bookcover 90年代の証言 宮澤喜一―保守本流の軌跡 [a]
/ 朝日新聞社 / 2006-11
宮澤元首相の聞き書き本はたくさんあって,俺も数冊読んだことがあるが,この本を含め,どれも滅法面白い。
この人はかつて「東京‐ワシントンの密談」という有名な本を書いているのだが,なぜそんな本を書いたのか,という質問にこう答えている。サンフランシスコ講和会議のあと,鳩山・岸などの公職追放組が政治に復帰しはじめ,吉田茂が退陣する。宮澤さんはその時すでに政治家だったが,もう終わった,と思ったのだそうである。「中央政界でまさに『55年体制』ができているときに,私は『そんなことは俺の知ったことではない』という気持ちがありまして,資料を持って軽井沢にこもって,とにかくいっぺんまとめておこうと思って書いたわけです」「それはやはり,鳩山さんに代表される追放復活者の方々の顔ぶれをみて,彼らの信条通りの政治が実現すれば,明らかに戦前にさかのぼることになるわけですから。私たちとは明らかに違う人たちが戻ってきたということがはっきりしていましたからね」

読了:11/12まで (CH)

2006年9月12日 (火)

Bookcover 巨魁―岸信介研究 (ちくま文庫) [a]
岩川 隆 / 筑摩書房 / 2006-09
原著は77年刊(岸信介はまだ生きているわけである)。岸信介について書かれた最初期の作品であるらしい。おそらくは安部さんに当て込んで再刊されたのだろう。
Bookcover アジア主義を問いなおす (ちくま新書) [a]
井上 寿一 / 筑摩書房 / 2006-08

読了:09/12まで (CH)

2006年8月31日 (木)

Bookcover 陸軍中野学校 情報戦士たちの肖像 (平凡社新書) [a]
斎藤 充功 / 平凡社 / 2006-08-10

Bookcover “敗戦”と日本人 (ちくま文庫) [a]
保阪 正康 / 筑摩書房 / 2006-08

Bookcover 昭和の空白を読み解く〈昭和史 忘れ得ぬ証言者たち Part2〉 (講談社文庫) [a]
保阪 正康 / 講談社 / 2006-08-12

Bookcover 日本の失敗―「第二の開国」と「大東亜戦争」 (岩波現代文庫) [a]
松本 健一 / 岩波書店 / 2006-06-16

読了:08/30まで (CH)

2006年8月 6日 (日)

Bookcover 溥儀―清朝最後の皇帝 [a]
入江 曜子 / 岩波書店 / 2006-07-20

Bookcover われ巣鴨に出頭せず―近衛文麿と天皇 [a]
工藤 美代子 / 日本経済新聞社 / 2006-07
あれもこれもスターリンのせいである由。H.ノーマンと都留重人の策謀によって近衛文麿は過重な責任を負わされたとかなんとか(ノーマンが最後までコミュニストであったかのような書きかたである)。うーん,面白かったけど,これってちょっと偏ってないか?

読了:08/06まで (CH)

2006年6月18日 (日)

Bookcover 戦後戦記 中内ダイエーと高度経済成長の時代 [a]
佐野 眞一 / 平凡社 / 2006-06-13
ベストセラーになった「カリスマ」の後日譚にあたる本。堤清二との対談が滅法面白かった。

読了:06/18まで (CH)

2006年6月 9日 (金)

Bookcover 吉田茂―尊皇の政治家 (岩波新書 新赤版 (971)) [a]
原 彬久 / 岩波書店 / 2005-10-20
吉田茂は欧米的教養を備え,軍部の専横を嫌っていたけれど,「民主主義政治家であったかどうかは疑わしい」,と宮沢喜一さんが述べている由である。ふうん。

読了:06/09まで (CH)

2006年5月24日 (水)

Bookcover 評伝 緒方竹虎―激動の昭和を生きた保守政治家 (岩波現代文庫) [a]
三好 徹 / 岩波書店 / 2006-04-14
偉い人の評伝。なんだかアアソウデスカという気分である。朝日新聞の主筆として戦争協力の責任を問われ公職追放されたことについて,それによって他の幹部が責任を免れたのだから悔いはない,と述べている由。当事者には切実なんだろうけど,そんなことを云われてもなあ。

読了:05/24まで (CH)

2006年5月 7日 (日)

Bookcover 危機の宰相 [a]
沢木 耕太郎 / 魁星出版 / 2006-04
77年に発表された作品に手をいれたもの。ふーん。

読了:05/07まで (CH)

2006年4月 9日 (日)

Bookcover 長州戦争―幕府瓦解への岐路 (中公新書) [a]
野口 武彦 / 中央公論新社 / 2006-03

思えば去年の3/31に大学を引き払い,翌日からいきなり民間企業に勤めたのであった。今年の3/31はその会社の机を片づけ,週明けから全く毛色の違う会社に通っている。やれやれ。
自分で望んだことであっても,上司や環境に恵まれても,やはり転職というのはそれなりに疲れるものだ。なにも大それたことは目指していないのに,なんでこんなことになるのかしらん。来春こそは心穏やかな4月を迎えたい。

読了:04/09まで (NF)

2005年10月 6日 (木)

Bookcover 戦後史 (岩波新書 新赤版 (955)) [a]
中村 政則 / 岩波書店 / 2005-07-22
戦後社会史を個人的思い出話を織り交ぜてつづったもの。こんなのを岩波新書から出すなんて,さぞや偉い人なのだろう。

読了:10/06まで (CH)

2005年9月 4日 (日)

Bookcover 日本軍閥暗闘史 (中公文庫 R 17) [a]
田中 隆吉 / 中央公論新社 / 2005-07
東京裁判で検察側証人になった軍人が書いた手記。ふーん。
Bookcover 私の戦後六〇年 日本共産党議長の証言 [a]
不破 哲三 / 新潮社 / 2005-08-20
意外な版元なので期待してしまったのだが,別に新日本出版社から出ていてもおかしくない内容だった。ほんとは六全協までの話を期待してたんだけど,それは無理にしても,もうちょっと突っ込んだ打ち明け話があってもよさそうなものだ。残念。

読了:09/04まで (CH)

2005年6月19日 (日)

Bookcover 甘粕大尉 (ちくま文庫) [a]
角田 房子 / 筑摩書房 / 2005-02-09
ここしばらくの風呂の友であった。

読了:06/19 (CH)

2005年4月27日 (水)

Bookcover 中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義 [a]
中島 岳志 / 白水社 / 2005-04
こうなったらSEMをやるしかないと決意し(まさかいまから勉強する羽目になるとは思いもよらなかったぞ),定時に退社して,閉店間際の新宿ジュンク堂で豊田秀樹の本を手に入れた。早急に帰宅して勉強するはずが,ゲウチャイでラーメン喰ったついでにブックファーストに寄ったのがいけなかった。帰りの電車でこの本を読み始めたらもうとまらなくなり,エクセルシオールでも風呂でも読み続け(中盤に倉田真由美で一服したりして),さきほど読了。いやあ面白かった。著者は75年生まれの学振,嫌になっちゃうなあもう。

読了:04/27 (CH)

2005年3月26日 (土)

Bookcover 昭和戦後史の死角 (朝日文庫) [a]
保阪 正康 / 朝日新聞社 / 2005-02
先週からぱらぱらめくっていた本。だいたい読んだと思うので,読了にしちゃおう。

読了:03/26 (CH)

2005年3月14日 (月)

Bookcover 聞き書 宮沢喜一回顧録 [a]
/ 岩波書店 / 2005-03-04
それなりに面白く読んだのだが,なにぶん知識不足で,わからない話が多いところがもどかしい。

読了:03/14まで (CH)

2005年2月14日 (月)

Bookcover 関東軍 (講談社選書メチエ) [a]
中山 隆志 / 講談社 / 2000-03-10
ノモンハン作戦を指揮した辻政信は,責任を取ることもなく終戦まで陸軍の中枢にあり,戦後は東南アジアに潜伏,戦犯時効後に手記を発表してベストセラー,参院議員になったがなぜかラオスで失踪した由。へー。

読了:02/14まで (CH)

2005年2月 4日 (金)

Bookcover 流言・投書の太平洋戦争 (講談社学術文庫) [a]
川島 高峰 / 講談社 / 2004-12-11
著者は若い人。へー。

Bookcover 言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書) [a]
佐藤 卓己 / 中央公論新社 / 2004-08
いろいろ考えるところあったが,詳細略。素晴らしい本であった。

読了:02/04まで (CH)

2004年12月23日 (木)

Bookcover 昭和史 忘れ得ぬ証言者たち (講談社文庫) [a]
保阪 正康 / 講談社 / 2004-12

読了:12/23 (CH)

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