elsur.jpn.org >

2018年9月19日 (水)

 久々にスキャン・パネル・データについて考える機会があって(生計のためになんでもやるけど、我ながら節操がない)、そういえば前にこんなの読んだな...と頭をよぎるんだけどよく思い出せないということが続き、どんよりした気分になった。頭の整理のため、このブログに記録した範囲で、スキャン・パネル・データを分析している論文のリストをつくってみた。
 そういえば、2011年から2012年にかけては意識してスキャン・パネル・データ関連の奴を読むように心がけていたんだよな... 勤務先が変わったこともあって... あの頃の私は多少は誠実であった... 最近はなんだかもう疲れちゃって...

 分類は適当である。すいません、これほんとに個人的な覚え書きなんです。

ブランド選択:

複数カテゴリの購買:

ブランド購買:

購入数量:

購入価格:

購買間隔:

店舗レベルで分析しているもの:

書籍:

雑記:データ解析 - 覚え書き:スキャン・パネル・データの分析事例

2018年9月18日 (火)

Schindler, R.M. (1992) The Real Lesson of New Coke: The Value of Focus Groups for Predicting the Effects of Social Influence. Marketing Research, 4(4).

 著者は大学の先生で、市場調査実務家向けの読み物。ざっと目を通しただけだけど、面白かった。

 いわく。
 1985年のニュー・コーク事件についてはすでに多くが語られているが、まだ学ぶべき事柄が残されている。
 [まずニュー・コーク事件の経緯を説明して...]
 この事件についてはさまざまな解釈がなされた。
 まずはリサーチの限界説。この事件はマーケティング・リサーチを非難する種として引き合いに出されるようになった。
 次にwrong-question説。失敗の原因は、味覚テストの対象者に「新フレーバーが採用されたら旧フレーバーはもう飲めなくなる」と伝えなかったという点にある。どちらのフレーバーが好きですかと訊くのではなくて、コカコーラの味がこの味に変わったらどう思いますかと訊くべきだったのだ。

 あとで明らかにされたのだが、コカコーラのリサーチ部門はちゃんとフレーバー変化に対する反応を調べていたし、消費者が反発する可能性もFGIで把握していた。その後の定量調査で、消費者の反応は全体としては好意的になると予測したのであり、この予測は市場導入初期については当たっていた。予測できなかったのは、その後に生じた(メディアの報道を含めた)社会的相互作用、それに伴う消費者の態度変容であった。
 後知恵になるけど、最終的な結果(消費者の猛反発)は定量じゃなくてFGIと整合していた。真の教訓は、FGIはただの消費者態度測定ではなく、社会的相互作用下の消費者反応を知るためのユニークな手法だということだ。
 現在、コンセプトテストの妥当性の低さが問題になっているけど、その原因のひとつはFGIの価値の見落としかもしれない。FGIにおける対人相互作用は集団相互作用の効果の指標として優れている。FGIは対象者が他者の見解を予期できない時に特に重要である。

 実務家へのアドバイス。新製品のリサーチでは、FGIを定量前の予備調査として位置付けるのではなく、予備調査の段階で個人と集団の両方を調べなさい。もし結果が違ってたら、実際のマーケティング状況で他者の見解についての認識がどのくらい存在するかを検討しなさい。製品のvisibilityが高い時、製品の重要性が高い時、製品に関する意思決定が困難であるときは特に要注意である。他者の見解についての認識が存在しうる状況ならば、その後の検証的スタディでもその認識を与えたほうが良い。
 というわけで、ニュー・コーク事件の真の教訓、それは新製品開発プロセスにおいて社会的影響を考慮すべきだということだ。FGIの価値を見直し、社会的相互作用を捉える新しい手法を開発しよう。
 云々。

 うーん...このFGI推しっぷりはどうなんでしょうか... ちょっと高く買い過ぎじゃないだろうか。
 でもまあ、リサーチのなかに社会的相互作用を埋め込みたいという発想にはとても共感する。いまなら92年段階とは全然ちがうアプローチが可能だと思う。

論文:マーケティング - 読了:Schindler (1992) ニュー・コーク事件に学べ、フォーカス・グループ・インタビューには価値があるのだ

近藤博之 (2014) ハビトゥス概念を用いた因果の探求. 理論と方法, 29(1), 1-15.
 たまたま見つけて、タイトルがかっこいいので保存してたやつ。整理の都合上目を通した。えーっと、数理社会学会の会長講演だそうです。全くの門外漢なので、ちゃんと読めてないと思うんだけど...

 教育と階層の関連についての研究は、大きく教育達成研究(従属変数は最終学歴や進学確率)と学業成績研究(従属変数は成績)に分かれるが、どちらの系列も「現代社会は完全な機会平等やメリトクラシーにどこまで近づいたか」という関心に基づいており、どちらにおいても答えは「意外にそうでもない」であった。
 いっぽうブルデューさんたちは、大事なのは構造であって、要因の効果なんてえものは切り出しようがねえんだよ、と主張する。これを「構造的因果性」という。
 これと似た考え方に、医療社会学でいう「根本的原因」というのがあって、知識が増えてもリスク統制能力が向上しても、結局健康はSESと関連したままだということが問題になっている。ある要因の効果は多数の要因群の集積であり、時と場所を超えてそれを安定させているメタメカニズムがあるのだ、と考えている人もいる。ブルデューが示したのは、ハビトゥスをこのメタメカニズムとして捉えるアプローチであったといえる。[←へー]
 [「ディスタンクシオン」での分析方法の説明がひとしきりあって...]
 しかし教育と階層についての量的研究の世界では、ハビトゥスについてはほとんど無視されている。主流はBreen & Goldthrope (1997 Rationality&Society)のモデル。彼らにいわせると、階級分化による説明は一時点の階層差は説明できるけど、教育改革とかが展開してるのに階層差がなぜ安定しているかを説明できない。
 でもこの評価はフェアじゃない。[...]たとえば、労働者階級は所得が不安定なので明確な時間展望を持ちにくく、近視眼的な選択に陥りやすいという見方がある。Goldthropeらにいわせればこういう説明は残差を事後的に解釈しているだけである[←よくわかんないけど、きっと合理的選択を仮定したモデルなんだろうな]。でも実際問題として過去経験って選択を左右するじゃないですか。結局これは、ミクロ行為理論として合理的選択をとるかハビトゥスによる選択をとるかのちがいなのだ。つまりサイモンいうところの「経済合理性」と「経営合理性」のちがいなのだ。[←おおお、意外なところにサイモンが。勉強しよう]
 [...] というわけで、ブルデュー理論は計量研究と十分に対話できるのだよ。云々。
 
 最後のところに出てきたんだけど、サンクコストの心理学的研究で、合理的選択という思考それ自体における社会的条件付けの影響を示した研究というのがあるのだそうだ。Arkes & Ayton (1999, Psych.Bull.)。面白そう。

論文:教育 - 読了:近藤(2014) 教育と階層についての因果的探求にハビトゥス概念が役に立つ

2018年9月17日 (月)

Bradlow, E.T. et al. (2005) Spatial Models in Marketing. Marketing Letters, 16, 267-278.
 仕事&学会発表の役に立つかと思って目を通した奴。10名の連名による概説。なにかの会議のメンバーで書いたのだそうだ。そういう論文はあまり面白くないことが多いと思うんだけど、まあ勉強だと思って...
 いくつかメモ:

  • マーケティングの空間モデルでは、空間関係を示す変数はふつう外生だけど、まれに推定対象となる場合もある由。DeSarbo & Wu (2001, JMR)というのが挙げられている。へー。
  • マーケティングでクリギングを使った例: Bronnenberg & Sismeiro (2002, JMR)。いかん、未読である。先日の学会発表で「エリア・マーケティングのための空間的推測でクリギングを使う例は少ないと思いますが」なんてさらっといっちゃったよ... 不勉強を棚に上げて...
  • 連続的距離行列よりも隣接行列のほうが優れている点: (1)実質的にそっちのほうが適切な場合がある。社会的ネットワークとか。(2)連続的距離行列だと端のほうの点は周りに点が少ないことになるので、パラメータにバイアスがかかるし予測がプアになる[←よくわからん... 隣接行列でも同じことじゃないの?] Haining(1997, 書籍)をみよとのこと。
  • 空間モデルが表現する空間的パターンには3種類ある。(1)空間ラグ。(2)誤差の空間的相関。(3)空間ドリフト、つまり、モデルのパラメータが位置によって異なる場合。Mittal et al(2004, J.Mktg)というのが挙げられている。以上をフォーマルに書くと, 位置を$Z$として
     $y = \rho W y + X \beta[Z] + e, \ \ e \sim N(0, \Sigma(Z, \theta))$
    (1)は$\rho W y$, (2)は $\Sigma(Z, \theta)$, (3)は$X \beta[Z]$である。

これからの課題として以下の3点が挙げられている。

  • 隣接行列の高次元性。次のような取り組みがあるのだそうだ。
    • マルコフ確率場でモデリングする。条件付き確率分布の関数形にたいする制約がきつくなりすぎるのが欠点。
    • Pace & Barry(1997 Geographical Anal.): 従属変数が空間自己回帰プロセスに従い、直接的な関係が少ないときに[←隣接行列に1が少ないってことかな?], 最尤解を高速に求めるアルゴリズム。
    • LeSage & Pace (2000): matrix exponential spatial specification(MESS)を適用する。これは従属変数の空間的変換に基づいている。[←さっぱりわからん]
    • Pace & Zou (2000 Geographical Anal.) 最近隣空間依存(つまり近隣はひとつしかない)という特定のケースにおける、閉形式の最尤解。
    • LeSage (2000 Geographical Anal.): 最近隣モデルのベイズ推定における条件付分布の中心の表現。複雑な行列演算が不要。[←MAP推定ってこと?]
  • マーケティング変数の地理的パターンを理解したい場合、$X$が内生になるので、それを修正するという問題が生じる。つまり
     $y = \tau + X(\tau) \beta + e_1, \ \  e_1 \sim N(0, \sigma^2_1 I)$
     $X(\tau) = \mu + \lambda \tau + e_2, \ \  e_2 \sim N(0, \sigma^2_2 I)$
    という風に組むわけ。へー、面白いなあ。Bronnenberg & Mahajan (2001, MktgSci.)というのをみるとよさそう。
  • 選択行動のメカニズムを理解するという観点からいえば、空間モデルそれ自体は、行動の背後にある構成概念について大したことを教えてくれないだろう。むしろモデル比較が役に立つ。Arora & Allenby (1999 JMR), Aribarg et al.(2002 JMR)をみよ[←面白そう]。いずれにせよ、行動科学者との協働が大事だ、云々。

論文:マーケティング - 読了:Bradlow, et al. (2015) マーケティングにおける空間モデル

貞包英之(2013) 贈与としての自殺 - 高度成長期以後の生命保険に関わる自殺の歴史社会学. 山形大学紀要(社会科学), 43, 2.
 たまたまみつけて、興味本位で読んだ。
 社会学者だけあって、社会通念上なかなか口にしづらいことをしれっと述べている。たとえばこんな箇所。

もっとも根底的には,生命保険にかかわる自殺の減少がそもそも望ましいとはいえない可能性について考えてみる必要がある。その自殺は企業や家族の成長を可能とする経済的根拠[借金の担保にするってことね]として利用された以外にも,高度成長期以降の社会の急速な発展から取り残された人びとの疎外を償う積極的な社会的機能をはたしてきた。現象的にみれば生命保険にかかわる自殺は,相対的に豊かであるはずの他の被保険者から保険金を合法的に掠めとる戦略的ゲームとして機能する。すなわちその自殺はみずからを残し豊かになりゆく社会に対する命がけの挑戦や復讐の手段として, 社会の発展から取り残された人びとに最後の矜持をあたえる。この意味で性急にその自殺を社会から締めだすことが,ゆたかな社会の実現につながるとはかならずしもいえない。

論文:その他 - 読了:貞包(2013) 贈与としての自殺

Bookcover イタリア広場 [a]
アントニオ タブッキ / 白水社 / 2009-09-01
タブッキの初期作品。覚悟して読み始めたんだけど、意外にもわかりやすい小説であった。

Bookcover ザ・ドロップ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
デニス・ルヘイン / 早川書房 / 2015-03-06
うーん...ルヘインは大好きなんだど、これは全然覚えていない。ほんとに読んだんだっけ?というレベルである。読んだらすぐに記録せんといかんな。

Bookcover はい、チーズ (河出文庫) [a]
カート ヴォネガット / 河出書房新社 / 2018-05-08

Bookcover 孤狼の血 (角川文庫) [a]
柚月裕子 / KADOKAWA / 2017-08-25
映画がなかなか面白かったので、つられて原作にも手を伸ばした次第。

Bookcover 高熱隧道 (新潮文庫) [a]
吉村 昭 / 新潮社 / 1975-07-29

Bookcover オンブレ (新潮文庫) [a]
エルモア レナード / 新潮社 / 2018-01-27
レナードの初期中編。この村上訳を機に、旧作も再刊されるといいなあ... レナード作品は現在軒並み入手困難なのである。

フィクション - 読了:「オンブレ」「高熱隧道」「イタリア広場」「ザ・ドロップ」「はい、チーズ」「孤狼の血」

Bookcover 人間の条件 (ちくま学芸文庫) [a]
ハンナ アレント / 筑摩書房 / 1994-10-01
正直なところ、後半の「活動」のあたりから全くついていけなくなった。ようやく読み終えてほっとしたけれど、読んだというよりめくったというのが正確なところ。

Bookcover 『碧巌録』を読む (岩波現代文庫) [a]
末木 文美士 / 岩波書店 / 2018-08-18

Bookcover ブッダの生涯 (岩波現代文庫 〈仏典をよむ〉) [a]
中村 元 / 岩波書店 / 2017-12-16

哲学・思想(2011-) - 読了:「人間の条件」「「碧巌録」を読む」「ブッダの生涯」

Bookcover ビジネス・行政のためのGIS (シリーズGIS) [a]
/ 朝倉書店 / 2008-03-01
仕事の役に立つかと思って読んだんだけど...

マーケティング - 読了:「ビジネス・行政のためのGIS」

Bookcover 「知識青年」の1968年――中国の辺境と文化大革命 [a]
楊 海英 / 岩波書店 / 2018-07-14

Bookcover ラブホテル裏物語―女性従業員が見た「密室の中の愛」 (文春文庫) [a]
大月 京子 / 文藝春秋 / 2010-12-03

Bookcover 藤沢周平が描ききれなかった歴史―『義民が駆ける』を読む [a]
青木 美智男 / 柏書房 / 2009-07

Bookcover 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか [a]
安田 峰俊 / KADOKAWA / 2018-05-18

Bookcover 緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」 [a]
解説 上西 充子,解説 田中 信一郎 / 扶桑社 / 2018-08-09

Bookcover インド神話―マハーバーラタの神々 (ちくま学芸文庫) [a]
上村 勝彦 / 筑摩書房 / 2003-01-01

Bookcover ごみ収集という仕事: 清掃車に乗って考えた地方自治 [a]
藤井 誠一郎 / コモンズ / 2018-06-06

ノンフィクション(2018-) - 読了:「「知識青年」の1968年」「藤沢周平が描き切れなかった歴史」「八九六四」「ラブホテル裏物語:「インド神話」「枝野幸男、魂の3時間大演説 安倍政権が不信任に足る7つの理由」「ごみ収集という仕事」

Bookcover 権力の「背信」 「森友・加計学園問題」スクープの現場 [a]
朝日新聞取材班 / 朝日新聞出版 / 2018-06-12

Bookcover 男たちの絆、アジア映画 ホモソーシャルな欲望 [a]
/ 平凡社 / 2004-04-20

Bookcover 江戸の本屋さん―近世文化史の側面 (平凡社ライブラリー) [a]
今田 洋三 / 平凡社 / 2009-11-01

Bookcover 文部科学省 - 「三流官庁」の知られざる素顔 (中公新書ラクレ) [a]
寺脇 研 / 中央公論新社 / 2013-11-08

Bookcover 労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱 (光文社新書) [a]
ブレイディ みかこ / 光文社 / 2017-10-17

Bookcover 王様でたどるイギリス史 (岩波ジュニア新書) [a]
池上 俊一 / 岩波書店 / 2017-02-22

ノンフィクション(2018-) - 読了:「王様でたどるイギリス史」「労働者階級の反乱」「権力の「背信」」「男たちの絆、アジア映画」「江戸の本屋さん」「文部科学省」

<< 読了:「テンプル騎士団」「暴走する能力主義」「私たちはこうして「原発大国」を選んだ」「消費低迷と日本経済」「大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済」「「右翼」の戦後史」「ナポレオン」
 
validate this page / CSS